ノーボーダー・インプロα

音楽への想いを刻みたい

【前編】Pパタが選ぶ2019年ベストアルバム50

(2018年ベストはコチラ) 

 

  「2019年の」ベストアルバム記事です。もはや2年遅れがデフォになりつつありますが"いま"に追いつきたい気持ちはあります(せめて半年遅れぐらいまで……)。

 購入枚数が去年までより更に増えたこともあり過去最高の50位までのランキングになっています。主に一枚通しての完成度と好きの度合いを基準に選定しました。それでは2019年の記憶を手繰りながらお読み下さい。

 

(※全てCDかレコードでフィジカル盤が出ていますが、廃盤で現状注文出来ないもののみ販売サイトではなくSpotifyのリンクを貼っています)

 

 

50.おやすみホログラム『5』(前作:2018年No.31)

5

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 冒頭三曲はブロック・パーティのギタリスト、ラッセル・リサックが参加していて(!)、いずれも素晴らしいプレイを聴かせてくれて文句なしの出来だ。以降も、(このユニットの持ち味だと思うが)どこか切なさを湛えたダンスナンバーが続き、グッと世界観に引き込まれる。他ではありそうでない独自の魅力があると感じる。

 

 

49.Maison book girl『海と宇宙の子供たち』(前作:2017年No.35)

 2021年5月30日の千葉・舞浜アンフィシアターのライブ終演後にグループが「削除」されたため、結果的に今作がオリジナルアルバムとしては最後の作品となってしまった。ライブは毎回最高だったし個人的にはまだまだ活動して欲しかったと思う反面、今作を聴いているとブクガとして表現したいことはやりきったのかもーと少し清々しい気持ちになったりもする。楽曲の強度も各メンバーの表現力も増し、より深く心の奥底まで沁み込んでくる。

 単発のキラーチューンを挙げるなら別の作品からになるだろうが、アルバム一枚通して聴いた際の満足度で言えば間違いなく最高傑作と呼べる出来だ。このグループはきっとこれから先も記憶に残り続けるだろう。

 

 

48.KIRINJI『cherish』

 有名だけど今まで聴いていなかったシリーズ。とても洗練されたシティポップだが、「雑務」や「善人の反省」など独特なタイトルや歌詞のセンスにヤラれた(ちょっと毒ががあるのも◯)。曲調のカッコ良さと歌詞のアホらしさのギャップがすごいM7「Pizza VS Hamburger」とか極まってる。

 

 

47.Vira Talisa『Primavera』

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 インドネシア女子による洗練されたポップス集。ボサノヴァ渋谷系、シティポップなど軽快な歌で心地よく聴ける。フィジカル盤は諦めていたのだがなんと2021年に奇跡のリリース! 店で見かけて即買った。

 

 

46.THE ALEXX『VANTABLACK』

 女性ボーカル、打ち込みのビート、バンド名やアートワークなどモロTHE XXフォロワーという感じだが(どちらもフジロックに出演している)、それだけに良質で完成度の高いインディロックを楽しませてくれる。後半に意外と明るめの曲もあったりとバリエーションもある。

 

 

45.Avery R. Young『Tubman.』

 ジャミーラ・ウッズの師でもあるらしいシカゴのSSW・プロデューサーの1stアルバム。基本ミディアムテンポながらロックの熱も湛えたグルーヴィなソウルで燃える。本人の歌唱や各演奏の素晴らしさに加え、多人数によるコーラスが更に楽曲を盛り立てる。センスの塊みたいな作品。

 

 

44.乃木坂46『今が思い出になるまで』

 4thアルバムにして、全体を通しての印象は(ジャケ含め)これまでで一番かも(4タイプあるがオーソドックスなタイプAを購入)。リード曲でもあるオープナー「ありがちな恋愛」からして、恋愛・結婚の"しあわせ"を捨てて夢を追うというアイドルが歌うには面白い題材の佳曲だし、今やライブ鉄板曲となったロックナンバーM11「日常」に、M7「アンダー」・M9「新しい世界」など、陰側だからこその魅力が光るアンダー楽曲、グループ新機軸のM4「シンクロニシティ」、卒業する西野七瀬をセンターに据えた、爽やかさと切なさの配分が絶妙なM6「帰り道は遠回りしたくなる」といった表題曲など、シンプルにいい曲が揃っていてランクイン。

 坂道グループの中で一番聴いているのは乃木坂だったが、正直ベストアルバムに選出することは無いだろうと思っていたので嬉しい誤算だった。

 

 

