【後編】sora tob sakana解散ライブを観て胸に去来したもの
前編はコチラ
休憩明け。再びクジラの鳴き声が響く中、バンドによる活き活きとしたアレンジを施した、光を思わせるような『海に纏わる言葉』が奏でられ、二部がスタートした。
曲終わりのしばしの沈黙のあと、聴き馴染みのあるイントロと共にライトが照らされ、『deep blue』の衣装に着替えた3人が登場。初期から歌い続けてきた『クラウチングスタート』を披露した。大空に吸い込まれていくような伸びやかで爽やかな歌とキュートな振り付けで、たちまちオサカナの世界に引き込まれる。やはり終盤の合唱パートは随一のエモさで心を奪われた。
次いで中盤のラインダンスが仲睦まじい、複雑なリズムと牧歌的なサビメロの対比が鮮やかな『Summer Plan』、近未来感あるサウンドとタメの生み出すグルーヴが気持ちいい『タイムマシンにさよなら』と来て、デジ・ロックチューンの『新しい朝』へ。ゴリゴリの演奏に、未だ幼さを残したキュートな歌声が乗るバランス感がたまらない。フックの強いリフと合わさるロボットダンスとかまなちゃんの「起きろー!!」(今回過去最高の声量か?)のブレイクとか好きなポイント多数だが、メーターを振り切るようなキレキレのバンド演奏がより熱くさせてくれた。
「ということで、後半戦、始まりましたー!」と、ふぅちゃんの元気な声でMCタイムに。なっちゃんがライブビューイングについて触れた後、「あそこ見て」とカメラを指差し、その奥の劇場の観客に呼び掛けたのだがー
「こっちには聴こえないんですけど、、あっそうか、(コロナだから)声出してないのか、どっちにしても。じゃ、なんもないでーす」と途中で気付き、一同笑いに包まれた。とてもなっちゃんらしいMCである。
まなちゃんは「でも出来るなんてすごくないですか?」と感想を漏らしたが、本当にそう思う。オサカナが配信のみならず六都道府県も結んだライブビューイングを(しかも四時間も)やるなんて想像もつかなかった。また、この公演の映像化プロジェクトの支援総額は4633万円(達成率463%)にも上ったのだ。いかにファンやスタッフから愛されていたか、実感せずにはいられない。
話が一段落するとまなちゃんが「今からアコースティックパートに移りたいと思います」と伝え、3人が椅子に座る。「早速曲、聴いてもらいたいと思いますー」。
温かみのある音色でグルーヴィーなアレンジを加えた『帰り道のワンダー』から、続く『蜃気楼の国』でしとやかなムードに。バンドの繊細な演奏と、イノセントな3人の歌声が胸を打つ。夢のあとを儚むように。懐かしむように。楽器の音と声の振動が会場を満たしていく。時間が経てば、どんなに大切な記憶も薄れて蜃気楼のように消えてしまうかもしれない。それでも僕は、彼女たちがみせてくれたこの素晴しい景色を、生涯覚えていたいと願った。
そしてなっちゃんのポエトリーリーディングから『ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン』へ。彼女たちの心を映し出すように、神聖さすら漂う美しいコーラスと演奏が響く。合唱と、それぞれのポエトリーリーディングを挟むシンプルな構成ながら、琴線に触れてくる。こんな純粋なものが存在するってことが信じられない。許されるならずっと浸っていたい。でも曲は終わる。心地よくも切ない余韻を残して。
アコースティックコーナー最後を飾ったのは、大きな夕陽がどっぷりと海に沈んでいくような『燃えない呪文』だった。黄金色の光に満ちたスクリーンとライトに照らされ、メロディーを慈しむように大切に歌い上げる。その声がとても優しかった。
MCで「緊張したー」とコーナーを振り返る3人に「良かったよ」と声をかける照井さん。「でも俺、譜面前にあって全然見えなくてさ。後で映像でちょっと見るわ」の言葉に「あ、別にそれは大丈夫です」と即答するなっちゃん。
そ れ は 大 丈 夫 で す 。
ここちょっとてるりん可哀想だった。
まなちゃんの振りで、やはりイノセントな歌声が映える『透明な怪物』をしっとりと聴かせたあと、流麗な鍵盤の音色が流れ『踊り子たち』が始まる。
なんて幻想的で儚げで、甘美なんだろう。ダンスには向かない七拍子で、大切なもののために祈りを捧げるように、何かの願いをかけるように、3人がくるくると踊り、歌っている。バックの演奏が彼女たちに優しく寄り添っている。何度だってオサカナの音楽は特別な感情を呼び起こす。きっとこれからも。何度だって。
