ノーボーダー・インプロα

音楽への想いを刻みたい

Pパタが選ぶ2020年ベストアルバム50

(2019年ベストはコチラ)

 

 近年は年末に二年遅れでアップしていたベストアルバム記事だが、とうとう今回三年遅れとなってしまった。2019年時点で最高だった購入枚数110枚を大きく上回る155枚となり(※2023年時点で最高記録です)、順位付けが大変になったというのもあるかもしれないが、28位以下の各コメントを省略して丸一年延長はさすがに言い訳にならないね。

 初めてフィジカル盤なし・DL購入のみ作品も少し出てきた2020年。これからもっと増えてきそうな気もするが、やっぱり聴き込みたい気持ちがやや薄れてしまうのは否定出来ない(モノは部屋を圧迫するので順応したいところではあるが……)。

 そんなこんなの超亀速アップになったけれど、よろしければお付き合いください。

 

 

 

次点.Vaundy『strobo』

strobo

strobo

  • アーティスト:Vaundy
  • 株式会社SDR –Music-
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50.Adrianne Lenker『songs』

 

 

49.Kaede『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』

 

 

48.EMOE『Negative』

Negative

Negative

  • Coral Music Production
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↑のCD通販サイトはコチラ

 

 

47.Last Electro『closer』

CLOSER

CLOSER

Amazon

 

 

46.Duval Timothy『Help』

Help

Help

  • Carrying Colour
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↑CD売り切れ、レコード販売はコチラ

 

 

45.Actress『Karma & Desire』

 

 

44.岡村靖幸『操』

 

 

43.Makaya McCraven『Universal Beings E&F Sides』

 

 

42.藤原さくら『SUPERMARKET』

 

 

41.RAY『Pink』

Pink

Pink

  • DISTORTED RECORDS
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↑CD売り切れ(マケプレにはある)

 

 

40.?te『A Bedroom of One's Own』

 

 

39.Helsinki Lambda Club『Eleven plus two / Twelve plus one』

 

 

38.Uyuni『'99 PEACHY』

'99 PEACHY

'99 PEACHY

  • アーティスト:uyuni
  • ROMANTIC°
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37.鈴木みのり『上ミノ』

上ミノ(しお盤) [BD付初回限定盤]

上ミノ(しお盤) [BD付初回限定盤]

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36.Kanye West『JESUS IS KING』

ジーザス・イズ・キング

ジーザス・イズ・キング

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35.Rituals Of Mine『HYPE NOSTALGIA』

HYPE NOSTALGIA

HYPE NOSTALGIA

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34.Flanafi『Do You Have My Money』(※フィジカル盤なし)

Do You Have My Money

 

 

33.mei ehara『Ampersands』

 

 

32.4s4ki『超怒猫仔』

↑CDタワレコ店舗で一部取り扱いあり

 

 

31.Phoebe Bridgers『Punisher』

PUNISHER

PUNISHER

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30.Kassa Overall『I Think I'm Good』

 

 

29.BLACKPINK『THE ALBUM』

 

 

28.The Bug Featuring Dis Fig『In Blue』

 

 

27.Coriky『Coriky』

 元フガジのジョー・ラリー、イアン・マッケイとその奥さんによるバンドという事で発見した時は興奮した。フガジにも通じるソリッドで無駄を削ぎ落とした音で、彼らだからこそ出せるグルーヴ感に心酔。そろそろフガジやりませんか?

 

 

26.Okada Takuro『Morning Sun』(前作:2017年No.1)

Morning Sun

Morning Sun

  • only in dreams
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 基本的には前作を踏襲した良曲が並んでいると思う。ただ前作のような魔法がかった瞬間を味わうことは叶わず、この順位に落ち着いた次第。

(↑タワレコにCDあり)

 

 

25.Kelly Lee Owens『Inner Song』

 英ウェールズ出身のプロデューサーで本作は2ndアルバムとの事。ジャケに惹かれて聴いてみたのだが、ハウス~エレクトロニカ系のセンスのいい音楽で当たりだった。インストと歌ものが交互に来る構成だが、歌はじっくり聴かせるというよりはトラックの一部として曲に溶け込んでいる感じ。M7で元VUのジョン・ケイルが歌で参加している事からも判るように、翳りのある世界観が魅力的だ。

 

 

24.The Strokes『The New Abnormal』

 久しぶりの新譜だがかなり良くない? いずれも楽曲とバンドアンサンブルが良く、無駄を削ぎ落としたまさにストロークスのロック!って感じで好きだ。初期のいいフィーリングが戻っているのでは。

 

 

23.Grimes『Miss Anthropocene』

 ダークでメランコリックな曲調に透明感溢れるキュートなボーカルが映える魅惑のポップス。随所に表現力の高さが窺えて唸らされた。

 

 

22.downy『第七作品集『無題』

第七作品集『無題』

第七作品集『無題』

  • アーティスト:downy
  • rhenium records
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 その存在は知っていたしたまに音源をチェックしていたものの結局スルーしていたダウニーだったが、本作でとうとう引っかかる。ヘヴィな音像の中に、叙情性のある歌というコントラストがツボった。ギタリストの青木裕が亡くなってしまったとの事で残念だ。

 

 

21.Ethan Gruska『En Garde』

En Garde [Analog]

En Garde [Analog]

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 かなりの音楽一家っぽい米出身のSSW/マルチインストゥルメンタリストの2ndアルバム。まずジャケットがいいよね。着崩れしてる小生意気な子供のドヤ顔スナップって。そんなセンスの良さ(?)を裏切らない良質なインディポップで、休日の昼下がりにでもまったり聴きたくなる。独特のくぐもったようなサウンド処理が好みだ。

 

 

20.LISA PAPINEAU『Oh Dead On Oh Love』

  米SSWリサ・パピノー。闇の中に一筋の光が挿しているような、崇高さすら覚える独特な歌声が素晴らしい。フォークを基調としているようで、オルタナなテイストも随所に感じられ、あまり他と比較するアーティストが思いつかない独創的な音世界が広がっている。これを書く時点で初めて知ったのだが、1950年生まれでリリース時点で70歳という事実に驚愕(全くもってそんな年齢を感じさせないパフォーマンスだ)。

 

 

19.hyukoh『Through Love』

  デビューから破竹の勢いで売れた韓国のインディーロックバンド。正直これまでの作品は試聴はすれども乗り切れず見送ってきたのだが、今作は一曲目からなんとボサノバ調で驚き。めっちゃいい味出てて、そのテイストは全6曲に共通している。メンバー南米行ったのかな? こんな豊潤で味わい深い音楽をやるとは思わなかった(種類は違うものの近年変化したアークティック・モンキーズのイメージに近い)。次作の方向性が気になるが、とりあえずフルアルバム頼む!

 

 

18.Joji『Nectar』

Nectar

Nectar

  • アーティスト:Joji
  • 88Rising Music
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 大阪出身だが18歳時に渡米し、現在ブルックリン~ロサンゼルスを拠点に活動しているSSW。トリップホップ、トラップ等をミックスしたR&Bで、聴いていると深い森に迷い込んだような気持ちになる。非常に静謐で繊細な世界観だと思うのだが、過去にPink Guyという名義で結構ヨゴレな感じの芸人として活動(「セックス大好き」みたいなコミカルソングを歌ったり)していて驚いた。

 

 

17.青葉市子『アダンの風』

 10年以上のキャリアがあるものの今回初めて耳にした。自然に溶け込むような優しい歌声と演奏に癒やされる至高のフォークミュージック。ジャケット含めアートワークも見事で、世界観が完璧に出来上がっている。未だに眠る時は流してる程の愛聴盤。

 余談だが本作のレコードをアマゾンで長いことチェックしていたにも関わらず売り切れた為、定価の倍近くの価格でメルカリで購入することになった泣。LPは本当に早めに入手しないと危険だ(という思考から沼にハマっていくことに……)。

 

 

16.Rina Sawayama『SAWAYAMA』

Sawayama

Sawayama

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 日本生まれ、英国育ちのモデル兼SSW。このデビューアルバムはタワレコで見かけたのだが、ジャケットに目を惹かれて手に取った。凛としつつも芯の強さを感じるしなやかな歌声、先端をいくポップスでありながらロックの熱量も持ち合わせていて、時代を象徴するような新たなアイコンが現れたと鮮烈な印象を残した。「Dynasty」の勇壮なコーラスを何度脳内リピートしたか知れない。困難と戦う意思を強く感じさせ、自身のアティテュードを高らかに宣言しているかのような、完璧なオープナーだと思う。

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15.sora tob sakana『deep blue』(前作:2019年No.18)

 解散する間際にリリースされたラストアルバム。正直どの順位に付けるべきか、そもそもランキングに入れるべきか少し迷った。本作は前作リリース後にメンバーのれいが抜け、残って活動を続けた3人により既存の楽曲を録音し直したもので、それのみなら純粋な新作ではないと外したかもしれないが、冒頭と最後には新曲が収録されたからである。そのどちらとも素晴らしかったのでやはり無視は出来ないと考え直した次第。

 個人的にこのグループを超えるアイドルグループはもう出てこないと思っているくらいで、あらためて初期の楽曲から最新曲に到るまでエヴァーグリーンな輝きを放っているし、エモい気持ちを駆り立てられたりもする。しかし正直なところ、まだまだ"その先"の可能性を感じたし(活動期間約6年、解散時点でメンバーはまだみんな20歳以下だった)、「もしこれが全編新曲で構成されたアルバムだったらどんな出来になっていただろう?」とか、あらぬ妄想をしてしまったりもする。ラストの解放を意味する楽曲「untie」は、彼女たちがみせてくれた夢と、その終焉を強く意識させられるもので、美しくも切ない余韻を残す。さようなら。ありがとう、sora tob sakana

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14.RYUTist『ファルセット』

ファルセット

ファルセット

  • アーティスト:RYUTist
  • PENGUIN DISC
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 アイドル戦国時代に突入して久しいが、2020年でひときわ輝きを放っていた作品がこちら。4人によるアカペラからスタートするオープナーから7分弱にも及ぶM2「ALIVE」になだれ込んだ時点で、もうとんでもない事が起こっていると気付く筈。名うてのミュージシャンにより提供された、繰り返しの再生に余裕で耐えうる各楽曲の強度。希望しか感じさせない4人のピュアネスな歌声。それらが織りなすつい笑みがこぼれてしまう、全編を貫く抜群のポップさ。もう信じられないくらいに素晴らしい。20年代アイドルポップ史に刻まれるであろう、問答無用の傑作アルバム。

 

 

13.Becca Stevens『Wonderbloom』

 米国のジャズ畑のシンガーのようで、自身がリーダーとなって組んでいるバンド編成も比較的オーソドックスなものだが、不思議と他とは一線を画すオリジナルなポップスをやっていると思う。音響凝っているというのはひとつあるかな。

 

 

12.Awich『孔雀』

孔雀

孔雀

  • アーティスト:Awich
  • YENTOWN / bpm tokyo
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 海外でも活躍する沖縄出身のラッパー。本作で初めて知ったのだが、大胆不敵な"女前"なフロウに、幅広い音楽をナチュラルに取り込んだトラック郡にK.O.された。kZm氏によるねぶた祭りの笛の音をサンプリングしたM4「NEBUTA」とか、日本人ならではの楽曲もあり最高にキマっている。

 

 

11.Childish Gambino『3.15.20』(※フィジカル盤なし/前作:2016年No.13)

3.15.20

3.15.20

  • Childish Gambino
  • ポップ
  • ¥1833

 フィジカルリリースがなく、ジャケットは真っ白で、M2-3の二曲を除いて曲名は再生時間を示す数字のみになっている……と、物やアートワークに強い思い入れのある自分みたいな人間にとっては味気なく感じられてしまうのだが、この豊潤な音楽はやはり否定出来ない。参りました。あんたの勝ち。

 

 

10.The Weeknd『After Hours』

 ようやく新譜リリースのタイミングで買えたウィークエンド。歌の美しさ、洗練された耳心地のいいトラック、いずれも期待を裏切らない出来で素晴らしかった。

 

 

9.Jon Hassell『Seeing Through Sound(Pentimento Volume Two)』(前作:2018年No.1)

 2021年6月26日、ジョン・ハッセル逝去ーこのニュースを目にした時はフリーズしたし、思わず涙した。前作で初めてその存在を知ったばかりの新参もいいところだが、彼の音楽の虜になっていたから。ただ恥ずかしながら、この報せでラストアルバムである本作が前年にリリースされていた事を知り慌てて注文したのだが(すまんハッセル)。

 『絵画を聴く』という前作から『音を視る』というコンセプトに変わった本作。アンビエント色強めだった前作と比べると、一定のフレーズの繰り返しが多用されていて、ミニマルミュージックに接近した印象がある(後にカンを結成するメンバーとクラスメイトだった時期もあったようで驚いた)。ただやはりその中で、トランペットをはじめとした各楽器の配置や独自のサウンドスケープで、異世界に誘うような果てしない深淵さをみせるのは流石としか言いようがない。前作同様、何度聴いても新たな気付きを与えてくれる素晴らしい作品である。享年84歳。最期まで創造性を失わなかった偉大な作曲家に最大限の敬意を表したい。

 

 

8.TAMIW『future exercise』(LPのみ)

future exercise (アナログレコード)

future exercise (アナログレコード)

  • アーティスト:TAMIW
  • 5square Records
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 2018年に神戸で結成された3ピースのオルタナロックバンドの2ndアルバム。このバンド名義での活動歴は浅いものの、ダブ、インダストリアル、ダンスといった要素が交錯し、時にダウナーに、時に凶暴に鳴り響く音の先鋭さといったらない。紅一点のボーカルtamiの、透明度と神秘さを湛えた歌唱も相まって圧倒的な世界観を構築している。今後の活動から目が離せない要注目のバンドだ。

 本作はたまたまspotifyで知ったのだが、後追いで聴いた2018年リリースの1stアルバムがまた尋常じゃない完成度で、ベストアルバムに入れられなかったのが悔やまれる。

www.youtube.com

 

 

7.Klo Pelgag『Notre-Dame-des-Sept-Douleurs(悲しみの聖母)』(前作:2017年No.3)

 カナダの鬼才女性SSWの3rdアルバム。グリム童話と宇宙をミックスした世界観でロックしているような(伝わらなそう~)、オリジナリティに満ちた音楽のパワーに今作も圧倒される(全体的に前作より落ち着いた感はあるものの、聴き込みたくなる楽曲の強度は十二分にある)。歌心もあるし、構成力も見事だし、あらためて素晴らしいアーティストだと思う。実は過去に来日していたようで、ぜひ自分もライブを観てみたい。

 

 

6.A VIRGINE『A VIRGINE』(LPのみ)

 本作からの後追いで知ったのだが、TADZIO(タッシオ)というオルタナ/ハードコア系のガールズデュオバンドのGt.&Vo.がソロで初めたプロジェクトのよう。無機質なビートにゴリゴリのフィードバックノイズを纏ったギターが絡み、ほぼポエトリーリーディングに近い醒めたボーカルが乗っかる、というのが基本スタイルなのだが、これがめちゃくちゃクールでカッコいい。

 白状するとリリースから一年遅れくらいでSpotifyで見つけたのだが、作品のレベルとは裏腹に当時月間リスナーが13人くらしかおらず驚いた(2022年の2ndアルバムリリース後にもっと増えたが)。フィジカルはレコードのみ出ていて、音楽からはちょっと想像し難い儚げな美を湛えているのだが、このアートワーク含めて何だか完璧だと感じさせられてしまう。忘れられない一作となった。

 

 

5.Bruna Mendez『CORPO POSSIVEL』

CORPO POSSIVEL

CORPO POSSIVEL

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 ジャケット見てはじめ男だと思ってしまっていたけど女性でしたごめんなさい。ブラジルのアーティストで、研ぎ澄まされたサウンドとウィスパー成分強めの高く美しい歌声を武器に、まさに先端をいくMPBをやっていてもうひれ伏すしかないレベル。聴くべし!

