ノーボーダー・インプロα

音楽への想いを刻みたい

【前編】Pパタが選ぶ2018年ベストアルバム40

(2017年ベストはコチラ)

 

 今更ながら2018年ベストアルバムの記事です。うん、また大幅に遅れてしまったんだ。すまない(それでも前回の2017年版はアップが2018年3月だったからまだ短縮出来た方)。

 音楽ブロガーのみなさんと比べると少ない方だろうけど、自分は2018年作のアルバムはここ数年の中で最多の110枚あまり購入。その中から国内・国外ミックスで1〜40位まで順位をつけました(正直分けた方がやりやすくはあるけどブログのコンセプトが『ノーボーダー』なもので。一緒になっている方が個人的に好みです)。

 

 選定基準は基本的に2016年時から変わっていなくて、

 

①全体の完成度(レベルの高さ、革新性、捨て曲の無さ・ダレなさ、流れの良さ、通して聴いたときのイメージの素晴らしさ等)

②リピート率、繰り返し聴いても色褪せないか?

③そのアルバムの好きの度合い・思い入れの強さ

 

ー主にこの三点で決定。やっぱり完成度のウェイトが大きいと思うけど、思わずリピートしたくなる作品であったりとか、特に革新性がなくても思い入れめっちゃ強いとかが音楽性を凌駕したりといったところも稀にある感じ笑

 これらを結ぶ三角形の面積の大きいものが上位に来るイメージです。

 

 2017年分は力尽きて15位までしかコメントが書けなかったけど今回は頑張って40作分すべて書いたよ。1位から書いたけど書き進むにつれ文量が増えてしまい反省。

 ま、関心のあるところだけでもどうぞお付き合い下さい。今回から後編の最後に順位とタイトルのまとめも用意してます。





40.桜エビ~ず(現ukka)『sakuraebis』

sakuraebis

sakuraebis

  • 発売日: 2018/11/14
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 私立海老中学の妹分的グループの1stフルアルバム。当時はサブスクにもなかった為試聴出来ず、またフィジカル盤は公式サイトからでしか注文出来なかったため躊躇したが、思い切って購入して正解だった。

 より洗練されたポップスになる次作(2019年作の2ndアルバム)と比べるとロックテイストの曲がちらほらあり、中でもレゲエっぽいイントロ→メタリックな重めのギター→スカパンク~と目まぐるしく展開するM6「みしてかしてさわらして」や、カッティングギターが強力なフックを生み出すM4「お年頃distance」など、荒削りながら勢いが感じられて燃える。ディスコ~ソウルなM3「急なロマンティック」とかバリエーションに幅があるのもいい。余談だがこれを書いているときに去年改名した事を知りビックリ。



39.BTS『FACE YOURSELF』

FACE YOURSELF(初回限定盤B)(DVD付)

FACE YOURSELF(初回限定盤B)(DVD付)

 

 世界数十カ国を回るツアーを成功させるなど飛ぶ鳥を落とす勢いのバンタン。元々K-POPにもこのグループにも全く興味はなかったのだが、『全米1位獲得』のニュースに驚き「さてどんなものかね?」と本作を手にし、結果まんまとハマることになった。

 なるほどアメリカでも通用する洗練されたサウンドだし、バラード系の甘い歌声と、ほぼその正反対のイメージのアゲアゲなラップでリレーする曲の構成もスリリングだ。このアルバムでは全曲日本語で歌ってるので日本への展開もバッチリ(母国語と英語と併せて三ヵ国語で歌えるのはK-POPアーティストの嗜みのようだ)。M5「Not Today」は死ぬほどリピートしたしカラオケでもよく歌っていますよ。



38.・・・・・・・・・『          』

「                」

「         」

 

 匿名性の高いアイドルグループの1stフルアルバム。グループ名は好きに呼んでいいようだが一般的には「ドッツ」っぽい。メンバーの素性は伏せられており、名前も全員「・」(てん)とのこと笑。シューゲイザーを基調としたノイジーながらキラキラとしたギターが特徴的で、それに少女たちのボーカルが乗っかるバランスがいい感じ。メロディーも光るものがある。

 このコメントを書くときに発覚したのだが2019年3月をもって解散してしまったよう。。。彼女たちのライブを一度でも「観測」したかったな……。



37.Anderson .Paak『Oxnard』(前作2016年No.3)

OXNARD

OXNARD

  • アーティスト:ANDERSON PAAK
  • 出版社/メーカー: ADAGL
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: CD
 

