ノーボーダー・インプロα

音楽への想いを刻みたい

「いい音楽」との出会い方~リアル編~


○店舗の試聴機での試聴

こちらは地方に住んでいる人には利用できない方法なので恐縮なのだが、
都市部に住んでいてそれなりの規模の店舗が近くにあるなら是非利用してもらいたいのが試聴機の試聴だ。

複数の作品が試聴機にかけられているので、そこからお気に入りを見つけていこう。

 

元々気になっているアーティストのものがあれば迷うことはないが、

まだ自分の知らないアーティストを発掘していきたい場合は

どこから手をつけたらいいかわからないかもしれない。

(※前回の記事でツイッターを用いた音楽の見つけ方について書いたが、

 事前に情報を仕入れておくとスムーズになる)

 

大体試聴機コーナーはロック、ポップ、R&B、ジャズ……といったように

大まかなジャンルで分けられていてその表記がなされている為、

まずは自分の関心のあるコーナーかどうか確認しよう。

(もし明確にジャンルの表記がない場合でもジャケや帯、裏面の説明書きなどで

 おおよそ判断できるかと思う)

 

その中で試聴するものを選んでいく訳だが、店舗の規模によってはかなりの数がある。

よって選別していく必要があるのだが、僕個人が実際に試聴するものを選ぶ際に基準にしているのがジャケットとポップだ。

正確にはまずジャケットの好みで選び、その作品のポップの文章を読んで引っかかったら試聴する、

というのが基本的なパターンである(ジャケットも表現の一種なので好みに合うものは音楽も気に入る可能性が高い)。

 

特に好きなアーティストが引き合いに出されていたり実際に作品に関わっていたりといった情報がポップで確認のできる場合、ジャケに関係なくそれのみで試聴することもあるが。

(またはバイヤーがあまりにも熱烈に推している場合「そこまで言うなら一度聴いてみるか」となる場合もある笑)

 

これはあくまで僕個人の例なので、どういう風に選定していくのかは

実際に試聴していく中で決めていってもらえたらいいと思う。

店舗によってはポップなんて書かれてないというところもあると思うが、

例えば海外アーティストの国内盤やジャズなどはバイオグラフィー等説明が帯や裏面に

載っていることが多いので(ここをそのまま転載してポップとしているケースは結構あるw)、

それを参考にするのもひとつの手だ。

 

それすらもない場合はとりあえずジャケットのイメージのみで選ぶか、それもいまいちピンとこないようなら片っ端から聴いていこう笑

ずっと試聴していると何かみえてくるものがあるはずだ。

 

 

 

○音楽雑誌

ネット上でも音楽の紹介記事は無数にあるが、

能動的に検索をかけて探す必要があるため自分で探そうとすると結構煩わしかったりする。

良くも悪くも雑誌では基本的に今売れている・注目されているアーティストが並んでいて

ざっとチェック出来るため、とっかかりを見つけるにはそれなりに有効かと思う。

 

ただ当然のことながら雑誌単体では実際にどんな音楽か確認することは出来ないので

気になるアーティストがいたら携帯等にメモしておき、ショップに行ったときに試聴するか、なければYouTube等で曲をチェックする―というようにネットと組み合わせる必要がある。

(ここの関連動画で近い音楽性の他アーティストのが出てきたりするので

  そこから掘っていく事もできる。)

 

ピンポイントで気に入るアーティストを見つけられるかも知れないし、

一発でそうはならなくともまずは情報を仕入れておく。

そこからネットや店舗での試聴等へ繋げていき、気に入るものを探していこう。

 

 

○ラジオ

いま聴いている人は少ないかもしれないが、

音楽の情報を仕入れるポピュラーな方法としてラジオも有効かと思う。

いまならインターネットのradikoでクリアな音声で聴くことも出来る。

(また月額300円+税を払ってプレミアム登録すれば全国どこの局の放送でも聴くことができる。

 必須ではないがコストパフォーマンスが非常に高いためラジオ好きな方には絶対的にオススメだ)

 

FM放送を聴いていればいま旬の音楽に触れることが出来るし、

古き良き音楽ならAM放送の番組でみつけやすいだろう。

 

クラシック、ジャズが好きならNHK-FMがオススメだ。

日頃からよく流れているし、不定期で放送されている『今日は一日○○三昧』という番組では

プログレフォークソング、ブラジル音楽、(デヴィッド・ボウイなど)特定のアーティスト、アニソン、ゲーム音楽……

といった、特定のジャンルの音楽を6~10時間近く流し続けるというなかなか気骨のある放送をやっている。

トークを交えながらその分野のことをかなり幅広く知ることが出来るので

自分の関心のある放送は聴いてみて損はない。

 

今日は一日○○三昧』公式ツイッターアカウント⇒@nhk_zanmai

 