 

 

4.SAULT『Untitled (Black Is)』『Untitled (Rise)』

Untitled (Black Is)

Untitled (Black Is)

  • アーティスト:Sault
  • Forever Living Originals
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Untitled (Rise)

Untitled (Rise)

  • アーティスト:Sault
  • Forever Living Originals
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 英R&Bグループで、ほぼ毎年1枚以上アルバムを出す多作っぷりに驚かされるが正体がいまいち謎である(メンバーは3名で内1名はリトル・シムズの作品のプロデュースも手掛けたそう)。アフロビートのようなトラディショナルな音楽とアーバンな音楽が混在していて、それらパワー漲る楽曲のひとつひとつが祝祭のように鳴り響き、未だ閉塞感の拭えない世界を鼓舞するかのよう。二作同時リリースされたようなのでふたつで一作とした。

 

 

3.Moses Sumney『Græ』

 米カリフォルニア出身のSSWによる2ndアルバム。話題になっていたっぽい前作をスルーしてしまっていたのだが今作を聴いてぶっ飛び。R&B、ソウル、ゴスペル等が溶け合う多彩な音の奔流に、別世界に連れ去られるようだ。デビュー当時フランク・オーシャンを引き合いにざっくり"内省ソウル"と括られていたようで、なるほど確かに内省的ではあるが、それだけに留まらず、世界にコネクトしようとする強い意志を感じる。

 

 

2.Leah Dou『GSG Mixtape』(前作:2016年No.2)

GSG MIXTAPE

GSG MIXTAPE

 気鋭の中国人女性SSWリア・ドウによる2ndアルバム。トリップッホップやオルタナティヴミュージック等に影響を受けた新世代のポップアイコンだと、また中国人アーティストのイメージを一変させるほどに鮮烈にその名を脳髄に刻まれる事となった2016年のデビュー作から、まさに一日千秋の思いで待ち続けた。新作リリースの報せに心躍るも、あまりにもイメージからかけ離れた奇妙なジャケットに「一体どんな音楽になっているのか…?」とまったく想像出来ず耳にしたのだがー

 結果、前作をいい意味で裏切る作品になっていた。前作『ストーン・カフェ』はダークなトーンを内包しつつも、全体を通して非常に洗練されたポップ作品に仕上がっていたのだが、今作はその要素を根底に残しつつもよりアヴァンギャルドな方向に舵を切っているのだ。象徴的なのは馬伯騫というラッパーをフィーチャーしたM2「Luv U Alien」で、この曲ではダウンテンポにまさかのサンバの要素を組み合わせていて、不協和音気味なホーンに誘われるように、洗練されつつもカオティックな空気を生み出す。M10「Nightmares」の、リバーブがかった静かなトラックに乗せて美しくも絞り出すように歌う様には深い孤独が感じられたりと、全体的にダークな色合いがより色濃くなっているのだが、その得も言われぬ不思議なバランス・掴みきれなさに何度もリピートしたくなってしまうのだ。彼女の今後の活動から目が離せないし、来日公演を熱望する。

(↑CDはアジアサイトにのみ取り扱いあり)

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1.上田麗奈『Empathy』(前作:2016年No.21)

 声優・上田麗奈の初のフルアルバム。はじめの2曲は今作「春」のイメージ通りの爽やかなポップスで(彼女自身が作詞したM1「アイオライト」は歌詞との対比が面白い)、そこから空気を変える深淵なインストトラックを挟んでからのM4「ティーカップ」でまずやられた。ネオソウルっぽいのだが変拍子が用いられ、ゆっくりと回転しているようなグルーヴと、無機質さと静かな狂気を含んだボーカルに、不思議な国のアリスの世界に誘われるかのようだ。

 サウンドプロダクションや楽曲の素晴らしさもさることながら、年間ベストに挙げるほど評価が高くなった要因として彼女の"歌"が挙げられる。ちょっと他では聴けない歌唱をしていると思うのだ。元々彼女は歌は全然好きではなく(近年緩和したようだがライブは"嫌い"と公言していたほど)、ただ元々強固な世界観をもっており、本業は声優であるがゆえ表現する力は十二分に育まれ、そんな状態でたまたま歌う機会が巡ってきてしまった。そういった、一般的な歌手とは少し違うルートを辿る事で独自のボーカリゼーションが生まれたのかと想像したりする。芝居をするように歌っている感じというか。

 

 我が子に聴かせる子守唄のような愛らしさに満ちたM5「きみどり」、天国への扉を開かんとばかりの輝きを感じさせながら、あともう少しで何もかも砕け散ってしまいそうな危うさを孕んだM8「aquarium」、世界を浄化するような、高貴さと優美さを兼ね備えたM10「Campanula」等、聴いていて目の覚めるような瞬間が何度も訪れる。M5「いつか、また」の歌の音程が不安定だという批判的なレビューをみかけたが、これは明らかに揺れる感情の表現だろう。明るく聴こえる歌もあるが、根底に"そう簡単には救われない"というような諦念めいたものを抱えているようにみえて、だからこそ愛とかポジティブさを感じさせる表現がよりかけがえのないものとして響いてきたりする。嗜好にもドンピシャで、一枚のアルバムとして構成も素晴らしい(前作は6曲入りのEPで出来は非常にいいものの若干物足りなさがあった)。正直、リア・ドウとどちらを1位にするかかなり迷ったし、客観的にみれば本作より優れた作品は他にもあると思うのだが、結果、自分的には堂々文句なしの2020年ベストアルバムとなった。

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~2020年ベストアルバムまとめ~

01.上田麗奈『Empathy』*

02.Leah Dou『GSG Mixtape』

03.Moses Sumney『Græ』

04.SAULT『Untitled (Black Is)』『Untitled (Rise)』

05.Bruna Mendez『CORPO POSSIVEL』

06.A VIRGINE『A VIRGINE』*(LPのみ)

07.Klô Pelgag『Notre-Dame-des-Sept-Douleurs』

08.TAMIW(タミュー)『future exercise』*(LPのみ)

09.Jon Hassell『Seeing Through Sound(Pentimento Volume Two)』

10.The Weeknd『After Hours』

11.Childish Gambino『3.15.20』(DL販売のみ)

12.Awich『孔雀』*

13.Becca Stevens『Wonderbloom』

14.RYUTist『ファルセット』*

15.sora tob sakana『deep blue』*

16.Rina Sawayama『SAWAYAMA』*

17.青葉市子『アダンの風』*

18.Joji『Nectar』*

19.hyukoh『Through Love』

20.LISA PAPINEAU『Oh Dead On Oh Love』

21.Ethan Gruska『En Garde』

22.downy『第七作品集『無題』*

23.Grimes『Miss Anthropocene』

24.The Strokes『The New Abnormal』

25.Kelly Lee Owens『Inner Song』

26.Okada Takuro『Morning Sun』*

27.Coriky『Coriky』

28.The Bug Featuring Dis Fig『In Blue』

29.BLACKPINK『THE ALBUM』

30.Kassa Overall『I Think I'm Good』

31.Phoebe Bridgers『Punisher』

32.4s4ki『超怒猫仔』*

33.mei ehara『Ampersands』*

34.Flanafi『Do You Have My Money』(DL販売のみ)

35.Rituals Of Mine『HYPE NOSTALGIA』

36.Kanye West『JESUS IS KING』

37.鈴木みのり『上ミノ』*

38.Uyuni『'99 PEACHY』*

39.Helsinki Lambda Club『Eleven plus two / Twelve plus one』*

40.?te『A Bedroom of One's Own』

41.RAY『Pink』*

42.藤原さくら『SUPERMARKET』*

43.Makaya McCraven『Universal Beings E&F Sides』

44.岡村靖幸『操』*

45.Actress『Karma & Desire』

46.Duval Timothy『Help』

47.Last Electro『closer』*

48.EMOE『Negative』*

49.Kaede『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』*

50.Adrianne Lenker『songs』

次点.Vaundy『strobo』*

 

 

 Vaundyは時点なので省くとして、50作中日本人の作品が22作と半数近くを占め、今までが1/3程度かそれ以下だったのでかなり増加していて驚いた(Rina SawayamaやJoji等は拠点が海外だが日本人である事に違いはない)。

 個別でコメントを残せなかったアーティストや作品について少し。藤原さくらはたまたま彼女の冠ラジオ番組を耳にし、かけている音楽があまりにも嗜好にマッチしていたので聴き始めたのだが、それだけにいい曲を書くなと感心した(M10「ゆめのなか」とか特に刺さった)。

 

 RAYは2018・2019年で紹介した・・・・・・・・・(ドッツ)の運営チームが新たに手掛けたアイドルグループで、シューゲイザーを基調とした音楽性も受け継がれていて、アルバムの完成度も非常に高く満足すると共に、今度こそ活動を追えるぞと嬉しくなった。他アイドル系ではNegiccoのメンバーであるKaedeのソロ作もとても心地よく聴けるハイクオリティなものだったし、吉田豪の記事で知ったEMOEも拙いところを補って余りある楽曲の魅力があり、もっとボリュームのある次のアルバムを聴きたいと思わされた。鈴木みのりもめっちゃ好みの楽曲でかつ歌唱力もありよくリピートした。

 

 日本人にばかり触れたが、他の作品も一応順位は付けたものの選定したものなのでどれも素晴らしいものばかりだった。ただまだまだ翌年以降の記事も書かなきゃならないのでこの辺で。今度こそインターバル短めでアップできますように笑

山下達郎のラジオでの発言騒動について思ったこと

 今回の山下達郎の発言については、難しい面があるとは思いましたが、個人的には概ね納得がいくものでした。友人のLINEの返信で書いたものなのですが、せっかくなので少し加筆してここにも自分の気持ちを残しておこうかと思います。

 

※□内は全て山下達郎本人が2023/7/9㈰のラジオで語った内容です

 性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許しがたいことであり、被害者の方々の苦しみを思えば、第三者委員会等での、事実関係の調査というのは必須であると考えます。しかし、私自身がそれについて知ってることが何もない以上、コメントの出しようがありません。

 自分はあくまで一作曲家、楽曲の提供者であります。

 要約されてるかと思いますが、このスタンスですね、山下達郎

 性加害があったのであれば許しがたいが判らない事については何も言えない。それとジャニー氏が生み出してきたもの(功績)については分けて考える、というところで一貫しています。

 

 実は僕は去年からの超新参のファンですが、達郎って本当に職人肌で、なるべく音楽のことに集中したい、それに人生を賭けるって感じの人ですよね。僕はこのジャニー氏の問題についてめっちゃ関心もって追いかけてた訳じゃないですが、被害を訴える人も複数人出ていますし、それが”あった”可能性は高そうだとは感じています。

 

ただ、いかんせん当人が亡くなっていて、裁判等で確実に証明されるところまでは現状いっていないので断定して語ることは出来ず、達郎としても先述した通り音楽以外のことに首を突っ込むことなどはする気はないでしょう。彼は音楽に集中したいのであり、また恩義のある人物の闇をわざわざ暴こうとはしないでしょうから。

 

 批判の声って、多分こういった達郎の姿勢に集まってますよね?