そして――温かみのあるアルペジオのギターが奏でられて間もなく、会場を揺らすような爆音が響き渡る。sora tob sakanaとの出会いの曲、『夏の扉』だ。初めて耳にした時、この曲には何か大切なものが詰まっていると感じた。子供のころにみていたもの。変わっていくもの。目の前の景色を一気にキラキラしたものに塗り変える魔法のような、同時に喪失を予感させる切なさも含んだ音楽。バンドの音が聴こえる。3人の声が聴こえる。魔法は決して醒めないまま、彼女たちはこの日まで僕を追いかけさせ続けた。ラスサビで大輪の花火がスクリーンを覆い尽くし、それを背に笑顔で歌うなっちゃん、ふぅちゃん、まなちゃんの姿をみていると、これまでに芽生えた感情が奔流となって押し寄せてきた。
”君の声が その仕草が 僕の心を連れて行った”
ああ、その通りだよ。
ずっとこの曲をバンドセットで、生で聴きたいと思ってたんだ。夢が叶って本当に良かった。
チルな『ありふれた群青』では(前曲の夏の扉から引き続き)スタンドマイクを使って少し大人びたステージをみせた。一方次の愛らしい『ケサランパサラン』では曲終わりにふぅまなの2人がなっちゃんに寄りかかるように頭をわしゃわしゃしたりじっと見つめたりしていて、とても仲が良さそうで、あまりにも眩しくて、永遠に憶えていたいと思うような光景だった。
MCで夏の扉とありふれた群青でマイクスタンドを使ったことを話すなっちゃん。やりたい事が出来て良かった、と3人が話しているとどこかで聴いたことのある曲がー
まな「あれあれあれあれー?」
ふぅ「なんかぁ、聴いたことあるし、なんか急に暇になってきた笑」
まな「ほんとー?」
なつ「私もちょっと暇かもしれない」
まな「あホントー?」
ふぅ「っていう茶番は置いといてー笑」
なんと、ライブでは実現不可能と思われていた『暇』が、収録アルバム発売から一年半の時を経てファイナルライブで披露されることに! バンドの生演奏に合わせて、事前に収録した3人の声をサンプラーで鳴らすというコロンブスの卵的発想にちょっぴり感動してしまった。何より良かったのは、MCでは固くなりがちな彼女らが、ステージ上で笑い合いながら本当に楽しそうにサンプラーで遊んでいる姿が見られたこと。ある意味ここもハイライトだった。
曲終わりにまなちゃんのタイトルコールでシームレスに『Moon Swimming Weekender』へ。スクリーンに大写しされた月面をバックにクールに決め、続く『tokyo sinewave』では数字の波の演出の中、幽玄な世界観を独自の振りと歌で見事に表現。
そしてこの雰囲気を引き継いで、おそらくこれまでに最もライブで披露されたであろう『広告の街』に。始まった瞬間のヒリヒリとした緊張感がたまらない。変則的なリズムをものともしないタイトなバンド演奏で歌い上げる3人。よく番組などで「何でこんな難しい歌が歌えるの??」と聞かれていたが、本当に何で歌えるんだろう? 元々スキルがあった訳でもないはずなのに。照井さんが彼女たちと出会って、いまのsora tob sakanaがあるのは改めて奇跡だと思う。文字が絶え間なく流れるVJ映像と一体となってみせたパフォーマンスは文句なしに格好良く、これまでに身に付けた技術の集大成と言うべきものだった。
続く疾走感溢れるロマンチックな『流星の行方』ではしなやかな歌とダンスで会場を魅了。クライマックスで随一の盛り上がりをみせ、拍手喝采だった。そしてー
「この場を借りて、お世話になってる方に、感謝の気持ちを伝えさせて頂きたいと思います」
と、まなちゃんのMCから、それぞれ照井さんをはじめとしてボイストレーナーやダンスの先生など、お世話になった人にお礼を伝えた。ここまでのライブが出来るようになったのは間違いなく彼らのお陰だ。こちらからも感謝の念を伝えたい。
まなちゃんが一度曲フリを忘れてしまった後、仕切り直して『信号』へ。重厚なシンセから凛とした歌へと。ここにきて、ひとかけらの感傷すら入る隙のない深淵な世界観に圧倒された。
そこから一転、『New Stranger』へ。イントロでイエローライトに照らされ、みんないい笑顔だ。アニメ・ハイスコアガールとのタイアップでオサカナの名を広めた一曲。軽やかに爽やかに、この曲のようにもっと高みへもっと先へと、彼女たちはこれからも突き進んでいくのだろう。
曲終わり、間髪入れずに3人が「ワン、ツー、スリー、フォー!」と弾むような声を上げる。ご存知ライブの鉄板曲、『Lighthouse』だ。スクリーンには曲のイメージに合わせた鮮やかな光の玉が無数に流れ、会場全体が多幸感に包まれていく。まなちゃんもなっちゃんもふぅちゃんも、バンドのダイナミックに躍動するグルーヴに負けじと精一杯の歌声を届ける。全力で。
"物語は続く"
終盤、会場に響いたこのフレーズに、感慨を覚えた人は多かったんじゃないだろうか?