 

NHKだけはradikoで聴けないため、もしラジオ機器を持っていなかったり、

ネットでクリアな音声で聴きたい場合は以下のサイトを利用しよう。

 ↓↓↓↓

NHKらじお らじる★らじる

http://www.nhk.or.jp/radio/

radiko同様アプリがあるのでスマホで外で聴くことも可能だ。

 

 

◇その他オススメ番組
・Music Insurance〜音楽は心の保険〜 bayfm72(日) 21:00-22:00

(音楽ライターの岩田由紀夫さんが放送している一時間番組。

 ロックメインだがそれのみならず幅広いジャンルを扱っていて、

 トレンドを押えつつ質の高い音楽を届けてくれる)

 

 

 

 

○人から訊く

友人、何か音楽系のイベントで知り合った人、

職場で知り合った人、ショップ店員さんなど、

とにかく音楽が好きそうな人がいたらとりあえず好きなアーティストや今ハマっている音楽があるか訊いてみる。

ぶっちゃけネットで探すことと比べると、自分の好みにマッチしたものと出会える可能性は低い(笑)

 

ただ、結果的に直接その相手から気に入る音楽を訊けなかったとしても、

普段自分の接していない音楽に触れることはムダではないと思う。

 

好みに合わなかったなら合わなかったで、それなら自分は実際どういった音楽を求めているのか?

といったものがより絞れて見つけやすくなるかもしれないし、

ようは自分のアンテナの感度を高めていくことが大事かと思う。

 

知っている領域が広まっていくほど気に入る音楽を見つけやすくなるというのは

なんとなく想像出来るのではないだろうか?

 

 

少し勇気はいるが、レコード屋の主人やCDショップの店員など、

仕事で音楽に携わっている人に訊ねてみるのは堅い。

なにしろ日頃から膨大な数の音楽と接している訳なので、

それはそれはいい音楽をたくさん知っている。

 

レコード屋の主人ならほぼいつでも暇しているのでw、

自分の好きな作品を置いているならそれをきっかけにオススメを訊いたり、

店内でかかっている音楽が気になったら「これ誰ですか?」と

思い切って話しかけてみよう。

 

愛想のいい主人、ややぶっきらぼうな主人とそれぞれだが、

基本音楽が好きで仕事している訳なので質問されたら嬉しいだろうし

大体好意的に教えてくれるはずだ。

(僕はレコ屋のご主人キッカケでブラジル音楽を聴き始めることになった)

 

CDショップは、ポップを手書きで書いているような店の店員さんなら訊いてOKだろうと思う。

タワーレコードではジャンル毎に担当が分かれていて(小規模の店はそうでないかもしれないが)、

僕は何か問い合わせをしたとき、対応してくれた方に「最近なにかいい音楽ありますか?」とついでに訊ねたりしている(店内放送でかかっているCDのコーナーを尋ねた時など)。

 

やはり音楽が好きだからこそ働いている訳で、快く何かを教えてくれる。

色々聴いているだけのことはあり、大体自分の知らないアーティストの名前をいくつか聞ける。

ーとなればまた自分の領域を広めるチャンスとなる訳だ。

 

 

ややハードルは上がるかもしれないが、

ふとしたタイミングにひと声かけるだけで想像していなかったようないい音楽と出会えるかも知れない。

こういった機会を増やしていけばあなたの音楽ライフはより充実したものになっていく筈だ。

参考にしてみて欲しい。 

「いい音楽」との出会い方~ネット編~

今回は、なにかお気に入りの音楽を見つけたいけどそのやり方がわからない人、

昔は音楽聴いていたけどしばらく離れていて今どこから手をつけたらいいかわからない人に向けて、個人的にどういう風に音楽を見つけていっているか書きます。

よかったら参考にしてみてね!

 

 

○情報を仕入れ

自分の好みに合った音楽を見つけるために、

まずはいま巷にどんな音楽があるのか情報を仕入れよう。

この記事を読めているということはネットは使えるということなので、ネットから!

 

好きな音楽ブロガーさんをみつけるというのもテだとは思うが、

個人的には情報収集として利用することはあまりないし、それほどオススメ出来ない(こんなブログをやっておいて何だが)。

いつ更新されるか分からないので随時チェックしなければならないし、読むのに時間もかかるからだ。

 

ということで専らツイッターを活用している。

現在ツイッター自体やっていないという人も勿論いると思うが、

一度インストールして利用し始めれば手間をかけることなくリアルタイムで

次々といい音楽を見つけられる環境が手に入るようになるのでこの機会に始めてみてはいかがだろうか?