 前作が大好き過ぎて待ちに待っていた新譜。ジャケも好みだしこれは期待出来る……! と聴いてみたところーいや決して駄作なんかではなく高いクオリティは維持していると思うが、単純に好みのストレイクゾーンからは少し外れてしまったかなという印象。前作で聴けた煌びやかなサウンドは後退しよりソリッドなものになっていた。ただやはり相変わらずセンスの良さは感じるし、リピート回数少なかったのでもっと聴き込めば評価上がるかも。



36.Tim Bernardes『Recomeçar』

ヘコメサール RECOMEÇAR

ヘコメサール RECOMEÇAR

 

 ブラジルの男性SSWで、本国でのリリースは2017年だったようだがこの国内盤は2018年発売だったため選出。楽器の使い方、ソングライティング、歌、アレンジ、サウンド、いずれも高いレベルでまとまっていて素晴らしい。



35.Black Rebel Motorcycle Club『Wrong Creatures』

Wrong Creatures

Wrong Creatures

 

 超貴重なロックバンド枠。ガレージロックンロールリバイバルが終わろうがロックが不毛な時代と言われようが、1ミリもブレることなくオーソドックスなバンド編成でロックをやり続けるカッコ良さよ。確認してみたところ、彼らのキャリアは98年からスタートしているので、本作は活動歴20年目の節目にリリースされた新譜ということになり驚いた。そんなに長く活動していたのね。

 BRMC印のサイケデリアは健在だが、M4「Echo」ではコールドプレイかと思わせるほどの美メロを聴かせたり、人を食ったようなストレンジポップM10「Circus Bazooko」などもあったりと、バンドの違う面も覗かせている。



34.KID FRESINO『ai qing』

ai qing

ai qing

  • アーティスト:KID FRESINO
  • 出版社/メーカー: AWDR/LR2
  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: CD
 

 日本のMC/DJ/トラックメイカーの(おそらく)4thアルバム。まずラップうますぎ。ライムは英語・日本語が混ざっているが、英語の強めのアクセントをそのまま日本語にもハメ込んでいるような、切れ味鋭くも軽やかなフロウが何とも格好良く、どこか近未来的で先鋭的なトラックと組み合わさり唯一無二の世界観を描き出している。刺激的なラップミュージックを求めている人にオススメ。



33.Ariana Grande『Sweetener』

スウィートナー(スペシャル・プライス・エディション)(限定盤)

スウィートナー(スペシャル・プライス・エディション)(限定盤)

 

 客演にNicki Minajを迎え、小ない音数でエッジを利かせるリード曲M3「The Light Is Coming」とかめっちゃ好み。キュートさとパワフルさを兼ね備えたアリアナのボーカルが本当に素晴らしく、トラックも洗練されていて隙がない(ファレルも半分は関わっているよう)。M11「Borderline」の客演がミッシー・エリオットなのも嬉しかった(十年以上滞っているフルアルバムが待たれる)。



32.Starchild & The New Romantic『Language』

Language (+ボーナスディスク『Crucial』付き2枚組 / 解説・歌詞・対訳付き)[ARTPL-100]

Language (+ボーナスディスク『Crucial』付き2枚組 / 解説・歌詞・対訳付き)[ARTPL-100]

 

 まずこのジャケットのセンスに惚れた。聴いてみると殿下(プリンス)直系のゴリゴリの80’sファンク全開でまた惚れた。全編にただならぬエネルギー迸る快作。



31.おやすみホログラム『4』

4

4

 

 認知しつつもこれまでタイミングが合わず、この4thアルバムにてようやく彼女たちの作品を手にする事に。おそらく初期の頃と比べて変化があったのだと思うが、想像以上にシリアスな歌詞が並んでいて意外だった。

 

“頼りない僕のステップじゃ どこにも行けないな  そんな風に今も僕をすり減らしてる”ーM7「iron」

“リズムでさ、救われたい リズムなんかじゃ、救われない リズムから、逃げ出したい  リズムなんかじゃ、息もできない”ーM8「nightbird」

”天使は列車に乗っていったよ  僕も乗せて欲しかったのに なんでも定員オーバー”ーM10「天使」

 

 曲調で言えば、序盤はポップなギターロック感強めであるものの寂寥感や孤独感を覚える歌詞は共通していて、後半はよりそのイメージを深めるものになっている。単純に世界観が好みというのもそうだが(今作は特にジャケもいい)、見た目ギャルな二人の印象からするとかなりギャップがあり、なぜこうなったのか? 興味深くて惹かれる。注目していきたいユニットだ。