43.Madonna『MADAME X』

Madame X -Deluxe-

Madame X -Deluxe-

  • アーティスト:Madonna
  • Universal
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 レゲエや民族音楽など、ラテン系の影響を強く感じる意欲作。還暦を迎え、キャリアも相当に重ねてきた筈なのにクリエイティビティを失わずに攻められるのは本当にすごいと思う。

 またラテン系以外でも、ディスコティックで高揚感溢れる曲調から、終盤ゴスペル的なコーラスに包まれるM3「God Control」や、いかなる困難にも負けず前に進んでいく強い意志が伝わってくるラスト「I Rise」なども素晴らしく感動的だ。惜しむらくは、15曲計65分聴き通す中でダレる瞬間もあるところで(あくまで私見だが)、それがなければもっと上位だっただろう。

www.youtube.com

 

 

42.始発待ちアンダーグラウンド『始発待ちアンダーグラウンド

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CD購入サイト

 セルフタイトルを冠した1stアルバム。アイドルグループらしからぬクールなジャケットに惹かれて曲を聴いてみたところ、イメージを裏切らない出来だった。M2「感情線惑星」の、独自の浮遊感を漂わせながら妖しくエスカレーションしていくサビメロやM6「フリフリ」のヒリつくロックンロールサウンドには痺れるし、一方、M5「HELP ME」M7「犬とメシア」などの昭和歌謡テイストを盛り込んだポップスもあったりと振り幅があって、コーラスワークも良く、最高だった。アナログ盤出して欲しい。

 

 

41.Dos Monos『Dos City』

Dos City

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 雑多で奇妙で異形な、破壊力抜群のトラックと挑戦的なフロウで唯我独尊の道を往くジャパニーズヒップホップ。1stフルらしくエナジー迸りまくってていい感じじゃないでしょうか。"イル(ill)"って言葉がピッタリな音楽だなと思った。

 

 

40.Philip Bailey『Love Will Find A Way』

 アース・ウィンド&ファイアーのボーカルによるソロ作(白状すると僕はEW&Fをきちんと聴いたことがないのだが)。カバー曲が主体ながら、その芳醇な音楽性にはヤラれた。トーキング・ヘッズの「Once In A Lifetime」のアレンジとかセンスの塊。筆舌に尽くし難い素晴らしさなので聴いてみて。

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39.Jamila Woods『LEGASY! LEGASY!』

Legacy! Legacy!

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 米シカゴのSSW。ジャケのイメージを裏切らない、超クールなネオソウル作品。特徴的ないい声をしているし、トラックの洗練具合と併せて隙がない。

 

 

38.Task have Fun『BLUE ALBUM』『RED ALBUM』『GREEN ALBUM』

BLUE ALBUM

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RED ALBUM

RED ALBUM

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GREEN ALBUM

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  三人組アイドルグループの1stフルアルバム。なかなかアルバムが出ないなと首を長くして待っていたら、同時に3枚もリリースされて驚いた。Spotifyでは重複曲を省いて3枚分の曲をまとめた『PURPLE ALBUM』が配信されたくらいなので、3枚併せてひとつの作品と捉えて良いだろう。

 全編に亘ってグッドメロディと力強いバイブスに溢れていて素晴らしい。まさにこれまでの活動の集大成という感じで、3人がクールにキュートにキメまくった佳曲・名曲目白押し。可愛さ、楽曲の質、トークスキルと高いレベルで三拍子揃った稀有なグループだし、もっと多くの人に知られてもいいと思う。

 

 

37.Jeff Ballard『Fairgrounds』

Fairgrounds

Fairgrounds

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 売れっ子UKジャズドラマーの、ソロ二作目とのこと。時に不穏に、時に歌心を以てエキサイティングなグルーヴを聴かせてくれる。にしてもドラマーのソロ作って曲の制作過程どうなってるのかとか定義とか謎なので知りたい。

 

 

36.Anderson .Paak『Ventura』(前作2018年No.37)

Ventura

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 非常に短いスパンで新譜をリリース。正直、前作は肩透かしを食らった感があったが今作はいい感じ! ただ依然として2ndの『Malibu』は高い壁だと感じる。

 

 

35.Red Velvet『'The ReVe Festival' Finale』

 5人組のガールズK-POPグループ。6th・7thミニアルバムに新曲4曲を加えたアルバム(曲順はそれぞれバラして再構成されており、きちんとひとつの作品として仕上げた感があり好印象)。高音域の歌声が美しく響く冒頭の「Psycho」からして素晴らしいが、M15「Zimzalabim」のような先鋭的なサウンドが光るアッパーな曲もあり、ハイレベルでバラエティに富んだ楽曲の並ぶ聴き応えのある作品集となっている。通常の歌唱はもちろん、ラップもいちいちカッコよくキマっていてアガる。