 

 

http://janetter.net/jp/desktop.html

標準のツイッターアプリは自分でクリックしないと最新の呟きを表示させることが出来ないが、

このJanetterを使えばほったらかしにしているだけでフォロワーのツイートがリアルタイムで流れてくるのでオススメだ(※スマホ版もあるが自動スクロール出来るのはPC版のみなので注意)。

 

さて。ツイッターをインストールしてみたのはいいもののどのアカウントをフォローすればいいか分からないかと思うので、

オススメのアカウントを載せておく。まずはこれらからフォローしていこう。

 

 

タワレコメン(@TOWER_Recomen/洋・邦楽 ※動画リンクあり)
・音楽ナタリー(@natalie_mu/邦楽オンリー) 
・rockinon.com邦楽(@rockinon_hogaku)

 

・amass(@amass_jp/エンタメ総合ニュースサイトのアカで洋・邦楽、映画音楽、アニメ・ゲームソングなど幅広く。特に洋楽の情報が多い。MVやライブ映像など動画リンクから実際に曲が聴けるためオススメ)
・rockinon.com 洋楽(@rockinon_yogaku)
・Mikiki 音楽レヴューサイト(@mikiki_tokyo_jp)
・The Sign Magazine(@thesignindex)
・The Sign Voice @thesignvoice(※動画リンクあり)
・iLOUD 編集部(@iLOUD_Editors ※動画リンクあり)

・more records(@more_records/誘導されるブログに動画リンクあり。どれもとてもセンス良い)

 

これらのアカウントから音楽の情報が随時流れてくるので、気になったものはリンク先をチェックしていこう。

特にYouTube等の動画リンクを直接貼っているツイートだと非常にチェックがラクになる。

 

やってみると分かるが紹介されているアーティスト名や曲名をコピペして

自分で音源を聴きに行くというのはかなり面倒なのだ(僕自身よっぽど気になったものしかやらない)。

もちろん動画リンクのないものから刺さるアーティストを見つけられる可能性もある為、

特に気になったものは自分でYouTube等で検索をかけ曲を聴いてみるといいだろう。

 

 

○音楽好きアカウントをたくさんフォローしてネットワークを作っていこう

公式アカウントをまずフォローしようとお伝えしたが、これはあくまでとっかかりと考えてもらいたい。

公式よりも、個人的に繋がったいち音楽好きのフォロワーさんの方が、

自分に刺さる音楽を紹介(といっても普通に呟かれているのを見るだけなのだが)してくれることが圧倒的に多いからである。

 

問題はどのようにその音楽好きの個人アカウントを見つけるかということなのだが、

例えば好きなアーティスト名でエゴサーチをかけてみるというのがひとつの手だ(あとは音楽ラジオ番組等の実況タグや音楽関係のタグから探すというのもある。#を付けて検索してみよう)。

 

その中で、音楽に詳しそうな人・情報を多く発信している人は

ツイートの内容をみれば大体判るので(他のアーティスト名を沢山引き合いに出していたり、全般的に情報量が多い)、気になったものをフォローしていこう。

 

 

そして、ここからが大事なのだが、その音楽好きの人がRT(リツイート)した音楽関係のツイートを見て、

自分の関心のある内容を呟いているアカウントだと感じたならどんどん積極的にフォローしていこう(個人・公式どちらでも)。

 

新しくフォローしたアカウントのRTを辿ってフォロー⇒そのアカウントのRTからまたフォロー、と繰り返していけば自動的に色々な音楽の情報が流れてくる自分だけのタイムラインの出来上がり、という訳だ。

 

ツイッターをやっていて常々感じるのが、

「自分一人だけでリーチ出来る音楽には限界がある」ということ。

世の中には自分より詳しくていい音楽を教えてくれる人が沢山いるので、枠を定めたりせずに領域を広げていこう。

これはツイッターに限った話ではなく、よりよいものに出会うための大切なスタンスだ。

 

 

 

○アマゾン、YouTube等の活用

こちらはツイッターで集めた情報を元に併用する形になるが、

アマゾンやYouTubeで検索したアーティスト・作品から更に広げていくのも有効だ。


どちらのサイトもアルゴリズムが組まれている為、
自分が検索した作品に合ったオススメをなかなかの精度でピックアップしてくれる
YouTubeなら「あなたへのおすすめ」、アマゾンだと「この商品を買った人は、

 こんな商品も買っています」の項目)。

 

 

特にアマゾンのアルゴリズムはかなり優秀なので、

気に入っているアーティストからのおすすめはチェックしてみる価値があるので試してみて欲しい。

 

試聴マークがついているものは30秒程度と短めだが試聴できる曲もあるし、

なくても商品説明やレビューをみ読めばある程度自分が関心を持てるものかどうか

判断できると思うので、少しでも引っかかったらYouTubeや※Spotify等で聴いてみよう。

(※Spotifyは今最もホットな音楽開拓ツールだと思われるので今後検証していきたい)