もちろん、僕もその一人だ。
「いくよー!!」直後のなっちゃんの煽りと共に発射された紙テープ(ファンに向けて感謝のメッセージが書かれていた)が空を舞い、会場のボルテージはマックスに。もう何度思ったかわからないけど、この世のものとは思えないくらい素晴らしくて最高だ。だから、泣けてくる。曲終わりに寄り添い笑顔を向ける3人に、惜しみない拍手を送った。
「ということで、私たちの今の気持ちを、一人ずつ今から言っていきたいと思います」
先ほど同様まなちゃんのMCから、今度はファンに向けてメッセージが送られた。
~なっちゃん(寺口夏花)~
六年間応援してくださって本当にありがとうございました。sora tob sakanaがこのメンバーで良かったっていうのはホントにずっと思ってることだし、やってきたグループがsora tob sakanaで良かったっていうのはホントに心の底から思ってます。
六年間色々あったから……例えば、どの大人を信じたらいいのかとか、そういうのが色々あった訳よ。だから、まぁ、そういうのを学んで来れたから、良かったかな、って思います。
私ラジオがとても好きなので、みんなでレギュラーのラジオができたのが嬉しくて、思い出に残ってる。それもすごい嬉しかったし、個人的には一番の思い出かもしれない。
ホントに、ウチらほんとにクソガキだったから、周りの大人には本当に迷惑をかけてしまって、ホントに、申し訳なかったなって思ってるんですけど、ゴメンナサイですけど、後悔は別にしてないですね笑 これからそれは、ちょっとがんばって直していこうかな、って思います。ホントにみなさん六年間……六年間じゃない人もいるかもしれないんですけど、sora tob sakanaを応援してくださって本当に、ありがとうございました。
~まなちゃん(山崎愛)~
本日は来てくださって本当にありがとうございます。ついにラストライブをね、やることになったんですけど…えーっと、待って。考えます………長い間、お世話になりました! 本当に長くて、六年間ってのは、小学生が卒業しちゃうくらいになってしまうんですけど、ホントに長い間、ぜんぜん薄い時期がなかった。めちゃくちゃ濃くて、ホントにびっくりするくらい色んなことをしてきたんですけど。なんか、あんまりね、普通に学生やってたらできないことをやらせて頂いて、本当に貴重な経験をさせて頂いたなと思いました。えっと、なんかね、楽しいことめちゃめちゃやらせて頂いたので、今日もね、楽しく終われたらいいなと思うんですけど……思って、おります。なのでみなさん、配信見てる方も、全力で最後まで楽しんでいってほしいです。えっと、応援ありがとうございました!