30.春ねむり『春と修羅

春と修羅※初回限定盤(CD+DVD)

春と修羅※初回限定盤(CD+DVD)

  • アーティスト:春ねむり
  • 出版社/メーカー: 株式会社パーフェクトミュージック
  • 発売日: 2018/04/11
  • メディア: CD
 

 女性”ロックンローラー”春ねむり1stフルアルバム。彼女がそう自称する通り、ネガティヴィティを歌にぶつける様も奏でられる音楽も完全にロックなのだが、全編言葉を弾丸のように打ち込むラップスタイルで貫かれていて他に類を見ない存在感を放っている。 

  本作の前に過去作(EP)を一枚聴いていたのだが、その頃と比べても、たとえば表題曲のM4「春と修羅」はノイジーなギターによる幕開けからポエトリーリーディングに近い静かなラップが入り、中盤のブレイクから再び荒れ狂うようなノイジーなギター&シャウトで終幕と、静と動のコントラストが鮮やかで、楽曲の構築性に確かな進化も感じる。

 切ないリフレインが胸を打つM11「ゆめをみよう」、過剰なまでにエモーショナルなM13「ロックンロールは死なない with 突然少年」など、胸をえぐられる瞬間は多々あって、メッセージを伝えるために自身の言葉と音楽を研ぎ澄ましたのだろうなと関心することしきり。M17「鳴らして」のリミックスVer.は、今や音楽ファンの認知度をぐっと上げた長谷川白紙が手がけていた事に気付いた。



29.Solomons Garden『How Did We Get Here?』(前作:2016年No.30) 

How Did We Get Here?

How Did We Get Here?

  • アーティスト:Solomons Garden
  • 出版社/メーカー: SWEET SOUL RECORDS
  • 発売日: 2018/09/19
  • メディア: CD
 

 黒人男性と女性2名ずつによるグループの2ndフルアルバム。ヒットチャートなど世に溢れる音楽に辟易し、後世に残るような真にいい音楽を創る事を目的に結成されたようで、男性2名はプロデュースも務めるが曲は全員で書き、ボーカルも女性2名をメインに据えつつ男性2名も時折入るという全方位型。

 ヒップホップ、R&B、ソウル、エレクトロニカ等様々なジャンルをアーバンなポップに落とし込む手腕は相変わらず見事だし、また全員いい声してるんだこれが。前作は本編が8曲しかなく物足りなかったが今回はボリューム十分で満足。



28.Arctic Monkeys『Tranquility Base Hotel & Casino』

トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ

トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ

 

   2006年のデビューアルバム以来の事だがこれは買うしかないと思った。ただそれまでは正直もう彼らにお金を落とすことはないと思っていた。そう、本作の1曲目を試聴するまでは。

 印象的な鍵盤の音色と抑制の利いたボーカルに優しく導かれるように、(初期衝動でロックンロールしていたのがウソのように)ゆったりしたテンポで曲が進んでいくのだが、独特なサウンドも相まって宇宙を漂っているような不思議な感覚に見舞われた(コンセプトは『月面のホテルを舞台にしたシュールなSF』との事でイメージばっちりだ)。あまりものギャップに完全にぶっ飛ばされ、最後までその魔法のような時間は続き、完全に魅了され、冒頭の気持ちになった次第。



27.早見沙織『JUNCTION』

早見沙織/JUNCTION (通常盤 CD/1枚組)

早見沙織/JUNCTION (通常盤 CD/1枚組)

  • アーティスト:早見沙織
  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2018/12/19
  • メディア: CD
 

 声優・早見沙織の2ndアルバム。正直前作はちょっと試聴してスルーしてしまっていたのだが、チェックしてみたところ今作は(インタールード1曲を含んで)全14曲中10曲と大半の曲を彼女自身が作詞・作曲しており、これらの出来が想像以上で相当に驚かされたものだ。竹内まりやが2曲提供しているのは大きなトピックの筈だけど、申し訳ないが早見沙織の曲の方が強く刺さった(勿論違う良さがあるのだけども)。

 特に、(歌詞が示す通り)世界の終わりを思わせるような静かな曲調に切ないメロディが珠玉の輝きを放つM5「白い部屋」、上品で心地よく、強力なフックを持つコーラスがクセになるM9「Bleu Noir」などはもう天才……! と思わずため息が出るレベルで、またアレンジャーの気合いを入れた仕事ぶりが彼女の曲のポテンシャルを最大限に引き出していて素晴らしい(M6「祝福」のシューゲイザーなどは誰もがおっとなるところかと)。