被害に遭った人がいそうなのに、そこから目を背けて功績を讃えるなんて、と。

きちんと調べもせず、それでいいのか?と。

 

 僕としてはこういった批判の声を挙げる人たちについて、意見は異なっていますが「いや別にいいだろ」とは言えません。ただどちらかと言うと達郎側の考えに共感しています(完全に公正にはみられていないでしょうが、ファンだからと盲目的に支持しているだけではないつもりです)。

 ジャニー氏による性被害はあったかもしれない。それを肯定する気など毛頭ありませんが、ただ達郎が彼から多大な恩を受けたという事実は変わらないし、

 ジャニーさんの育てた数多くのタレントさんたちが、戦後の日本でどれだけの人の心を温め、幸せにし、夢を与えてきたか。

というのも、客観的にみても事実だと言えるでしょう。

 

その輝かしい功績の裏で泣いていた少年たちがいたかもしれない事を考えると、たしかに配慮に欠けていると言えるかもしれませんが、

私の人生にとって1番大切なことは、ご縁とご恩です。

とする達郎がこのように発言することを僕は否定出来ません。

 

 このような私の姿勢をですね。忖度あるいは長いものに巻かれていると、そのように解釈されるのであれば、それでも構いません。

 きっとそういう方々には私の音楽は不要でしょう。

 最後のこの言葉、当然批判を向ける人たちが出てきたり、幻滅して自分の音楽をもう聴かないといった人たちが出てくることを想定していたことが窺えますが、突き放したような言い方だと捉えた人も少なくなかったと思います。

 これについては何度も考えましたが、達郎は断絶覚悟で自分の一番大切なものを守りたかったのかもしれません。仮に本当に「闇」があったとしても、どれだけ辛辣な言葉を浴びせられようとも、彼が抱いている恩義はきっと揺るがない。軽率ではなく、むしろ考え抜かれた上での発言だったのかと今では思います。



 唯一ひっかかりがあるとすれば、スマイルカンパニー松尾氏の解任の件。

 事務所の社長の判断に委ねる形で、行われました。松尾氏と私は直接何も話をしておりませんし、私が社長に対して、契約を終了するよう促したわけでもありません。

と言いつつも、

 今回、【松尾氏がジャニー喜多川氏の性加害問題に対して憶測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因であったことは認めます】けれど、理由は決してそれだけではありません。他にも色々あるんですけれど、今日この場ではそのことについては触れることを差し控えたいと思います。

とも言ってるんですよね。え、批判したことが関係あると認めるの? それでこの物言いだと社長に一任したのみとは取れなくない? うーん、尊敬する人を悪く言う人とはやりたくないって気持ちもあるかもだけど、忖度的なものも否定出来ないような……

 

 このあたりの明らかにされていない部分は気になりますね(白状するとこの二人の関係性、いまいちまだ掴みきれていません。あまり情報が出てこないので)。達郎は関係の希薄さを強調していましたが、松尾氏の批判が関係していたのであれば一方的にではなく話し合うとか、何らかのやりとりを挟むことは出来なかったのか? と少し思ってしまったり。

 ーっていうところはあるんですが、冒頭で述べた通り達郎のスタンスや意見には概ね賛同します(松尾氏の件については不透明過ぎるので現状判断が難しいですが)。



 今回の騒動でファンをやめた人たちが出たことについては残念ですが、彼らの気持ちも尊重されるべきだし、達郎もそれらを呑み込んでの発言だったと思います。

 

 こう書くと否定する人もいるだろうし、僕としても全面的に正しいとは決して言いませんが、逃げではなく、(松尾氏のことにも関わっているのであればそれ含めて)強い決意・信念に基づいていたんじゃないかと感じました。 

 

 今月のフェニ一チェ堺でのライブ、楽しみにしてます。



【後編】Pパタが選ぶ2019年ベストアルバム50

前編のつづきです。

 

 

25.LIZZO『Cuz I Love You』

 まず、ルックスのインパクトに負けないド迫力のパワフルボーカルに持っていかれた。この声でもう勝ってるなという感じだが、それに負けじとグルーヴィーな演奏とコーラスが合わさり、華々しくゴージャスなリゾワールドが展開。エネルギーに満ち溢れた快作だ。是非ライブを観てみたい。

 

 

24.Binkbeats『Private Matters Previously Unavailable』

 ジャケットに一目惚れして試聴したら音楽も最高だったシリーズ(もちろん購入済み)。基本打ち込みによるインスト(一部ゲストでボーカル招いてる)だが、随所にセンスの良さが光るダークでメランコリックな音世界に思いっきり浸れる。ちょっと他にはない、強い引力をもった作品。

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23.私立恵比寿中学『playlist』

 年間に二枚もアルバムをリリースするという勢いの感じられるエビ中。名うてのクリエイターの提供した楽曲はいずれも素晴らしく、ネオソウル、シティポップ、ロックなどバラエティに富んでいて聴き応え充分だ。メンバーの歌唱スキルも負けじと上がっているようで、ライブも観てみたい。

 

 

22.Erika De Casier『Essentials』

 ポルトガル出身のシンガー。ウィスパー成分多めのボーカルがとにかくキュートで魅力的。音数の少ないエキゾチックな打ち込みトラックと相まって幽玄な世界観を作り出している。

 

 

21.Billie Eilish『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』(前作2018年No.7)

 米・ロサンゼルス出身にして今や時代を象徴するアイコンとなったビリー・アイリッシュ。それでも特にプレッシャー等は感じられず、曲作りは基本的に前EP『Don't Smile At Me』の路線から大きく離れていない印象(ベッドルームで兄と共同制作、というスタイルもそのまま。結果的にデビューアルバムにあたる本作でグラミー5部門を受賞)。

 あくまで内省的に、いち少女(制作当時17歳)の率直な気持ちが歌われていて、その繊細でイノセントな歌唱に心を揺さぶられる。ダークさとドリーミーさの狭間を漂いつつ、"私達はどこへ?"と疑問を投げかける彼女の行く先をこれからも見守っていきたい。

 

 

20.Sampa The Great『The Return』

 アフリカ南部・ザンビア共和国出身のラッパー。高音域で、少し鼻にかかったような特徴的な声から繰り出されるラップが癖になる。コーラスを用いながらソウルやヒップホップ等の要素を落とし込んだ、流麗で、時に刺激的なトラックと相まってとても心地よい音楽体験が出来る。フィーチャーしてるアーティストも皆センス抜群だ。

 唯一、19曲78分という長尺ゆえに気軽に聴きづらいという点だけがネック。

 

 

19.フィロソフィーのダンスエクセルシオール

 4人組アイドルグループによる3rdアルバム。白状すると前作まではチェックはしつつも未購入で、今作で初購入。キャリアを重ねるごとにどんどん良くなっている印象だ。ファンキーでグルーヴィな演奏にそれぞれ個性のある4人の歌声が乗っかって、ゴキゲンにさせてくれる。本作リリース後の翌年にメジャーデビューしたがマンネリ化せず、現在進行系で進化していくパワーやエネルギーを感じさせてくれる。

 

 

18.sora tob sakana『World Fragment Tour』(前作2016年No.7)

sora tob sakana/World Fragment Tour (通常盤)

sora tob sakana/World Fragment Tour (通常盤)

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 メジャーデビュー後初のフルアルバム。リリースして間もなく風間玲マライカが脱退したため、4人の歌声が聴ける音源としては最後となった。1stアルバムとそれに続く2枚のEPまではオルタナロック色が強かったが、今作では初めて外部からの楽曲提供も受けたためかアーバンなポップスなども増え、洗練されたイメージにガラッと変わった印象だ。

 正直、前三作まで(特に1stアルバム)に強い思い入れのあった自分としては当初かなり戸惑ったが、ライブでのパフォーマンスを観たり、しばらく時間を置いて冷静に聴き返したりしているうちに段々前向きに捉えられるようになった。むしろ同じ事を繰り返さず、きっちりクオリティを保ったままグループの可能性を広げたというのは称賛に値するだろう。アラビアンな旋律をブリッジにしたこのリード曲(M2)には痺れた。

 

 

17.Sudan Archives『Athena』

 アメリカはオハイオ州出身のバイオリニスト / ボーカリスト(前述したTeebsの作品にも参加)。R&B、エレクトロを基調としつつ時折中近東の旋律等も取り入れた、オリジナリティと高いクオリティを兼ね備えた音楽。歌声もいい。

 

 

16.んoon『Body』

Body [FLAKES-218]

Body [FLAKES-218]

  • アーティスト:んoon
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 東京発のネオソウル系のバンド(バンド名の発音は「ふーん」)。ギターレスで、ベース、キーボード、ハープ(にサポートのドラム)という一風変わった編成なのだが、それらが夢のように美しいサウンドスケープを紡ぎ出す。元々はインストバンドだったようなのだが、それに黒人女性とおぼしきボーカルのJC(ハーフかもしれないが。あまり情報が出てこない)の繊細なウィスパーボイスが加わる事で一層輝きを増し、ちょっと他の追随を許さない極上の音楽に昇華した感。ヤバい。ヤバ過ぎる。

 本作は前年にリリースされた1st EPに次ぐ2nd EPなのだが、もうマジで一刻も早くフルアルバムを出して欲しい(追記:2021年リリースの3作目もEPでした)。6曲のEPという事でこの順位に留めたが、もしこのクオリティの楽曲が並ぶフルアルバムだったならトップ3に食い込んでいただろう。

 

 

15.Little Simz『Grey Area』

 ロンドン出身のラッパーの3rdアルバム―との事だが僕は本作で初めて彼女の存在を知った。とにかくラップがかっこいい。Dopeなトラックと同化するような、時に引き裂くようなエッジの効いた彼女のフロウに魅せられっ放しの10篇。

 

 

14.尾崎由香『MIXED』

 近年アーティストデビューする声優マジで増えたよなーと思うが、その中でも本作は好みにジャストフィットしたポップスで、愛聴する一枚となった。北川勝利や沖井礼二、ミトといった鉄板のクリエイターによるクオリティの高い楽曲に支えられ、スキルは決して高いとは言えないもののイノセントでまっすぐな歌声で瑞々しくデビューを飾っている。

 彼女が作詞を手掛けたテクノ調のM8「ice cream」のサウンドや、郷愁を誘うメロディーの冴え渡るギターロックM10「ハートビート・サイレン」など、聴きどころ多数。

 

 

13.桜エビ~ず『octave』(前作:2018年No.40)

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 6人組アイドルグループ(※ukkaに改名したのち本作に参加していた桜井美里と水春が卒業し、4人体制を経て新メンバー2名が加入し再度6人になった)の、2018年6月から12ヶ月連続リリースしたシングル12曲に新曲「せつないや」を加えた全13曲の2ndアルバム。一聴してまずハッとさせられるのがサウンド。明らかに予算がアップしたと思われるがw、より奥行きと厚みが生まれていて、かつ心地よく聴こえる独自の反響の処理が施されていたりと、グッと洗練度合いが増した印象だ。

 ライブ定番曲で特に人気があるのはM6「リンドバーグ」やM10「それは月曜日の9時のように」あたりだと思うが、他にも、切なさをはらんだメロディーがドラマチックにエスカレーションしていくM2「214」や、印象的なカッティングギターを筆頭にグルーヴィーなバンドアンサンブルとメンバーの伸びのある歌唱が夏空に誘うようなM4「灼熱とアイスクリーム」、輝かしい未来を目指して走っていく、ポジティブで力強いバイブスに満ちたM11「キラキラ」など、一曲一曲が光を放つ非常に完成度の高いポップアルバムに仕上がっている(前作で聴けたゴリゴリロック系の曲がなくなってしまったのは少々残念だったが、それを補って余りあるレベル)。

 余談だが2020年のツアーチケットを取っていたがコロナで中止となってしまったため未だに生ライブ未体験である。今年こそ体験したいところだが無事行けるかどうか……。

(追記:2021年ライブ行けた! 4人になっていたもののポジティブなバイブスに溢れていて素晴らしかった)

 

 

12.Tank and The Bangs『Green Ballon』

 米・ニューオリンズで結成されたネオソウル系バンドのメジャーデビューアルバム。R&B、ソウル、ヒップホップ、ジャズ等を自由に行き交うバンド演奏のセンスの良さもさながら、それらを最大限に活かす黒人の女性ボーカリスト・タンクの歌唱スキルには目を見張るものがある。とてもソウルフルでバラード時にはしっとりと聴かせてくれるし、時折それに負けないくらい言葉数の多い高速ラップも披露していて、その切り替えも非常にナチュラルで滅茶苦茶カッコいいのだ。既に本国では注目を集めているようで、ジ・インターネットくらいの人気が出てもおかしくない、十分なポテンシャルを感じる。 

 

 

11.Jeanne Cherhal『L'An 40』

L'an 40 -Digi-

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 フランスのSSWの5thアルバム。2004年の2ndで知ってそのセンスに惚れ込み、続く2006年の3rdまで買ったものの、しばらくリリースが途絶えたことで4th(2014年作)を見逃し、本当に久しぶりに彼女の新譜を聴くことになったのだが、これまでの作品を遥かに凌駕する出来で驚いた。今作ではこれまで以上にバンドサウンドが前面に出ていて、多くの楽曲で管楽器や重厚なコーラスを取り入れ、力強く鳴り響くドラムと共に展開する様は相当にロックだ(調べてみると、ソロデビュー前彼女は様々なロックバンドに参加していて、ソニック・ユースの影響も受けていたとの事)。

 ベースとなっているのはあくまで彼女の鍵盤による弾き語り(歌)だが、バンドのグルーヴが加わることでより外に開かれたものになったようで、聴いていて清々しい気持ちになる。タイトルの『40年目』とは自身の年齢を指すのだろうか。キャリアの集大成的傑作だろう。

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10.Sequoyah Murray『Before You Begin』

 なかなかの突然変異体。彼が音楽を作るキッカケになったというグライムスやアルカらに負けず劣らず、強固な世界観をもったアーティストである。ざっくり言うとゴスペル色の強いフューチャーソウル、って感じだろうか。アメリカはアトランタ出身だがその歌唱(とルックス)からはアフリカンの血が強く感じられ、リバーブのかけられた歌声は独自の音像(打ち込み主体で、要所で生楽器を用いている)と相まって、蜃気楼に包まれるような一種の酩酊感をもたらす。圧倒的なスケールとオリジナリティを誇る音楽だ。リリース時点で23歳、これがファーストアルバムとは末恐ろしい才能である。ちなみに名前の読みは国内盤の表記によると「セクォーヤ・マリー」とのこと(ネットには「セコイヤ」とも)。

 

9.Daichi Yamamoto『Andress』

 京都出身・ジャマイカ人の母と日本人の父をもつハーフのラッパー。ダークめな(それでいてアーバンで先鋭的な)トラックに乗せ、低音で呟くようなラップをするのが基本スタイルだが、英語と日本語をナチュラルに使い、時には歌も取り入れるそのフロウは変幻自在で小気味いい。客演にはSSWの中村佳穂やジャズピアニストの桑原あいといった、彼に共振するようなノーボーダーな音楽性のアーティストが呼ばれ、アルバムに華を添えている。今後の活躍が楽しみなアーティストだ。

 

 

 

8.Solange『When I Get Home』(前作:2016年No.8)

 前作に引き続き文句なしの完成度。派手さはないが、繰り返し聴くほどに味わい深く楽しめる至高のインディR&Bだ。残念ながらCDのリリースがなかったためレコードを購入したのだが、音源を音楽プレイヤーに入れるためのDLコードを付けて欲しかったな。

 

 

7.Burna Boy『African Giant』

 西アフリカはナイジェリア出身のシンガーソングライターによるデビューアルバム。大陸を鳥瞰するかのような雄大サウンドスケープに、味わい深いアフリカンなボーカル(低音域メインかと思いきや時折ウィークエンドばりの美しい高音を聴かせたりとレンジの広さに驚く)、ラップが何とも心地よい。ともすればワールドミュージック然としてとっつきにくくなりそうなラインだが、洗練されたサウンドプロダクションを施し、聴きやすいポップに仕上がっていて唸らされた。