~ふぅちゃん(神﨑風花)~
はい、ということで、本日は、来てくださった方、ライブビューイング・配信観てくださってる方、本当にありがとうございます。~私たちずっと解散のことについては話し合ってきて、時期とかもすごく悩んだんですけど、前向きな解散ということでね、今日を区切りにしたいなっていう話だったんですけど。まぁね、六年間続けてきたことが明日からなくなるっていうのがすごく……ねぇ? どうするよ? 明日から一般人だよ(なっちゃん「明日は寝るよ」)。明日は寝ましょう笑
明日から……ホントに何か、なんだろう。今この瞬間をね、なんか、思い出すと懐かしいなってなるんだろうなって思うと、すごい、思うと感慨深いんですけど。
(sora tob sakanaを)やっていないと、多分私はここまでの人間になれていなかったと思うので、やっぱりこう、交わってくださった全ての方に感謝を伝えたいです。
アイドル活動を続けていれば誰しも辛い思いをするだろうが、特になっちゃんはよりシビアなものを感じていたことを窺わせた。
ただ、周りの大人たちに迷惑をかけたことに対して"後悔はしてない"というのは、決して我儘な訳ではなく、学び、得られたものがその過程にあったと実感したからこそ出てきた言葉だと思う。衝突があったり、間違ったこともあったかもしれないけれど、その度に前に進んで、ラジオのようなメンバーとの楽しい思い出もたくさん出来てーそういった経験を通して『良かった』のだと。言葉と表情から、彼女が乗り越えてきたものに思いを馳せた。
対照的にまなちゃんは基本ハードルも楽しみながら乗り越えて活動を続けてこられたようで、経験したすべてがいい思い出になっているようで微笑ましい。クールなように見えて、一番熱をもっていたのは彼女だったんじゃないだろうか(何気ない「日常」が綴られることの多かったブログの中で、稀にそういった思いを表していることがあった)。彼女がそういった次の何かを見つけてくれることを願うばかりだ。
ふぅちゃんが伝えてくれた「前向きな解散」についてだが、人間関係の不和やビジネス上の問題などではなく、きちんと話し合って決めて、こんな最高のライブを(コロナの弊害もあったものの乗り越えて)開催出来たというのは本当に幸運だったと思うし、3人及びオサカナ陣営の尽力には感謝することしきりだ。
理由についてはコメント等から大まかに察するところで、まさか本人たちはこんなことは考えなかったと思うが、メンバーが(なっちゃんはつい先日成人したとはいえ)まだ少女のイメージを残したまま、これから大人になるというところで終わるというのは、このグループとして何か必然だったような気もする。でも、ファンとしてその先をみてみたかったという想いも、当然ある。
ふぅちゃんの抱いた感慨はどれほどのものだっただろう。sora tob sakanaをやっていなかったら「ここまでの人間になれていなかった」と言う程の成長を感じたのだ。悔しかったこと、楽しかったこと、その中で育まれた周りの人たちとの絆は何にも代え難い財産になったはず。それはとても貴重な、永遠を思わせるものだ。
これから何年も何十年も経って、今日のことや活動した日々のことを思い出す時、彼女がどんな眼差しを向けるのか……きっと、それはそれは特別な感情が伴うのだろうなと、想像して胸が熱くなった。もちろんなっちゃんもまなちゃんも、いつか同じように思い返す日が来るのだろう。
「―ここの3人、これから進んでいく道はばらばらですが、これからもそれぞれ応援してくださると嬉しいです。えー、ということでね、はい。締めたいと思うんですけど……(拍手に)ありがとうございます。えー、改めて…sora tob sakanaを、六年間
という活動でしたが、私たちsora tob sakanaを好きになってくださって、本当にありがとうございました!」
「「ありがとうございました!」」
ふぅちゃんの礼と共に、まなちゃんとなっちゃんも感謝を込めて頭を下げた。
『WALK』へ。ポジティブなエネルギーに溢れた演奏で歌う3人の表情が、とても満ち足りているようにみえる。これから無限の可能性の広がる未来に向かって進んで行くという曲で彼女たちの心境にピッタリだと思うが、結成からこの日まで歩いてきた道のりを強く感じさせられて込み上げてくるものがあった。その歩みももうすぐ……
曲が終わると、ひときわ強い拍手が鳴り響いてなかなか止まなかった。確かに素晴らしいパフォーマンスだったからというのもある。でも、きっと、みんな次が来てほしくなかったのだ。だってその時が来たら、すべてが終わってしまうから。僕たちは手を叩き続けた。それでも、だんだんと会場は静まっていき、その瞬間はやってきた。
静かで優しい鍵盤の音が響く。それと共に、スクリーンに映ったサカナのシンボルが解放を示す形へと変化し、ふぅちゃんが歌い始める。とうとう僕たちはここまで辿り着いた。ラストツアーでは生で披露される事のなかった『untie』だ。ふぅちゃんに続いてまなちゃんが、まなちゃんに続いてなっちゃんが、その歌を追いかける。一音一音を噛み締めるように。大切に大切に、最後の歌を歌う。ベタだけど、時が止まればいいのにと思う。この愛すべき時間のままで。