 

 ここまでの絶賛度合いの割に順位が少し低めなのは個人的にはややイマイチな曲もあったためで、もしそれがなければトップ15くらいには入っていたかもしれない。とりあえず、3rdアルバムは全曲早見沙織の作詞・作曲で作ってくれる事を熱望する。



26.lyrical school『WORLD'S END』(前作:2016年No.18)

WORLD'S END

WORLD'S END

Amazon

 五人組の新体制になったガールズアイドルラップグループ第一弾のアルバム。アゲアゲなシングルM5「夏休みのBABY」やスチャダラパーの手掛けたM6「常夏リターン」など、リリスクのイメージの夏曲もありつつ、両A面シングルのM8「CALL ME TIGHT」M2「つれてってよ」はこれまでより淑やかに「夜」を強くイメージさせる曲調でとても印象に残った(そしてこのイメージは次作で更に深まる事になる)。

 また、後半M9-11はグルーヴィーなダンスチューンが続けざまに並んでいて、これもまた従来にはなかったようなクールさだし、フィナーレを飾るM12「WORLD'S END」ラストの”神様ごめんね”のコーラスのリフレインはリリスク史上ハイライトとさえ呼べるほどの素晴らしさで、ネクストステージを目指すクリエイターとメンバーの意欲を強く感じさせてくれる一作となった。



25.中村佳穂『AINOU』(前作:2016年No.28)

AINOU

AINOU

 

 度肝を抜かれたデビューアルバムに次ぐ2nd。今作も多彩な音楽性はそのままに、より洗練された印象だ。温かくも力強いエネルギーに満ちたM11「そのいのち」が感動的。



24.空中泥棒『Crumbling』

Crumbling

Crumbling

 

 2018年ベストで多くの人に上位に選ばれていて気になり手にした本作。アニマル・コレクティブやデヴェンドラ・バンハートのようなフリーフォークを思わせる静謐さがありつつも、多彩な音色が混ざり合い生まれるダイナミックなグルーヴはなかなか他では耳にする事が出来ないオリジナリティに溢れていて、この静→動、動→静とシフトする楽曲の展開がまたお見事。以前に公衆道徳という名義で音源を発表した宅録の韓国人との事だが詳細は不明。今後の動向に注目したい。



23.David Byrne『AMERICAN  UTOPIA』

アメリカン・ユートピア

アメリカン・ユートピア

 

 個人的にデヴィッド・バーンというと元トーキング・ヘッズのフロントマンだったというのは勿論、デビュー以降くすぶっていたブラジルのトン・ゼーを発掘し表舞台に引き戻したり、名うてのアーティスト達の作品に携わったりと、音楽業界全体を盛り立てる功労者というイメージがある。初めて聴いたこのソロ作では、そんな彼の視野の広さやスケールの大きさを感じさせてくれた。歌ものでありながら同時に音響の妙も味わえるM5「This Is That」は白眉。名盤オーラ漂うジャケもいいね。



22.Jack White『Boarding House Reach』

ボーディング・ハウス・リーチ

ボーディング・ハウス・リーチ

 

 解散したホワイト・ストライプスではムダを削ぎ落とした究極の引き算による制約によって生まれるクリエイティヴィティを原動力にしていたが、このソロ作では反対に制約を取っ払ってイマジネーションの赴くままやりたい放題やりましたという感じで痛快無比だ。独創的で切れ味鋭いギターもばっちり聴けるし、M6「Ice Station Zebra」ではラップまで披露。それにしてもこのジャックノリノリである



21.Makaya McCraven『Universal Beings』

 過去にヒップホップバンドに所属していたドラマーのソロ作。鍵盤やベース、サックス、ハープ等の生演奏を、短めのインターバルでサンプリング・ループさせ独自のビートを生み出す手法が画期的で唸らされる(打ち込みだけでは得る事の出来ないこのサンプリングの中毒性を強く感じる)。

 Disk1のM4「Black Lion」の終盤ではそれまでの淡々とした(それでいてとてもクールな)ループを、終盤にドラムンベースを思わせるような自身の猛烈なドラミングで破壊してみせたりと、ビートメイカーとプレイヤーの両面から新しい音楽を切り拓いていかんとする姿勢が素晴らしい。結果的に全編を通じてこの上なくエキサイティングな作品に仕上がっているのだから言うことはない。

 

後編につづく!