 

 

6.Arlo Parks『Super Sad Generation』

 イギリスはサウスロンドン出身でナイジェリア、チャド共和国、フランスなど複数の血を受け継ぐ女性SSW。本作リリース時点で18歳とかなりの若手だがソングライティング能力が異常なほど高く、その内省的なトラックと歌は深く心に沁み渡る。歌詞は付属していなかったが、聴いていてイメージされるのは孤独感や、その中で己の信じる美や信念を堅く守り続けようとする強さとか、そういうものだ。モダンな感性の光るインディR&B界の新星。今作はミックステープではなくアルバムのようだが(位置づけがいまひとつ判らない)、"デビューアルバム"としては2021年1月にリリースされた作品になるようだ。

 

 

5.Lady Donil『Enjoy Your Life』

 彼女もBurna Boy同様ナイジェリア出身のシンガーソングライターで、本作がデビューアルバム(ジャケ写だけでは判りにくいが2019年のリリース時点で10位のセクォーヤと同じく23歳である)。欧米の洗練されたR&Bサウンドを基調としつつ、祖国のトラディショナルな音楽をミックスして独自のポップへと昇華するセンスが見事だ。各楽曲に非常に強いフックがあり飽きずに聴かせてくれる。

 同じナイジェリアのシンガーを客演に招いていて、いずれも素晴らしい歌声を披露していて聴き惚れるが、彼女たちは(売上至上主義の)メインストリームに反発するオルテというムーヴメントを形成しているという。よりエキサイティングな音楽が続々と生まれそうで、今後もアフリカから目が離せない。

 

 

4.FINAL SPANK HAPPY『mint exrocist』www.bureaukikuchishop.net

mint exorcist

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 菊地成孔と、ODこと小田朋美によるユニット(1期・2期と別メンバーでSPANK HAPPY名義での活動歴があったようだがそちらは未聴)。菊地成孔と言えばジャズのイメージが強かったが、こちらではテクノ、ハウス、エレクトロニカAORなどをやっていて、いずれもキャッチーさに溢れた高水準のポップスで舌を巻いた。M2・Beck「Devils Haircut」カバーでの不協和音っぽい鍵盤やM9「共食い」の曲調など、時折覗くダークな面がいいスパイスになっていていい感じ。

 

 

3.Tool『Fear Inoculum』

 孤高にして崇高なる唯一無比のUSバンド・トゥールの、13年ぶりの復活作にして問答無用の傑作。正直前作『10,000 Days』は聴いてて途中でダレてしまいがちであまりリピートする気になれなかったが今作は違った。7曲80分で内6曲が10分越えという極端な構成ながら、すべての曲が圧倒的な創造性と構築美を伴いエネルギッシュに躍動していて、余裕で最後まで聴けて何度でもリピートしたくなる出来なのだ。ギター、ベース、ドラムス、ボーカルによる、使い古されたロックというフォーマットでも、十分にオリジナリティに満ちた音楽がやれるのだということを彼らは教えてくれる。

 未だに2006年のサマソニで体感したライブの凄まじさが忘れられない。またあの音を浴びれる日が来るのを、心待ちにしている。

 

 

2.FKA Twigs『Magdalene』

 名前は知っていたけど聴けていなかったシリーズ。祈りを捧げるかのような美しく繊細な高音ボーカルに耳を奪われる。それに、この世の光と影を鮮やかに描き出すような研ぎ澄まされたサウンドスケープが合わさって完璧な世界観が構築されており、ただただ圧倒された。深く胸に訴えかける、本当に力のある音楽だと思う。

 

 

1.Kindness『Something Like A War』

 UK出身のシンガーソングライターの3rdアルバム。僕は今作で初めて耳にしたのだが、インディロック・R&BHIPHOP~ハウス等の要素をナチュラルに溶け込ませたその洗練されたサウンドに一瞬で虜になってしまった(ソランジュや、本作の共作者でもあるブラッド・オレンジが盟友とのことで納得)。カインドネスは母親の母国・南アフリカの音楽に強い関心を持っているようで、実際に本作でかの国のシンガーを起用もしつつ取り入れているが、そのノーボーダーな感覚が豊潤でオリジナリティ溢れる音楽に結実していて素晴らしい。前述したLady DonilやBurna Boyなどの極めて優れたアーティストらが活躍をみせるアフリカは、今後ますます無視出来なくなりそうだ。

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~2019年ベストまとめ~

01.Kindness『Something Like A War』

02.FKA Twigs『Magdalene』

03.Tool『Fear Inoculum』

04.FINAL SPANK HAPPY『mint exrocist』*

05.Lady Donil『Enjoy Your Life』

06.Arlo Parks『Super Sad Generation』

07.Burna Boy『African Giant』

08.Solange『When I Get Home』(前作:2016年No.8)

09.Daichi Yamamoto『Andress』*

10.Sequoyah Murray『Before You Begin』

11.Jeanne Cherhal『L'An 40』

12.Tank and The Bangs『Green Ballon』

13.桜エビ~ず『octave』(前作:2018年No.40)*

14.尾崎由香『MIXED』*

15.Little Simz『Grey Area』

16.んoon『Body』*

17.Sudan Archives『Athena』

18.sora tob sakana『World Fragment Tour』(前作:2016年No.7)*

19.フィロソフィーのダンスエクセルシオール』*

20.Sampa The Great『The Return』

21.Billie Eilish『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』(前作:2018年No.7)

22.Erika De Casier『Essentials』

23.私立恵比寿中学『playlist』*

24.Binkbeats『Private Matters Previously Unavailable』

25.LIZZO『Cuz I Love You』

26.Teebs『Anicca』

27.yeule『SerotninⅡ』

28.Brittany Howard『Jaimie』

29.kuro『JUST SAYING HI』*

30.Velvet Negroni『Neon Brown』

31.Robert Glasper『Fuck Yo Feelings』

32.・・・・・・・・・『Points』(前作:2018年No.38)*

33.Kim Gordon『No Home Record』

34.Nick Cave &The Bad Seeds『Ghosteen』(前作:2016年No.4)

35.Red Velvet『'The ReVe Festival' Finale』

36.Anderson .Paak『Ventura』(前作2018年No.37)

37.Jeff Ballard『Fairgrounds』

38.Task have Fun『BLUE ALBUM』『RED ALBUM』『GREEN ALBUM』*

39.Jamila Woods『LEGASY! LEGASY!』

40.Philip Bailey『Love Will Find A Way』

41.Dos Monos『Dos City』*

42.始発待ちアンダーグラウンド『始発待ちアンダーグラウンド』*

43.Madonna『MADAME X』

44.乃木坂46『今が思い出になるまで』*

45.Avery R. Young『Tubman.』

46.THE ALEXX『VANTABLACK』*

47.Vira Talisa『Primavera』

48.KIRINJI『cherish』*

49.Maison book girl『海と宇宙の子供たち』(前作:2017年No.35)*

50.おやすみホログラム『5』(前作:2018年No.31)*

 

 

 国内アーティストは18組、2018年作は12/40だったので割合はやや増えたかという感じだけど、よく見るとうち声優・アイドル系が11組、非アイドルの国内アーティストは7組だけとそんなに少なかったのか……と少々驚いた。

 1位のカインドネスは一聴して「こいつは年間ベスト候補だ!」と思ったし実際にそうなったけど、僕の見た限りメディアや個人のベストアルバム選考でも見かけなかったのが意外だった(とんでもない傑作なので未聴の人は聴いてみてね)。

 

 選外だけど出来がよかったもの・気に入ったものをいくつか挙げると、アイドル系では3776『歳時記』(傑作だけど長くてかなり気合入れないと聴けずリピートしにくいというところで外れた)や、nuance『botän』(EP。ずっと希望してるけどフルアルバムだったら確実にランキング入りする)、ロック系でHalf Mile Beach Club『Be Built, Then Lost』、Battles『Juice B Crypts』、他、パソコン音楽クラブ『Night Flow』、Jean-Michel Blais『Matthias & Maxime』など。

 

 

 さて、もう2022年になるけど2020・2021年作はまだ全く 手 つ か ず です(ランキングすら決めてない)。これからやっていくけど果たして追いつく日は来るのだろうか……

 この2019年分まではすべてフィジカル盤を購入したものだけで構成されているけど、2020年からはコロナ禍で(店舗に行きたくても行けず)Spotifyをより活用するようになったため、そこで見つけた配信のみの作品も選出することになりそうです。それではまた。

 

2020年ベストはコチラ

【前編】Pパタが選ぶ2019年ベストアルバム50

(2018年ベストはコチラ) 

 

  「2019年の」ベストアルバム記事です。もはや2年遅れがデフォになりつつありますが"いま"に追いつきたい気持ちはあります(せめて半年遅れぐらいまで……)。

 購入枚数が去年までより更に増えたこともあり過去最高の50位までのランキングになっています。主に一枚通しての完成度と好きの度合いを基準に選定しました。それでは2019年の記憶を手繰りながらお読み下さい。

 

(※全てCDかレコードでフィジカル盤が出ていますが、廃盤で現状注文出来ないもののみ販売サイトではなくSpotifyのリンクを貼っています)

 

 

50.おやすみホログラム『5』(前作:2018年No.31)

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 冒頭三曲はブロック・パーティのギタリスト、ラッセル・リサックが参加していて(!)、いずれも素晴らしいプレイを聴かせてくれて文句なしの出来だ。以降も、(このユニットの持ち味だと思うが)どこか切なさを湛えたダンスナンバーが続き、グッと世界観に引き込まれる。他ではありそうでない独自の魅力があると感じる。

 

 

49.Maison book girl『海と宇宙の子供たち』(前作:2017年No.35)

 2021年5月30日の千葉・舞浜アンフィシアターのライブ終演後にグループが「削除」されたため、結果的に今作がオリジナルアルバムとしては最後の作品となってしまった。ライブは毎回最高だったし個人的にはまだまだ活動して欲しかったと思う反面、今作を聴いているとブクガとして表現したいことはやりきったのかもーと少し清々しい気持ちになったりもする。楽曲の強度も各メンバーの表現力も増し、より深く心の奥底まで沁み込んでくる。

 単発のキラーチューンを挙げるなら別の作品からになるだろうが、アルバム一枚通して聴いた際の満足度で言えば間違いなく最高傑作と呼べる出来だ。このグループはきっとこれから先も記憶に残り続けるだろう。

 

 

48.KIRINJI『cherish』

 有名だけど今まで聴いていなかったシリーズ。とても洗練されたシティポップだが、「雑務」や「善人の反省」など独特なタイトルや歌詞のセンスにヤラれた(ちょっと毒ががあるのも◯)。曲調のカッコ良さと歌詞のアホらしさのギャップがすごいM7「Pizza VS Hamburger」とか極まってる。

 

 

47.Vira Talisa『Primavera』

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 インドネシア女子による洗練されたポップス集。ボサノヴァ渋谷系、シティポップなど軽快な歌で心地よく聴ける。フィジカル盤は諦めていたのだがなんと2021年に奇跡のリリース! 店で見かけて即買った。

 

 

46.THE ALEXX『VANTABLACK』

 女性ボーカル、打ち込みのビート、バンド名やアートワークなどモロTHE XXフォロワーという感じだが(どちらもフジロックに出演している)、それだけに良質で完成度の高いインディロックを楽しませてくれる。後半に意外と明るめの曲もあったりとバリエーションもある。

 

 

45.Avery R. Young『Tubman.』

 ジャミーラ・ウッズの師でもあるらしいシカゴのSSW・プロデューサーの1stアルバム。基本ミディアムテンポながらロックの熱も湛えたグルーヴィなソウルで燃える。本人の歌唱や各演奏の素晴らしさに加え、多人数によるコーラスが更に楽曲を盛り立てる。センスの塊みたいな作品。

 

 

44.乃木坂46『今が思い出になるまで』

 4thアルバムにして、全体を通しての印象は(ジャケ含め)これまでで一番かも(4タイプあるがオーソドックスなタイプAを購入)。リード曲でもあるオープナー「ありがちな恋愛」からして、恋愛・結婚の"しあわせ"を捨てて夢を追うというアイドルが歌うには面白い題材の佳曲だし、今やライブ鉄板曲となったロックナンバーM11「日常」に、M7「アンダー」・M9「新しい世界」など、陰側だからこその魅力が光るアンダー楽曲、グループ新機軸のM4「シンクロニシティ」、卒業する西野七瀬をセンターに据えた、爽やかさと切なさの配分が絶妙なM6「帰り道は遠回りしたくなる」といった表題曲など、シンプルにいい曲が揃っていてランクイン。

 坂道グループの中で一番聴いているのは乃木坂だったが、正直ベストアルバムに選出することは無いだろうと思っていたので嬉しい誤算だった。

 

 

43.Madonna『MADAME X』

Madame X -Deluxe-

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  • アーティスト:Madonna
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 レゲエや民族音楽など、ラテン系の影響を強く感じる意欲作。還暦を迎え、キャリアも相当に重ねてきた筈なのにクリエイティビティを失わずに攻められるのは本当にすごいと思う。

 またラテン系以外でも、ディスコティックで高揚感溢れる曲調から、終盤ゴスペル的なコーラスに包まれるM3「God Control」や、いかなる困難にも負けず前に進んでいく強い意志が伝わってくるラスト「I Rise」なども素晴らしく感動的だ。惜しむらくは、15曲計65分聴き通す中でダレる瞬間もあるところで(あくまで私見だが)、それがなければもっと上位だっただろう。

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42.始発待ちアンダーグラウンド『始発待ちアンダーグラウンド

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 セルフタイトルを冠した1stアルバム。アイドルグループらしからぬクールなジャケットに惹かれて曲を聴いてみたところ、イメージを裏切らない出来だった。M2「感情線惑星」の、独自の浮遊感を漂わせながら妖しくエスカレーションしていくサビメロやM6「フリフリ」のヒリつくロックンロールサウンドには痺れるし、一方、M5「HELP ME」M7「犬とメシア」などの昭和歌謡テイストを盛り込んだポップスもあったりと振り幅があって、コーラスワークも良く、最高だった。アナログ盤出して欲しい。

 

 

41.Dos Monos『Dos City』

Dos City

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 雑多で奇妙で異形な、破壊力抜群のトラックと挑戦的なフロウで唯我独尊の道を往くジャパニーズヒップホップ。1stフルらしくエナジー迸りまくってていい感じじゃないでしょうか。"イル(ill)"って言葉がピッタリな音楽だなと思った。

 

 

40.Philip Bailey『Love Will Find A Way』

 アース・ウィンド&ファイアーのボーカルによるソロ作(白状すると僕はEW&Fをきちんと聴いたことがないのだが)。カバー曲が主体ながら、その芳醇な音楽性にはヤラれた。トーキング・ヘッズの「Once In A Lifetime」のアレンジとかセンスの塊。筆舌に尽くし難い素晴らしさなので聴いてみて。

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39.Jamila Woods『LEGASY! LEGASY!』

Legacy! Legacy!