なっちゃんが最後のパートを歌い終えると、ステージの中央に集まり3人は手を取り合った。すると、上手と下手双方から煙が吐き出され、彼女たちの姿を覆っていくのが見えて、胸が締め付けられるようだった。ああ、もうこの3人をみるのは最期だと。なっちゃんも、まなちゃんも、ふぅちゃんも、笑みを浮かべている。お互いを讃え合うように。ただいまを言い合っているように。本当にいい笑顔だ。でも、煙がせり上がってきて、次の瞬間とうとうその顔まで覆い、僕は彼女たちを見失った。ステージを埋め尽くしてなお煙がもくもくと拡がる中、黄色いライトが差し込み、大ラスのバンドのインプロヴィゼーションは耳をつんざかんばかりに猛り狂った。僕たちの悲しみも何もかも押し流してしまえと言わんばかりに。破壊的なようで、創造的なようでもあって、尋常じゃないほど胸をえぐられる光景だった。
やがて猛烈なインプロが鳴り止み、煙が引いたステージを改めるも、そこには誰の姿も見当たらなかった。
再び静かな鍵盤の音が流れると、3つの光の玉がスクリーンを飛び交った。間もなく音が止んで光が『sora tob sakana』の文字を描き、しばらくするとそれも消えた。そして、会場に完全な静寂が訪れた。いま起きたことをすぐに受け止めきれなかったのだと思う。誰もが動けずにただじっとしていた。長い沈黙のあと、かなり遅れて聴こえてきた誰かの手を叩く音から、会場に拍手が伝播した。これでファイナルライブ『untie』の幕が降りたのだ。
ああ、行ってしまった。なんという喪失感だろう。ただ、この上なく切なかったけど、同時に痺れた。これまでに築き上げてきた世界観を、彼女たちは最後の最後まで守り抜いていたから。あまりにも美しい幕引きで、まさにsora tob sakanaだという感じだったし、これでこそ僕が心から愛したグループだと思った。彼女たちに出会えて、彼女たちのことを好きになれて、本当に良かった。
その日の夜にまなちゃんが、翌日にふぅちゃんがお礼を伝えるブログを更新して(まなちゃんは卒業したれいが来ていたことも綴っていて嬉しくなった)、少し遅れて最後になっちゃんが『ブログのパスワードを忘れて聞くのも面倒だから』という理由でインスタにお礼の文章をアップした。彼女らしくて少し笑ってしまう。また、その投稿に『#最後の曲終わったあと誰も拍手なくて舞台監督さんが拍手し始めたのをバンドメンバーさんたちとゲラゲラ笑ってたの最高だったな』というタグ(オチ)までついていて、これまた彼女たちらしいと思った。あの感動の裏で笑ってたんかい。
もう彼女たちがsora tob sakanaとして新曲を発表したり、ライブをやったり、しょーもないブログ(失礼)を更新することもない。『WALK』の歌詞のように前を向いて歩いていきたいと思うけど、現実にはそうキレイに切り替え出来ないものだ。
正直ぽっかりと胸に穴が空いたような気持ちだし、当分それは続くだろうし、完全に消え去る日なんて来ない気がする。それは彼女たちのもたらしてくれたものがかけがえが無く、とても大きなものだったという証拠だ。
同じようなグループが出てくることなどないだろう。だから彼女たちの残した音楽はずっと聴き続けることになると思う。これから先、もし何もかも信じられなくなるような暗闇に投げ出されることがあったとしても、オサカナの音楽が胸にあるということがどれだけ救いになるだろう。決して誰にも奪うことの出来ない宝物だ。そう思えるものがあるというのは、本当に幸せだ。
今までどうもありがとう。
ふぅちゃん、なっちゃん、まなちゃんと、彼女たちに関わったすべての人たちの未来が、これまで以上に輝かしいものになりますように。
〜sora tob sakana last one man live『untie』(at 日本青年館 2020.9.6)〜
【1部】
- whale song
- ribbon
- 夜空を全部
- knock!knock!
- 夢の盗賊
- Lightpool
- FASHION
- 鋭角な日常
- flash
- Brand New Blue
- タイムトラベルして
- 秘密
- シューティングスター・ランデブー
- 魔法の言葉
- おやすみ
- アルファルド
- 乱反射の季節
- 嘘つき達に暇はない
- silver
- My notes
- ささやかな祝祭
- 発見
- パレードがはじまる
- World Fragment
- まぶしい
- 夜間飛行
【2部】
- 海に纏わる言葉
- クラウチングスタート
- Summer Plan
- タイムマシンにさよなら
- 新しい朝
- 帰り道のワンダー
- 蜃気楼の国
- ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン
- 燃えない呪文
- 透明な怪物
- 踊り子たち
- 夏の扉
- ありふれた群青
- ケサランパサラン
- 暇
- Moon Swimming Weekender
- tokyo sinewave
- 広告の街
- 流星の行方
- 信号
- New Stranger
- Lighthouse
- WALK
- untie