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34.Nick Cave &The Bad Seeds『Ghosteen』(前作:2016年No.4)

Ghosteen

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 最早誰も侵すことの出来ない聖域を築き上げた感すらある。ジャケットが示すように前作と比べて光を思わせる楽曲が多く、ニック・ケイヴの声と共に賛美歌のように響く。あたかも涅槃に辿り着いたかのような穏やかさだ。最愛の息子の死など幾多の困難を乗り越えてきたことを思うといっそう感動してしまう。

 

 

33.Kim Gordon『No Home Record』

 元ソニック・ユースのベーシスト:キム・ゴードンの、何と初のソロアルバム! 

音楽以外の活動も多々行っていたとはいえ、35年以上ものキャリアの中でソロ作を出していなかった事実には驚くばかりだ。内容はと言うと、かなりソニック・ユースのイメージに近いもので(サーストンやリーのソロ作と比べても最も―というレベルかも)、そのノイジーでエッジの利いた音を気に入らない訳がなかった。ソウルメイトと信じていたサーストンの裏切りで離婚しソニック・ユースが解散しても、決してロックの衝動を失わずに彼女は進む。

 

 

32.・・・・・・・・・『Points』(前作:2018年No.38)

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open.spotify.com

 通称ドッツちゃんの2ndアルバムにしてラストアルバム。振り返ってみると前作は彼女たちの歌に焦点が当たっていたと感じるが、今作はよりサウンドに厚みが増し、演奏と歌がうまく融和して、シューゲイザー作品としてネクストレベルに引き上げられた印象だ。ただシューゲイザーのみならず、M4「サイン」ではテクノにも接近し今までにない刺激的なトリップ感を生み出していてたまらない。

 前作の記事でも書いたが2019年3月をもって彼女たちは『解散』してしまっている。浮遊感のあるtip Toe.のカバーM6「クリームソーダのゆううつ」は、哀愁漂うメロディーも相まって、短期間で消え去ってしまう彼女たちの儚さを表しているようで沁みた。

 ライブを観ることもなく終わってしまい落胆していたのだが、間もなくこのドッツの運営チームが新たにRAYというアイドルグループを手掛け、それがシューゲイザー✕アイドルポップというフォーマットを引き継いでいる事が判り息を吹き返したのだった(とは言えドッツも観てみたかったが……)。

 

 

31.Robert Glasper『Fuck Yo Feelings』

 ロバート・グラスパーが気の合う仲間をスタジオに呼んで作ったミックステープ(既に同じメンツでアルバム出していたようだがそちらは未聴)。殆どの曲でラッパーを招いていて、どれもセンスよくまとまっている。ただ19曲72分と長く、通しで聴くと疲れるのが難点。

 

 

30.Velvet Negroni『Neon Brown』

 ジャケットにピンと来て試聴したら大当たり。中~低音域を美しく響かせる繊細なボーカルと、少ない音数ながら先鋭的なトラックが冴える、心に沁み渡る静謐なインディR&Bだ。サウンドや編曲など随所にこだわりが感じられるウェルメイドな作品。

 

 

29.kuro『JUST SAYING HI』

 TAMTAMのボーカルのソロデビューアルバム。ヒップホップ、インディR&B等を基調としていて、トロピカルでポップなTAMTAMと比べるとかなりクールな印象だが(spotifyで本作を見つけたのだが最初気付かなかった)、これが個人的にかなり好みでツボった。8曲32分とコンパクトだがどの曲もハイクオリティーで満足度高し。

 

 

28.Brittany Howard『Jaimie』

 アラバマ・シェイクスのボーカルのソロデビューアルバム。よりパーソナルな内容を歌っているとのことで内省的な曲もあり、これぞというパワフルな曲もありだが、それぞれの楽曲に豊富なアイデアが盛り込まれていて聴き応え十分。サウンドも洗練されていて素晴らしい。

 

 

27.yeule『SerotninⅡ』

 ジャケットに惹かれて手に取ったのだが、ルックスとは裏腹に透明感のあるウィスパーボイスと、雪原を思わせるトラックが心地良良い至高のエレクトロニカだった。無機質なようであたたかみを感じさせるような、不思議な魅力があって良い。

 

 

26.Teebs『Anicca』

 フライング・ロータスの盟友らしい。タイトルは仏教用語の『無常』を指すようで、基本エレクトロニカだが一部瞑想音楽やアンビエント的なトラックもあり、落ち着きたい時に聴きたくなる。客演のスーダン・アーカイヴスやパンダ・ベアらとの相性も抜群だ。

 

後編につづく!