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 米シカゴのSSW。ジャケのイメージを裏切らない、超クールなネオソウル作品。特徴的ないい声をしているし、トラックの洗練具合と併せて隙がない。

 

 

38.Task have Fun『BLUE ALBUM』『RED ALBUM』『GREEN ALBUM』

BLUE ALBUM

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RED ALBUM

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GREEN ALBUM

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  三人組アイドルグループの1stフルアルバム。なかなかアルバムが出ないなと首を長くして待っていたら、同時に3枚もリリースされて驚いた。Spotifyでは重複曲を省いて3枚分の曲をまとめた『PURPLE ALBUM』が配信されたくらいなので、3枚併せてひとつの作品と捉えて良いだろう。

 全編に亘ってグッドメロディと力強いバイブスに溢れていて素晴らしい。まさにこれまでの活動の集大成という感じで、3人がクールにキュートにキメまくった佳曲・名曲目白押し。可愛さ、楽曲の質、トークスキルと高いレベルで三拍子揃った稀有なグループだし、もっと多くの人に知られてもいいと思う。

 

 

37.Jeff Ballard『Fairgrounds』

Fairgrounds

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 売れっ子UKジャズドラマーの、ソロ二作目とのこと。時に不穏に、時に歌心を以てエキサイティングなグルーヴを聴かせてくれる。にしてもドラマーのソロ作って曲の制作過程どうなってるのかとか定義とか謎なので知りたい。

 

 

36.Anderson .Paak『Ventura』(前作2018年No.37)

Ventura

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 非常に短いスパンで新譜をリリース。正直、前作は肩透かしを食らった感があったが今作はいい感じ! ただ依然として2ndの『Malibu』は高い壁だと感じる。

 

 

35.Red Velvet『'The ReVe Festival' Finale』

 5人組のガールズK-POPグループ。6th・7thミニアルバムに新曲4曲を加えたアルバム(曲順はそれぞれバラして再構成されており、きちんとひとつの作品として仕上げた感があり好印象)。高音域の歌声が美しく響く冒頭の「Psycho」からして素晴らしいが、M15「Zimzalabim」のような先鋭的なサウンドが光るアッパーな曲もあり、ハイレベルでバラエティに富んだ楽曲の並ぶ聴き応えのある作品集となっている。通常の歌唱はもちろん、ラップもいちいちカッコよくキマっていてアガる。

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34.Nick Cave &The Bad Seeds『Ghosteen』(前作:2016年No.4)

Ghosteen

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 最早誰も侵すことの出来ない聖域を築き上げた感すらある。ジャケットが示すように前作と比べて光を思わせる楽曲が多く、ニック・ケイヴの声と共に賛美歌のように響く。あたかも涅槃に辿り着いたかのような穏やかさだ。最愛の息子の死など幾多の困難を乗り越えてきたことを思うといっそう感動してしまう。

 

 

33.Kim Gordon『No Home Record』

 元ソニック・ユースのベーシスト:キム・ゴードンの、何と初のソロアルバム! 

音楽以外の活動も多々行っていたとはいえ、35年以上ものキャリアの中でソロ作を出していなかった事実には驚くばかりだ。内容はと言うと、かなりソニック・ユースのイメージに近いもので(サーストンやリーのソロ作と比べても最も―というレベルかも)、そのノイジーでエッジの利いた音を気に入らない訳がなかった。ソウルメイトと信じていたサーストンの裏切りで離婚しソニック・ユースが解散しても、決してロックの衝動を失わずに彼女は進む。

 

 

32.・・・・・・・・・『Points』(前作:2018年No.38)

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 通称ドッツちゃんの2ndアルバムにしてラストアルバム。振り返ってみると前作は彼女たちの歌に焦点が当たっていたと感じるが、今作はよりサウンドに厚みが増し、演奏と歌がうまく融和して、シューゲイザー作品としてネクストレベルに引き上げられた印象だ。ただシューゲイザーのみならず、M4「サイン」ではテクノにも接近し今までにない刺激的なトリップ感を生み出していてたまらない。

 前作の記事でも書いたが2019年3月をもって彼女たちは『解散』してしまっている。浮遊感のあるtip Toe.のカバーM6「クリームソーダのゆううつ」は、哀愁漂うメロディーも相まって、短期間で消え去ってしまう彼女たちの儚さを表しているようで沁みた。

 ライブを観ることもなく終わってしまい落胆していたのだが、間もなくこのドッツの運営チームが新たにRAYというアイドルグループを手掛け、それがシューゲイザー✕アイドルポップというフォーマットを引き継いでいる事が判り息を吹き返したのだった(とは言えドッツも観てみたかったが……)。

 

 

31.Robert Glasper『Fuck Yo Feelings』

 ロバート・グラスパーが気の合う仲間をスタジオに呼んで作ったミックステープ(既に同じメンツでアルバム出していたようだがそちらは未聴)。殆どの曲でラッパーを招いていて、どれもセンスよくまとまっている。ただ19曲72分と長く、通しで聴くと疲れるのが難点。

 

 

30.Velvet Negroni『Neon Brown』

 ジャケットにピンと来て試聴したら大当たり。中~低音域を美しく響かせる繊細なボーカルと、少ない音数ながら先鋭的なトラックが冴える、心に沁み渡る静謐なインディR&Bだ。サウンドや編曲など随所にこだわりが感じられるウェルメイドな作品。

 

 

29.kuro『JUST SAYING HI』

 TAMTAMのボーカルのソロデビューアルバム。ヒップホップ、インディR&B等を基調としていて、トロピカルでポップなTAMTAMと比べるとかなりクールな印象だが(spotifyで本作を見つけたのだが最初気付かなかった)、これが個人的にかなり好みでツボった。8曲32分とコンパクトだがどの曲もハイクオリティーで満足度高し。

 

 

28.Brittany Howard『Jaimie』

 アラバマ・シェイクスのボーカルのソロデビューアルバム。よりパーソナルな内容を歌っているとのことで内省的な曲もあり、これぞというパワフルな曲もありだが、それぞれの楽曲に豊富なアイデアが盛り込まれていて聴き応え十分。サウンドも洗練されていて素晴らしい。

 

 

27.yeule『SerotninⅡ』

 ジャケットに惹かれて手に取ったのだが、ルックスとは裏腹に透明感のあるウィスパーボイスと、雪原を思わせるトラックが心地良良い至高のエレクトロニカだった。無機質なようであたたかみを感じさせるような、不思議な魅力があって良い。

 

 

26.Teebs『Anicca』

 フライング・ロータスの盟友らしい。タイトルは仏教用語の『無常』を指すようで、基本エレクトロニカだが一部瞑想音楽やアンビエント的なトラックもあり、落ち着きたい時に聴きたくなる。客演のスーダン・アーカイヴスやパンダ・ベアらとの相性も抜群だ。

 

後編につづく!

【後編】sora tob sakana解散ライブを観て胸に去来したもの

前編はコチラ

 

休憩明け。再びクジラの鳴き声が響く中、バンドによる活き活きとしたアレンジを施した、光を思わせるような『海に纏わる言葉』が奏でられ、二部がスタートした。

 

曲終わりのしばしの沈黙のあと、聴き馴染みのあるイントロと共にライトが照らされ、『deep blue』の衣装に着替えた3人が登場。初期から歌い続けてきた『クラウチングスタート』を披露した。大空に吸い込まれていくような伸びやかで爽やかな歌とキュートな振り付けで、たちまちオサカナの世界に引き込まれる。やはり終盤の合唱パートは随一のエモさで心を奪われた。

 

次いで中盤のラインダンスが仲睦まじい、複雑なリズムと牧歌的なサビメロの対比が鮮やかな『Summer Plan』、近未来感あるサウンドとタメの生み出すグルーヴが気持ちいい『タイムマシンにさよなら』と来て、デジ・ロックチューンの『新しい朝』へ。ゴリゴリの演奏に、未だ幼さを残したキュートな歌声が乗るバランス感がたまらない。フックの強いリフと合わさるロボットダンスとかまなちゃんの「起きろー!!」(今回過去最高の声量か?)のブレイクとか好きなポイント多数だが、メーターを振り切るようなキレキレのバンド演奏がより熱くさせてくれた。

 

「ということで、後半戦、始まりましたー!」と、ふぅちゃんの元気な声でMCタイムに。なっちゃんがライブビューイングについて触れた後、「あそこ見て」とカメラを指差し、その奥の劇場の観客に呼び掛けたのだがー

「こっちには聴こえないんですけど、、あっそうか、(コロナだから)声出してないのか、どっちにしても。じゃ、なんもないでーす」と途中で気付き、一同笑いに包まれた。とてもなっちゃんらしいMCである。

 

まなちゃんは「でも出来るなんてすごくないですか?」と感想を漏らしたが、本当にそう思う。オサカナが配信のみならず六都道府県も結んだライブビューイングを(しかも四時間も)やるなんて想像もつかなかった。また、この公演の映像化プロジェクトの支援総額は4633万円(達成率463%)にも上ったのだ。いかにファンやスタッフから愛されていたか、実感せずにはいられない。

 

話が一段落するとまなちゃんが「今からアコースティックパートに移りたいと思います」と伝え、3人が椅子に座る。「早速曲、聴いてもらいたいと思いますー」。

 

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温かみのある音色でグルーヴィーなアレンジを加えた『帰り道のワンダー』から、続く『蜃気楼の国』でしとやかなムードに。バンドの繊細な演奏と、イノセントな3人の歌声が胸を打つ。夢のあとを儚むように。懐かしむように。楽器の音と声の振動が会場を満たしていく。時間が経てば、どんなに大切な記憶も薄れて蜃気楼のように消えてしまうかもしれない。それでも僕は、彼女たちがみせてくれたこの素晴しい景色を、生涯覚えていたいと願った。

 

そしてなっちゃんポエトリーリーディングから『ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン』へ。彼女たちの心を映し出すように、神聖さすら漂う美しいコーラスと演奏が響く。合唱と、それぞれのポエトリーリーディングを挟むシンプルな構成ながら、琴線に触れてくる。こんな純粋なものが存在するってことが信じられない。許されるならずっと浸っていたい。でも曲は終わる。心地よくも切ない余韻を残して。

 

アコースティックコーナー最後を飾ったのは、大きな夕陽がどっぷりと海に沈んでいくような『燃えない呪文』だった。黄金色の光に満ちたスクリーンとライトに照らされ、メロディーを慈しむように大切に歌い上げる。その声がとても優しかった。

 

MCで「緊張したー」とコーナーを振り返る3人に「良かったよ」と声をかける照井さん。「でも俺、譜面前にあって全然見えなくてさ。後で映像でちょっと見るわ」の言葉に「あ、別にそれは大丈夫です」と即答するなっちゃん

 

そ れ は 大 丈 夫 で す 。

 

ここちょっとてるりん可哀想だった。

 

まなちゃんの振りで、やはりイノセントな歌声が映える『透明な怪物』をしっとりと聴かせたあと、流麗な鍵盤の音色が流れ『踊り子たち』が始まる。

 

なんて幻想的で儚げで、甘美なんだろう。ダンスには向かない七拍子で、大切なもののために祈りを捧げるように、何かの願いをかけるように、3人がくるくると踊り、歌っている。バックの演奏が彼女たちに優しく寄り添っている。何度だってオサカナの音楽は特別な感情を呼び起こす。きっとこれからも。何度だって。

 

そして――温かみのあるアルペジオのギターが奏でられて間もなく、会場を揺らすような爆音が響き渡る。sora tob sakanaとの出会いの曲、『夏の扉』だ。初めて耳にした時、この曲には何か大切なものが詰まっていると感じた。子供のころにみていたもの。変わっていくもの。目の前の景色を一気にキラキラしたものに塗り変える魔法のような、同時に喪失を予感させる切なさも含んだ音楽。バンドの音が聴こえる。3人の声が聴こえる。魔法は決して醒めないまま、彼女たちはこの日まで僕を追いかけさせ続けた。ラスサビで大輪の花火がスクリーンを覆い尽くし、それを背に笑顔で歌うなっちゃん、ふぅちゃん、まなちゃんの姿をみていると、これまでに芽生えた感情が奔流となって押し寄せてきた。

 

”君の声が その仕草が 僕の心を連れて行った” 

 

ああ、その通りだよ。

ずっとこの曲をバンドセットで、生で聴きたいと思ってたんだ。夢が叶って本当に良かった。

 

チルな『ありふれた群青』では(前曲の夏の扉から引き続き)スタンドマイクを使って少し大人びたステージをみせた。一方次の愛らしい『ケサランパサラン』では曲終わりにふぅまなの2人がなっちゃんに寄りかかるように頭をわしゃわしゃしたりじっと見つめたりしていて、とても仲が良さそうで、あまりにも眩しくて、永遠に憶えていたいと思うような光景だった。

 

MCで夏の扉とありふれた群青でマイクスタンドを使ったことを話すなっちゃん。やりたい事が出来て良かった、と3人が話しているとどこかで聴いたことのある曲がー

 

まな「あれあれあれあれー?」

ふぅ「なんかぁ、聴いたことあるし、なんか急に暇になってきた笑」

まな「ほんとー?」

なつ「私もちょっと暇かもしれない」

まな「あホントー?」

ふぅ「っていう茶番は置いといてー笑」

 

なんと、ライブでは実現不可能と思われていた『暇』が、収録アルバム発売から一年半の時を経てファイナルライブで披露されることに! バンドの生演奏に合わせて、事前に収録した3人の声をサンプラーで鳴らすというコロンブスの卵的発想にちょっぴり感動してしまった。何より良かったのは、MCでは固くなりがちな彼女らが、ステージ上で笑い合いながら本当に楽しそうにサンプラーで遊んでいる姿が見られたこと。ある意味ここもハイライトだった。

 

曲終わりにまなちゃんのタイトルコールでシームレスに『Moon Swimming Weekender』へ。スクリーンに大写しされた月面をバックにクールに決め、続く『tokyo sinewave』では数字の波の演出の中、幽玄な世界観を独自の振りと歌で見事に表現。

 

そしてこの雰囲気を引き継いで、おそらくこれまでに最もライブで披露されたであろう『広告の街』に。始まった瞬間のヒリヒリとした緊張感がたまらない。変則的なリズムをものともしないタイトなバンド演奏で歌い上げる3人。よく番組などで「何でこんな難しい歌が歌えるの??」と聞かれていたが、本当に何で歌えるんだろう? 元々スキルがあった訳でもないはずなのに。照井さんが彼女たちと出会って、いまのsora tob sakanaがあるのは改めて奇跡だと思う。文字が絶え間なく流れるVJ映像と一体となってみせたパフォーマンスは文句なしに格好良く、これまでに身に付けた技術の集大成と言うべきものだった。

 

続く疾走感溢れるロマンチックな『流星の行方』ではしなやかな歌とダンスで会場を魅了。クライマックスで随一の盛り上がりをみせ、拍手喝采だった。そしてー

 

「この場を借りて、お世話になってる方に、感謝の気持ちを伝えさせて頂きたいと思います」

 

と、まなちゃんのMCから、それぞれ照井さんをはじめとしてボイストレーナーやダンスの先生など、お世話になった人にお礼を伝えた。ここまでのライブが出来るようになったのは間違いなく彼らのお陰だ。こちらからも感謝の念を伝えたい。

 

まなちゃんが一度曲フリを忘れてしまった後、仕切り直して『信号』へ。重厚なシンセから凛とした歌へと。ここにきて、ひとかけらの感傷すら入る隙のない深淵な世界観に圧倒された。

 

そこから一転、『New Stranger』へ。イントロでイエローライトに照らされ、みんないい笑顔だ。アニメ・ハイスコアガールとのタイアップでオサカナの名を広めた一曲。軽やかに爽やかに、この曲のようにもっと高みへもっと先へと、彼女たちはこれからも突き進んでいくのだろう。

 

曲終わり、間髪入れずに3人が「ワン、ツー、スリー、フォー!」と弾むような声を上げる。ご存知ライブの鉄板曲、『Lighthouse』だ。スクリーンには曲のイメージに合わせた鮮やかな光の玉が無数に流れ、会場全体が多幸感に包まれていく。まなちゃんもなっちゃんもふぅちゃんも、バンドのダイナミックに躍動するグルーヴに負けじと精一杯の歌声を届ける。全力で。

 

"物語は続く"

 

終盤、会場に響いたこのフレーズに、感慨を覚えた人は多かったんじゃないだろうか? 

もちろん、僕もその一人だ。

 

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「いくよー!!」直後のなっちゃんの煽りと共に発射された紙テープ(ファンに向けて感謝のメッセージが書かれていた)が空を舞い、会場のボルテージはマックスに。もう何度思ったかわからないけど、この世のものとは思えないくらい素晴らしくて最高だ。だから、泣けてくる。曲終わりに寄り添い笑顔を向ける3人に、惜しみない拍手を送った。




「ということで、私たちの今の気持ちを、一人ずつ今から言っていきたいと思います」

 

先ほど同様まなちゃんのMCから、今度はファンに向けてメッセージが送られた。

 

なっちゃん(寺口夏花)~

六年間応援してくださって本当にありがとうございました。sora tob sakanaがこのメンバーで良かったっていうのはホントにずっと思ってることだし、やってきたグループがsora tob sakanaで良かったっていうのはホントに心の底から思ってます。

 

六年間色々あったから……例えば、どの大人を信じたらいいのかとか、そういうのが色々あった訳よ。だから、まぁ、そういうのを学んで来れたから、良かったかな、って思います。

 

私ラジオがとても好きなので、みんなでレギュラーのラジオができたのが嬉しくて、思い出に残ってる。それもすごい嬉しかったし、個人的には一番の思い出かもしれない。

 

ホントに、ウチらほんとにクソガキだったから、周りの大人には本当に迷惑をかけてしまって、ホントに、申し訳なかったなって思ってるんですけど、ゴメンナサイですけど、後悔は別にしてないですね笑 これからそれは、ちょっとがんばって直していこうかな、って思います。ホントにみなさん六年間……六年間じゃない人もいるかもしれないんですけど、sora tob sakanaを応援してくださって本当に、ありがとうございました。

 

~まなちゃん(山崎愛)~

本日は来てくださって本当にありがとうございます。ついにラストライブをね、やることになったんですけど…えーっと、待って。考えます………長い間、お世話になりました! 本当に長くて、六年間ってのは、小学生が卒業しちゃうくらいになってしまうんですけど、ホントに長い間、ぜんぜん薄い時期がなかった。めちゃくちゃ濃くて、ホントにびっくりするくらい色んなことをしてきたんですけど。なんか、あんまりね、普通に学生やってたらできないことをやらせて頂いて、本当に貴重な経験をさせて頂いたなと思いました。えっと、なんかね、楽しいことめちゃめちゃやらせて頂いたので、今日もね、楽しく終われたらいいなと思うんですけど……思って、おります。なのでみなさん、配信見てる方も、全力で最後まで楽しんでいってほしいです。えっと、応援ありがとうございました!

 

~ふぅちゃん(神﨑風花)~

はい、ということで、本日は、来てくださった方、ライブビューイング・配信観てくださってる方、本当にありがとうございます。~私たちずっと解散のことについては話し合ってきて、時期とかもすごく悩んだんですけど、前向きな解散ということでね、今日を区切りにしたいなっていう話だったんですけど。まぁね、六年間続けてきたことが明日からなくなるっていうのがすごく……ねぇ? どうするよ? 明日から一般人だよ(なっちゃん明日は寝るよ」)。明日は寝ましょう笑

 

明日から……ホントに何か、なんだろう。今この瞬間をね、なんか、思い出すと懐かしいなってなるんだろうなって思うと、すごい、思うと感慨深いんですけど。

 

(sora tob sakanaを)やっていないと、多分私はここまでの人間になれていなかったと思うので、やっぱりこう、交わってくださった全ての方に感謝を伝えたいです。

 

アイドル活動を続けていれば誰しも辛い思いをするだろうが、特になっちゃんはよりシビアなものを感じていたことを窺わせた。

ただ、周りの大人たちに迷惑をかけたことに対して"後悔はしてない"というのは、決して我儘な訳ではなく、学び、得られたものがその過程にあったと実感したからこそ出てきた言葉だと思う。衝突があったり、間違ったこともあったかもしれないけれど、その度に前に進んで、ラジオのようなメンバーとの楽しい思い出もたくさん出来てーそういった経験を通して『良かった』のだと。言葉と表情から、彼女が乗り越えてきたものに思いを馳せた。

 

対照的にまなちゃんは基本ハードルも楽しみながら乗り越えて活動を続けてこられたようで、経験したすべてがいい思い出になっているようで微笑ましい。クールなように見えて、一番熱をもっていたのは彼女だったんじゃないだろうか(何気ない「日常」が綴られることの多かったブログの中で、稀にそういった思いを表していることがあった)。彼女がそういった次の何かを見つけてくれることを願うばかりだ。

 

 ふぅちゃんが伝えてくれた「前向きな解散」についてだが、人間関係の不和やビジネス上の問題などではなく、きちんと話し合って決めて、こんな最高のライブを(コロナの弊害もあったものの乗り越えて)開催出来たというのは本当に幸運だったと思うし、3人及びオサカナ陣営の尽力には感謝することしきりだ。

理由についてはコメント等から大まかに察するところで、まさか本人たちはこんなことは考えなかったと思うが、メンバーが(なっちゃんはつい先日成人したとはいえ)まだ少女のイメージを残したまま、これから大人になるというところで終わるというのは、このグループとして何か必然だったような気もする。でも、ファンとしてその先をみてみたかったという想いも、当然ある。

 

ふぅちゃんの抱いた感慨はどれほどのものだっただろう。sora tob sakanaをやっていなかったら「ここまでの人間になれていなかった」と言う程の成長を感じたのだ。悔しかったこと、楽しかったこと、その中で育まれた周りの人たちとの絆は何にも代え難い財産になったはず。それはとても貴重な、永遠を思わせるものだ。

これから何年も何十年も経って、今日のことや活動した日々のことを思い出す時、彼女がどんな眼差しを向けるのか……きっと、それはそれは特別な感情が伴うのだろうなと、想像して胸が熱くなった。もちろんなっちゃんもまなちゃんも、いつか同じように思い返す日が来るのだろう。

 

「―ここの3人、これから進んでいく道はばらばらですが、これからもそれぞれ応援してくださると嬉しいです。えー、ということでね、はい。締めたいと思うんですけど……(拍手に)ありがとうございます。えー、改めて…sora tob sakanaを、六年間

という活動でしたが、私たちsora tob sakanaを好きになってくださって、本当にありがとうございました!」

「「ありがとうございました!」」

 

ふぅちゃんの礼と共に、まなちゃんとなっちゃんも感謝を込めて頭を下げた。 

 

『WALK』へ。ポジティブなエネルギーに溢れた演奏で歌う3人の表情が、とても満ち足りているようにみえる。これから無限の可能性の広がる未来に向かって進んで行くという曲で彼女たちの心境にピッタリだと思うが、結成からこの日まで歩いてきた道のりを強く感じさせられて込み上げてくるものがあった。その歩みももうすぐ……

 

曲が終わると、ひときわ強い拍手が鳴り響いてなかなか止まなかった。確かに素晴らしいパフォーマンスだったからというのもある。でも、きっと、みんな次が来てほしくなかったのだ。だってその時が来たら、すべてが終わってしまうから。僕たちは手を叩き続けた。それでも、だんだんと会場は静まっていき、その瞬間はやってきた。

 

静かで優しい鍵盤の音が響く。それと共に、スクリーンに映ったサカナのシンボルが解放を示す形へと変化し、ふぅちゃんが歌い始める。とうとう僕たちはここまで辿り着いた。ラストツアーでは生で披露される事のなかった『untie』だ。ふぅちゃんに続いてまなちゃんが、まなちゃんに続いてなっちゃんが、その歌を追いかける。一音一音を噛み締めるように。大切に大切に、最後の歌を歌う。ベタだけど、時が止まればいいのにと思う。この愛すべき時間のままで。

 

なっちゃんが最後のパートを歌い終えると、ステージの中央に集まり3人は手を取り合った。すると、上手と下手双方から煙が吐き出され、彼女たちの姿を覆っていくのが見えて、胸が締め付けられるようだった。ああ、もうこの3人をみるのは最期だと。なっちゃんも、まなちゃんも、ふぅちゃんも、笑みを浮かべている。お互いを讃え合うように。ただいまを言い合っているように。本当にいい笑顔だ。でも、煙がせり上がってきて、次の瞬間とうとうその顔まで覆い、僕は彼女たちを見失った。ステージを埋め尽くしてなお煙がもくもくと拡がる中、黄色いライトが差し込み、大ラスのバンドのインプロヴィゼーションは耳をつんざかんばかりに猛り狂った。僕たちの悲しみも何もかも押し流してしまえと言わんばかりに。破壊的なようで、創造的なようでもあって、尋常じゃないほど胸をえぐられる光景だった。

 

やがて猛烈なインプロが鳴り止み、煙が引いたステージを改めるも、そこには誰の姿も見当たらなかった。

 

再び静かな鍵盤の音が流れると、3つの光の玉がスクリーンを飛び交った。間もなく音が止んで光が『sora tob sakana』の文字を描き、しばらくするとそれも消えた。そして、会場に完全な静寂が訪れた。いま起きたことをすぐに受け止めきれなかったのだと思う。誰もが動けずにただじっとしていた。長い沈黙のあと、かなり遅れて聴こえてきた誰かの手を叩く音から、会場に拍手が伝播した。これでファイナルライブ『untie』の幕が降りたのだ。

 

ああ、行ってしまった。なんという喪失感だろう。ただ、この上なく切なかったけど、同時に痺れた。これまでに築き上げてきた世界観を、彼女たちは最後の最後まで守り抜いていたから。あまりにも美しい幕引きで、まさにsora tob sakanaだという感じだったし、これでこそ僕が心から愛したグループだと思った。彼女たちに出会えて、彼女たちのことを好きになれて、本当に良かった。




その日の夜にまなちゃんが、翌日にふぅちゃんがお礼を伝えるブログを更新して(まなちゃんは卒業したれいが来ていたことも綴っていて嬉しくなった)、少し遅れて最後になっちゃんが『ブログのパスワードを忘れて聞くのも面倒だから』という理由でインスタにお礼の文章をアップした。彼女らしくて少し笑ってしまう。また、その投稿に『#最後の曲終わったあと誰も拍手なくて舞台監督さんが拍手し始めたのをバンドメンバーさんたちとゲラゲラ笑ってたの最高だったな』というタグ(オチ)までついていて、これまた彼女たちらしいと思った。あの感動の裏で笑ってたんかい。



 

 

もう彼女たちがsora tob sakanaとして新曲を発表したり、ライブをやったり、しょーもないブログ(失礼)を更新することもない。『WALK』の歌詞のように前を向いて歩いていきたいと思うけど、現実にはそうキレイに切り替え出来ないものだ。

 

正直ぽっかりと胸に穴が空いたような気持ちだし、当分それは続くだろうし、完全に消え去る日なんて来ない気がする。それは彼女たちのもたらしてくれたものがかけがえが無く、とても大きなものだったという証拠だ。

 

同じようなグループが出てくることなどないだろう。だから彼女たちの残した音楽はずっと聴き続けることになると思う。これから先、もし何もかも信じられなくなるような暗闇に投げ出されることがあったとしても、オサカナの音楽が胸にあるということがどれだけ救いになるだろう。決して誰にも奪うことの出来ない宝物だ。そう思えるものがあるというのは、本当に幸せだ。










今までどうもありがとう。

 

ふぅちゃん、なっちゃん、まなちゃんと、彼女たちに関わったすべての人たちの未来が、これまで以上に輝かしいものになりますように。

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sora tob sakana last one man live『untie』(at 日本青年館 2020.9.6)〜

 

【1部】

  1. whale song
  2. ribbon
  3. 夜空を全部
  4. knock!knock!
  5. 夢の盗賊
  6. Lightpool
  7. FASHION
  8. 鋭角な日常
  9. flash
  10. Brand New Blue
  11. タイムトラベルして
  12. 秘密
  13. シューティングスター・ランデブー
  14. 魔法の言葉
  15. おやすみ
  16. アルファルド
  17. 乱反射の季節
  18. 嘘つき達に暇はない
  19. silver
  20. My notes
  21. ささやかな祝祭
  22. 発見
  23. パレードがはじまる
  24. World Fragment
  25. まぶしい
  26. 夜間飛行

 

【2部】

  1. 海に纏わる言葉
  2. クラウチングスタート
  3. Summer Plan
  4. タイムマシンにさよなら
  5. 新しい朝
  6. 帰り道のワンダー
  7. 蜃気楼の国
  8. ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン
  9. 燃えない呪文
  10. 透明な怪物
  11. 踊り子たち
  12. 夏の扉
  13. ありふれた群青
  14. ケサランパサラン
  15. Moon Swimming Weekender
  16. tokyo sinewave
  17. 広告の街
  18. 流星の行方
  19. 信号
  20. New Stranger
  21. Lighthouse
  22. WALK
  23. untie

 

【前編】sora tob sakana解散ライブを観て胸に去来したもの

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 開演時間を過ぎてもまだ場内にはSEの厳かなチェロの調べが流れていたが、それもほどなくして止み、波の音と鳴き声から、鼓動を思わせるようなドラムがゆっくりと響き始めた。それと共に悠然と泳ぐ巨大なクジラが紗幕に浮かび、始まりを告げる『whale song』が耳に滑り込むと、"untie"のシンボルが眼前に映し出された。

思わず身震いしてしまった。あの発表からこの日を迎えるまで感傷に浸ってしまうことが多かったが、時はお構いなしに進み続け、今こうしてここにいる。

 

さぁ、と。

バンドメンバーが高らかにかき鳴らす音のシャワーの中、彼女たちの最後のステージをしかと見届けようと覚悟を決めた。そしてー

 

sora tob sakana始めます」と、いつも通りに開幕が宣言され、一同が拍手で迎えた。

 

クラシカルなイントロが流れる。この日初めて歌われたのは『ribbon』だった。幕が覆われたまま、メンバーがシルエットのみ映る演出で幻想的だったが、特に思い入れのある曲だったので正直3人の姿を直接観ながら聴きたいという思いも過った。ただ、バンドメンバーによってよりドラマチックに奏でられた大好きな曲は、これまでの事や、未だ見ぬ未来をも内包しているようなスケールをもって胸に響いてきて、素晴しいと感じるほどに涙腺が緩んだ。この魔法がかった音楽に、僕はずっと魅了されてきたのだ。

 

続いて慣れ親しんだ静かなイントロから、ブレイクと共に幕が降りると、新衣装に身を包んだふぅちゃん、まなちゃん、なっちゃんの姿が。『deep blue』時同様本人達が望んだのだろう、やはりカラフルな衣装だ。曲は彼女たちの原点とも言うべき、デビューシングルの『夜空を全部』。見た目だけではない、当初よりもずっと表現力を身に着けた彼女たちの成長を、そこに至るまでの軌跡を感じて、またしてもじんとしてしまう。

 

次は2ndアルバムのリード曲『knock!knock!』。アラビアンな間奏と両手を上げて身を揺らす独自の振り付け、それに彼女たちの背に広がる曼荼羅の映像も相まって世界観に引き込まれる。この曲の振り幅がたまらない。

そして曲終わりの拍手が鳴り止む前にギターがけたたましく唸りを上げ、きらびやかなロックチューン『夢の盗賊』へとなだれ込む。オサカナの曲は夜をイメージしたものが多いが、このトリップ感は格別だ。サビでのユニゾンのボーカルが力強く、歌詞通り回転するような重厚なグルーヴと共に夢の世界に連れて行ってくれる。間違いなく今までで一番、特別な夜へと。

 

MCタイム。なっちゃんのライブビューイング・配信を含めたお客さんへのお礼から、「私たちsora tob sakanaにとって最後のパフォーマンスになるので、最後まで目に焼き付けて欲しいなと思います。最後まで一緒に楽しんでいきましょう!」と続けるふぅちゃん。最後だからと気負った様子はない挨拶でオサカナらしい。まなちゃんのフリで次へ。

 

観客のクラップで一体となる『Lightpool』、洗練されたサウンドと間奏でのモデルウォークも印象的な『FASHION』とアーバンなナンバーを続けた後、ライブ定番曲の『鋭角な日常』へ。タイトなリズムに乗せて有機的に絡み合う各楽器の音色が異国情緒を漂わせ、赤い照明とお馴染みの炎のVJ映像、3人の気合の入った歌唱とダンスが会場を熱を帯びた異空間に染め上げていく。ふぅちゃんがヘドバン時に「一緒にー!」と煽ると特効の火花が上がり、ステージに華を添えた。

 

続く『flash』は疾走感溢れるロックチューンだが喪失や別れといったテーマが含まれていて、それを体現するような3人の表情に引き込まれる。喜びも悲しみも呑み込んで、僕らは前に進んでいく。

 

メンバーも特にお気に入りという『Brand New Blue』では特に明るい笑顔が見られパフォーマンスも爽やかに。後半になるにつれエモさが加わってくるのも良い。ふぅちゃんのポーズとりながらのニコっとした表情最高かよ死んだ。

 

MCで「(鋭角な日常で)生火花が上がりました。やったね!」とふぅちゃん。冒頭の紗幕など、今回初めて取り入れた演出について触れ、和気あいあいとするオサカナちゃんズ。

なっちゃんは新衣装について「最初は真っ白な衣装ばっかりだったじゃん? 最後にふさわしい感じになったよね。色とりどりで」と話した。それは、周りの大人たちに言われるがままだった少女たちが、大人に近付いたことの表れのようにもみえた。

 

少ししっとりとした『タイムトラベルして』から『秘密』に。冒頭でまなちゃん今日イチの笑顔。可愛らしい曲調と振り付けだが、これまた後半にかけてダイナミックなバンドアレンジで盛り上がり、それに共振するような3人のパフォーマンスに心をギュっと掴まれた。

 

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演出含め屈指のキュートさを誇る『 シューティングスター・ランデブー』を終えて、冒頭でグルーヴィーな演奏でソロダンスをフィーチャーした後、シームレスに『魔法の言葉』に突入。そのライブならではのアレンジに会場が沸いた。後半でも加えられた箇所があるが、もともと曲がもっていたドリーミーな世界観をさらに輝かしくさせていて、その中で愛らしく歌い踊る彼女たちがあまりにも眩しく、素晴らしかった。

 

次の『おやすみ』は夕暮れから夜に沈んでいくような穏やかなステージで、その飾り気のない無垢な歌唱に一気に郷愁に包まれる。心境と重なっているのだろう、3人の切なげな表情が印象に残った。ラスト、並んでのおやすみポーズが尊い

それから幻想的な雰囲気の『アルファルド』を終えてMCへ。

 

まな「ここまで16曲だそうで、普段の定期公演一本分が終わってしまいました」

ふぅ・なつ「「おつかれー!」」

まな「でも〜、まだ、1時間なんだよ? すごくなーい? はービックリ……」

なつ「1/4みたいな感じってこと? ウケるね(苦笑)」

 

"まだそんなに残ってるのかよ……"と言わんばかりの引きトーンに笑ってしまう。確かに改めてクレイジーな公演だ。こっちは嬉しいけども。この緩いMCももう見納めかと思うと寂しくなる。

 

まなちゃんの曲フリで鋭いギターカッティングが耳に残る『乱反射の季節』が披露されると、そこから原曲より更に勢いを増したギターとコーラスで盛り上がる『嘘つき達に暇はない』、ダンサブルなグルーヴにクール&キューティな振り付けと照明の演出も光る『silver』、ストレートにロックする『My notes』と畳み掛け、魅せられ燃えた。

 

タイトル通り祝祭感に溢れた『ささやかな祝祭』(特典会でふぅちゃんがこの曲を「本当に好き!」と屈託のない笑顔で言っていたのを思い出す)では間奏部でお馴染みのメンバー紹介。彼らのことが好きな気持ちとか、これまで一緒にやってきた絆が伝わる、幸福感に溢れたステージでとても温かな気持ちになれた。

 ふぅちゃんの「ありがとうございます!」でMCに。

 

まな「後ろにね、いま大きいLE…おぉ~」

なつ「山崎〜!(後ろのLEDに向かって手を振る)」

まな「おぉ~ど、どこ?」

なつ「山崎~~!!」

まな「ーあるんですけど、これがめちゃ動いてたらしくて。どう見えていたんだろうか?」

なつ「なんか、多分壁の中の住人の気持ちになる」

まな「あ、なるほどね。そういうやつね」

なつ「そういうやつ」

まな「はいはいはい」

なつ「はいはいはい」

照井「わかんね〜」

 

これぞオサカナMCクオリティである。お分かりいただけただろうか?

バンドメンバーとの思い出(「やっぱり人狼」となっちゃん)から定番のリンタロウさん(Dr.)のサイコパスいじりをした後、「毎回のようにワンマンライブではバンドメンバーのみなさんと一緒にやらせて頂けて、最後も一緒に出来て良かったです」とふぅちゃんが締めくくった。

 

MC明けの『発見』では歌い出しで少しミスが見えたが(前奏によるものだったよう)、逆に、難曲だらけのオサカナの曲で他にそういったものが見当たらなかったのが驚異だった。僕たちが目にしないところで研鑽を重ねてきたのだ。バンドアンサンブルの妙が光る、神妙な雰囲気の曲を、彼女たちは艶やかに、掬いあげるように表現していた。手前で三角座りのなっちゃんと、彼女を挟んで背中合わせで立つふぅ・まなちゃんの凛とした姿に感じ入ってしまった。

 

続いて『発見』に通じる独特の世界観の『パレードがはじまる』で引き込み、力強い演奏に乗った『World Fragment』ではポジティブなバイブスに溢れたステージをみせる。

 

そして『まぶしい』へ。最高揃いのオサカナ楽曲の中でも、1stアルバムの曲は特別な情緒をもたらす。青春時代の瑞々しさを宿らせるが如くドライブしまくる演奏と、それに乗せて"さあ行こう"と歌う彼女たちが本当にまぶしい。言葉ではとても表し尽くせない感情の波が押し寄せてくる。この世の中にこんな気持ちになれるものがどれだけあるだろう? 出来ればもっと彼女たちを見ていたかった……。ただただ素晴らしくて、切なくて、涙が溢れそうになった。

 

感動冷めやらぬ中、これまでの数々のライブでハイライトを飾ってきた『夜間飛行』のイントロが流れ出した。バックの巨大スクリーンに街明かりを見下ろしながら夜空をゆく映像が流れ、楽曲への没入感を更に高めてくれる(オサカナが目標としていた"月"へと辿り着くのもナイス演出)。3人とも楽しそうに歌っていて微笑ましい。こんな素晴しい時が永遠に続けばいいのに。この夜の煌めきを忘れまいと、目の前に広がる光景をひたすら目に焼き付けてた。

 

間奏部では、3人体制以降みられていなかったソロダンスが復活!(泣) 轟音で暴れ狂うギター&ドラムスに先導されるかのようにバーストしまくる演奏の中、バックに『FUKA KANZAKI』→『NATSUKA TERAGUCHI』→『MANA YAMAZAKI』ーと次々に名前が表示される演出もそのままで大興奮。ふぅちゃんはスタイリッシュに、なっちゃんは可愛めに、まなちゃんも可愛いめだがややマイペース気味に(笑)ーダンスを披露し、それぞれだったが皆堂々たる様が絵になっていてカッコ良かった。オーラスではこの日を祝福するかのように紙吹雪が舞い、最高潮の盛り上がりをみせる。許されるなら"ら、ら、ら"のコーラスを一緒に歌いたかったな。

「もういっかーい!!」クラップを促しながら笑顔で歌うふぅちゃん・なっちゃん・まなちゃんに、泣きのギターの冴え渡る最後のリフレイン。何度でも続けて欲しかった。夢が覚めるような切ないアウトロが終わると、拍手喝采。一部の幕が下りた。

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後編につづく

【後編】Pパタが選ぶ2018年ベストアルバム40

前編のつづきです。

 

 

20.Georgia Anne Muldrow『Overload』

Overload [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC583)

Overload [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC583)

 

  ネオソウル系のアーティストの作品を聴く機会は増えたが、これも最も素晴らしいもののひとつ。基本ミドル〜スローテンポで、独創的な音色を配した先鋭的なトラックを泳ぐように、どこまでも伸びやかでソウルフルな歌声が響き聴いていて最高に気持ちいい。コーラスの使い方もまたお見事。



19.Mitski『Be the Cowboy』

ビー・ザ・カウボーイ

ビー・ザ・カウボーイ

  • アーティスト:Mitski
  • 出版社/メーカー: Hostess Entertainment
  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: CD
 

  M1「Geyser」の衝撃。高揚感溢れる輝かしいメロディと壮大なスケール感に一気にもっていかれた。正直前作はさほどという感じだったのだが、この2ndで化けたなという印象。オルタナロックの熱量は保ちつつ、M9のようなウェルメイドなポップスも披露してみせたりと、スタイルに捕われない軽やかさもみせる。ゆくはP.J.ハーヴェイかフィオナ・アップルか。可能性を感じさせるSSWだ。



18.cero『POLY LIFE MULTI SOUL』

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

 

  もう音楽を愛し音楽を楽しんでる感がすごいし、結果とてつもなく豊潤な音楽が出来ましたという感じで最高。ハイレベルな事をやりながらどポップに仕上げる腕前、センスしか感じない。



17.Fatima『And Yet It's All Love』

アンド・イェット・イッツ・オール・ラヴ

アンド・イェット・イッツ・オール・ラヴ

 

  まずジャケットがいい。ジャケに惹かれて試聴したらドンピシャだった。これもネオソウル系だが音数は少なめで、音の隙間を活かして強いグルーヴを生み出していて素晴らしい。歌声もいいね。



16.Jamie Isaac『(04:30)Idler』

(04:30) アイドラー[歌詞・対訳・解説付き]

(04:30) アイドラー[歌詞・対訳・解説付き]

 

  印象的な艶やかなピアノとファルセットを用いた美しいボーカル、洗練されたサウンドと、とにかく耳心地がよく浸らせてくれる。中でも切ないメロディの光るM10「Drifted / Rope」は甘美すぎて溶けそう。落ち着きたい夜に聴きたい音楽。



15.w-inds.『100』

100(通常盤)

100(通常盤)

 

  デビュー間もない頃、まだ少年でアイドル然とした彼らをTVで目にする機会はあったものの、取り立てて刺さるものもなく全く関心のなかったw-inds.。それがいつの間にか、先端のサウンドを取り入れた超イケてるダンス&ボーカルユニットに大変身していたのだから驚いた。強く影響を受けているのは現状の米国やK−POP等メインストリームのポップスだろうが、その換骨奪胎ぶりが見事で随所に光るものを感じる(特にM7「Time Has Gone」なんてMV含めてセンスの塊で思わず舌を巻いた)。

 またこのアルバムがすごいのは、ほぼ全ての楽曲の作詞・作曲及びトラックをメンバーの橘慶太が手掛けたセルフプロデュース作品であるところ。それで海外の最新鋭のポップスに引けを取らないハイクオリティーなものに仕上げているのだから恐れ入る。ぜひBTSの音楽が好きな女の子にも彼等の音楽を聴いてもらいたい(メンバーの年齢は一回りは上だが笑)。もちろん僕はどちらも大ファンだ。



14.The Internet『Hive Mind』

ハイヴ・マインド

ハイヴ・マインド

 

  噂はかねがねだったが本作で初聴き。個人的にはR&B系統でバンド演奏というのが目新しくそれだけで新鮮だったが、曲によってロック等様々なジャンルのテイストを取り入れた変幻自在なグルーヴ、奥行きの感じられるサウンドなど聴くほどに引き込まれていった。また、紅一点ボーカル・シドのキュートさと知性が絶妙にブレンドされた歌声もとても魅力的。



13.Blood Orange『Negro Swan』

ニグロ・スワン

ニグロ・スワン

 

  くくもったような感じにしたり、ピッチをわざとズラすような処理を施したりとサウンド面で意匠を凝らしつつ、切なげなメロディを紡ぐデブ・ハインズの歌の素晴らしさといったら……! 全編通してズバ抜けたセンスに脱帽。



12.Janelle Monae『Dirty Computer』

ダーティー・コンピューター

ダーティー・コンピューター

 

  もはや横綱相撲を見ているよう。ソングライティング、サウンドプロダクション、歌唱パフォーマンス、他では絶対マネできない独創的な世界観、全てが完成されていてひれ伏すしかないレベル。殿下、貴方の才能を引き継ぐアーティストがここにもひとり。



11.THIEFS『Graft』

Graft (グラフト)

Graft (グラフト)

  • アーティスト:THIEFS (シーフス)
  • 出版社/メーカー: rings
  • 発売日: 2018/09/19
  • メディア: CD
 

  サックス、鍵盤、ドラムの3ピースによるジャズバンド、なのだけどかなり実験的でオルタナ志向の音楽をやっているなという印象。現代音楽寄りな前衛性を見せたと思ったら、ラッパーも何曲かでフィーチャーしモダンな要素も取り入れたりと、全体から立ち上がるイメージはジャケが示すように相当にカオティックである。掴みどころがないから少しでも解ろうとまた再生して……と、まんまと彼らの術中にハマってしまった。



10.みんなのこどもちゃん『壁のない世界』  

壁のない世界

壁のない世界

 

 "私なんかがこんな世界にどうして生まれてきたの? ねぇねぇ 早くここから出して"ーM3「死ねばいい」

"眠る前いつも思う 起きたら死んでたい"ーM8「起きたら死んでたい」

 

 かなりストレートに(『死にたい』というど直球のもの含めた)負の感情がぶつけられた歌詞を、それに反比例するような猛烈な熱を帯びたゴリゴリのメタルサウンドに乗せて歌われる、このみんなのこどもちゃんの音楽に惹かれる理由は何だろう? 白状すると、厭世的だったり自己嫌悪の感情を持っていた事があったのは確かだが、自分と重ねて共感しているというのとはちょっと違う気がする。

 考えてみると、歌詞にはネガティブさが横溢しながらも、『ただ子供が自暴自棄になっているだけ』と切って捨てる事の出来ない知性や詩情らしきものも感じられるし、またその闇深く渦巻いた感情をもつ彼女たちを、前述したヘヴィーな演奏が世界に対峙する力を与えたり、昇華させているようにみえ、そのストーリー性に感動しているからかもしれない。ここのところ聴いてると様々な感情が去来するので明言し難いが、とにかく僕はめちゃくちゃ好きだ。

 

 2019年8月、初めてライブに行く事が出来た。残念ながらほのかは療養中だったのでしなもん1人(とバックバンド)のみながらパフォーマンスは素晴らしかった。特典会で『次は2人揃ってのライブを楽しみにしてる』と伝え"そうだね!"と返事をもらうも、それからひと月と経たずほのかの脱退が発表され頭が真っ白になった。しなもんは継続して活動するとの事だが、一度だけでも2人で歌うM9「ふたりはなかよし」のパフォーマンスを観たかった。アイドルの儚さを痛感しつつ、残ったしなもんによる"みんなのこどもちゃん"の行く先を見届けていきたい。



9.Vicktor Taiwo『Joy Comes In Spirit』

JOY COMES IN SPIRIT

JOY COMES IN SPIRIT

  • アーティスト:VICKTOR TAIWO
  • 出版社/メーカー: INOV
  • 発売日: 2018/06/01
  • メディア: CD
 

  本作についての説明文に「スムースR&B」とあり、これに分類される曲を紹介した記事を確認すると、"高低差が少なく滑らかで、最先端だけどどこかノスタルジー"という特徴があるようだった(ケレラの曲もあった)。ざっくりとしたジャンル分けだがインプットしておこう。

 さてタイウォ、聖歌隊出身とのことで歌声と楽曲にその世界観が反映されていて素晴らしく、また多重コーラスを用いたM4に顕著なように、空間の広がりのあるサウンド作りがなされていているのも最高だ。何度も聴き込む価値のある作品。



8.JULIAN BRANCO『Soltar Os Cavaros』

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 めっけもんだったブラジルの女性アーティスト。数多くのMPBを手がけてきた名プロデューサーで本作がデビュー作らしい。

 ボサノヴァの根付くブラジル人特有の歌声が素晴らしく、またバックバンドもそのテイストを内包しつつも、時にロック的なアプローチへとナチュラルなシフトをみせ、一筋縄ではいかない音楽を編み上げていて唸らされた。やっぱりブラジル音楽って味わい深くてエキサイティングで最高だ。



7.Billie Eilish『Don't Smile At Me』

ドント・スマイル・アット・ミー+5(限定盤)

ドント・スマイル・アット・ミー+5(限定盤)

 

  白状するとタナソーの音楽ウェブサイトでの紹介記事を見て初めて彼女と本作の存在を知り、手に取りました。今や押しも押されぬスーパースターとなったビリーアイリッシュ。このデビューEPの時点でダークさとピュアネスさの両面併せ持つ世界観は確立されていて、サウンドは勿論、まだ幼さも残るその歌声の素晴らしさにただただ魅力された。M6「Bellyache」のMV一発でK.O.



6.Chara『Baby Bump』

Baby Bump(通常盤)

Baby Bump(通常盤)

  • アーティスト:Chara
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2018/12/19
  • メディア: CD
 

  近年彼女の新譜はチェックしていたものの買うところまではいっていなかった。だけど今作は違った! 1曲目ープリンスを想起させるキレキレのファンクサウンドとそれに官能的に絡むCharaの歌ーそのあまりものカッコ良さに脳天に電撃が走った。以降、ラストナンバーに至るまでそのクオリティーは全く落ちることがなく、当然の如く購入し彼女の音楽の虜となったのだった。衝撃度は2018年最高クラスだったかも。



5.J.P. Bimeni & The Black Belts『Free Me』

フリー・ミー

フリー・ミー

 

  近年関心を持ちつつあるソウルだけど、段違いのカッコ良さで魅力してくれたのが本作。往年の名シンガーを想起させる渋さと深みのある歌声を持つビメニに、バックを務めるブラックベルツが彼に呼応するように熱の籠もりまくったドラマチックなプレイを聴かせてくれる。こんなに良いならもっと聴きたい! とソウルへの熱を高めてくれました。



4.Bekon『Get With The Times

Get With The Times [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (TRCP226)

Get With The Times [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (TRCP226)

  • アーティスト:Bekon,ベーコン
  • 出版社/メーカー: Traffic
  • 発売日: 2018/01/24
  • メディア: CD
 

  R&Bを基調に、ピンク・フロイド的壮大なサウンドスケープが構築されていて、ソングライティングと歌の素晴らしさも相まって比類なき完成度を誇る完璧なデビューアルバム(彼はケンドリック・ラマーの『DAMN.』にも参加したプロデューサーでもある)。

 表題曲のM12「Get With The Timesはクールなラップから超美麗なコーラスパートになだれ込み、ラストの泣きのギターでもっていかれる2018年屈指の名曲なので、未聴の方は今からでも是非!



3.宇多田ヒカル『初恋』(前作:2016年No.19)

初恋

初恋

  • アーティスト:宇多田ヒカル
  • 出版社/メーカー: ERJ
  • 発売日: 2018/06/27
  • メディア: CD
 

  表題曲の「初恋」ヤバ過ぎ。デビュー時から彼女の中に在り続けるその最もピュアな感情がどれほどかけがえなく、誰にも侵すことの出来ないものであるかをまざまざと感じさせられる。オーケストレーションを用いたドラマチックさ、異次元レベルの透明度、壮麗さにノックアウト。

 それに牽引されるようにどの曲も輝きに満ちていて、母の死と直面した前作から、力強くネクストステージへの飛翔を感じさせてくれた快作。個人的には一番好きだった『ULTRA BLUE』を超えた感すらある。念願のツアーも素晴らしかったし、まだまだ彼女から目が離せない。



2.Masego『Lady Lady』

Lady Lady

Lady Lady

  • アーティスト:Masego
  • 出版社/メーカー: Caroline
  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: CD
 

  トラップ・ハウス・ジャズなるサウンドを標榜するマルチプレイヤー/プロデューサーのデビュー作。随所で挿入されるコーラスはルーツのゴスペルが活かされている感じだし、YouTubeで1億再生超えのFKJとの共作M13「Tadow」で聴かせる自身のサックスプレイなど、各サウンドの組み立て、配置のセンスがずば抜けていて、超気持ちよくトリップさせてくれた。



1.Jon Hassell『Listening To Pictures』

Listening To Pictures (Pentimento Volume One) [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRNDEYA1CD)

Listening To Pictures (Pentimento Volume One) [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRNDEYA1CD)

 

  無限にイマジネーションの広がりを感じさせてくれる、魅惑のアンビエントミュージック。医療機器の信号音の如し断続音に誘われ、深層意識まで深く潜っていくようなM1「Dreaming」から始まり、ラストの「Ndeya」まで全8曲39分、聴く度に違う風景がみえ、飽きることがない。

 間違いなく最もリピートした2018年作だし、そればかりか年を跨いで今日に至るまで(主に就寝時にだけど)ヘビロテし続ける愛聴盤となった。睡眠導入効果も抜群。




~2018年ベストまとめ~

 

01.Jon Hassell『Listening To Pictures - Pentimento Number One』

02.Masego『Lady Lady』

03.宇多田ヒカル『初恋』(前作:2016年No.19)

04.Bekon『Get With The Times

05.J.P. Bimeni & The Black Belts『Free Me』

06.Chara『Baby Bump』

07.Billie Eilish『Don't Smile At Me』

08.JULIAN BRANCO『Soltar Os Cavaros』

09.Vicktor Taiwo『Joy Comes In Spirit』

10.みんなのこどもちゃん『壁のない世界』

11.THIEFS『Graft』

12.Janelle Monae『Dirty Computer』

13.Blood Orange『Negro Swan』

14.The Internet『Hive Mind』

15.w-inds.『100』

16.Jamie Isaac『(04:30)Idler』

17.Fatima『And Yet It's All Love』

18.cero『POLY LIFE MULTI SOUL』

19.Mitski『Be the Cowboy』

20.Georgia Anne Muldrow『Overload』

21.Makaya McCraven『Universal Beings』

22.Jack White『Boarding House Reach』

23.David Byrne『AMERICAN  UTOPIA』

24.空中泥棒『Crumbling』

25.中村佳穂『AINOU』(前作:2016年No.28)

26.lyrical school『WORLD'S END』(前作:2016年No.18)

27.早見沙織『JUNCTION』

28.Arctic Monkeys『Tranquility Base Hotel & Casino』

29.Solomons Garden『How Did We Get Here?』

30.春ねむり『春と修羅

31.おやすみホログラム『4』

32.Starchid & The New Romantic『Language』

33.Ariana Grande『Sweetener』

34.KID FRESINO『ai qing』

35.BRMC『Wrong Creatures』

36.Tim Bernardes『Recomeçar』

37.Anderson .Paak『Oxnard』

38.・・・・・・・・・『         』

39.BTS『FACE YOURSELF』

40.桜エビ~ず『sakuraebis』



 国内アーティストの作品は40枚中12枚。2017年版は35枚中9枚、2016年は30枚中11枚だったので、去年に引き続きやや少ないかなと。

 これ以外では、カマシ・ワシントンは圧倒的な完成度を誇っていたものの3枚組の超大ボリュームでリピートするのがしんどかったため選外に(すまんカマシ^^;)。

 

 あとは石橋英子ナイン・インチ・ネイルズ、トロピックス、ライ、パーフェクト・サークル、VOQ、コンピューター・マジック、ボーイジーニアスなどもいい出来だったけれど枠が埋まったので惜しくも外れた感じ。

 

 さあ、ここから年末にまとめ買いした未聴の2019年作のアルバムを聴いてから順位付け→再びコメントを書く作業が始まるぞ(今度こそあまり空けずに仕上げたい)。俺の戦いはまだ始まったばかりだ! またお会いしましょう!

 

2019年ベストはコチラ