ひと手間かかるがかなりの確率で新しいアーティストが見つかるハズだ。

 

 

YouTubeのおすすめならダイレクトに曲を聴き続けることが出来るので

フットワーク軽く開拓していくことが出来る。

アルバムの詳細など確認したい場合は逆にアマゾン等のサイトで検索をかける必要があるが、

先に曲を聴いて気に入るかどうか判断出来るので手っ取り早いかと思う。

自分に合ったスタイルを選ぼう。

 

Pパタが選ぶ2016ベストアルバムトップ30(後編)

 

つづきです。まだ前編を読んでない方はコチラ

 

 

15. Deerhoof  『The Magic』

The Magic 【日本先行発売/ボーナストラック付】

The Magic 【日本先行発売/ボーナストラック付】

 

2005年作の『The Runners Four』というアルバム一作のみ持っていたのだが、20曲収録で57分と微妙に聴きづらく、「良い曲もあるがややまとまりに欠ける」といったマイナスの印象を拭えなかったため、あまりリピートすることなくラックに眠らせたままになっていた。しかし今作は違った! ディアフーフというバンドマジックが生まれる瞬間を捉えたような、爆発音の如きグルーヴが炸裂するM1から始まり、他ではなかなかお目にかかれないオリジナリティに満ちた、前衛性とポップさ(ド直球のロックンロールナンバーもある)が同居する傑作に仕上がっていたのである。とにかくそのバランス感覚が見事で流れも素晴らしく、何度でも繰り返し聴きたくなる魅力に満ち溢れている。インディ・オルタナロックを愛するすべての人に聴いてもらいたい(僕は過去作も聴く必要があるだろう)。

 

 

14. UA 『jaPo』

JaPo

JaPo

 

「情熱」などに代表されるR&B色の強い初期から一転、グッと民族音楽的アプローチを強めたのが4thの『泥棒』で、以降の作品の中でも最もその方向性を突き詰め、ついにひとつの完成形をみた感のある今作(9th)。大自然と調和するかのような、森羅万象を司る偉大な存在へ祈りを捧げているような神聖さを宿した歌の数々に触れていると、UAは”アーティスト”の枠を超えて別のなにかになったのかもしれない……と思ったりしてしまう。血湧き肉躍るストリングスの調べも、ここではないどこかに誘うかのようなシタールも、潤いをもたらすピアノも、ビートを刻む以上に歌うドラム・パーカッションも、より鮮やかな色彩を添えるコーラスも、あらゆる演奏がただ“音楽”へと奉仕しているような異次元の結合をみせ、もう平伏すしかないレベルである。オリコン最高57位と歴代のアルバムの中でセールスは最も奮わないようだが、「本物」の音楽を求めるあなたにこそ是非聴いてみてほしい。

 

 

13. Childish Gambino 『"Awaken, My Love!"』

アウェイクン、マイ・ラヴ!

アウェイクン、マイ・ラヴ!

 

とんでもなくソウルフルな作品だ。ボーカルといい、ゴスペルのような分厚いコーラスといい、R&B、ファンク、ソウル、ロックといったジャンルを縦横無尽に駆け巡るグルーヴといい、マグマの如き熱を帯びたエネルギーが迸っていて圧倒されてしまう。M8「Terrified」やM11「Stand Tall」のようなしっとりと聴かせる曲もあるのだが、それがまた神聖さすら感じさせる響き(まるで祈りのようでもある)を伴っており聴き入ってしまう。冒頭から最後の曲に至るまでそんな豊潤な音が溢れていて、極上の音楽体験をさせてくれる文句なしの名盤である。ジャケットが似ていることもありファンカデリックの『マゴット・ブレイン』(偶然本作の存在を知る少し前に入手しその素晴らしさに痺れていた)からの影響を指摘する記事を見かけたが、確かにソウルフルなグルーヴやコーラスワーク、煌びやかで官能的なギターソロなど想起させられる点は多く、偉大なバンドのDNAが受け継がれている様がみてとれて喜ばしく思えた。

 

 

12. ALEEMKHAN 『URBANA  CHAMPAIGN』

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DL販売サイト→https://aleemkhan.bandcamp.com/album/urbana-champaign

その名もアルバム名も曲名も、正しくはなんと発音するのか、どこの国の人なのか謎が多いアーティストだがひとつだけハッキリしているのはこの音楽がファッキン最高だということだ(フォロワーさんの知り合いがBandCampで偶然発掘したそうで、僕もツイートをみて運良く知ることが出来た)。サックスなど吹奏楽器主体で曲は作られており、M4「DARK  CHOCOLATE」などはキング・クリムゾンの「スターレス」の冒頭部を彷彿とする崇高さを湛えていて素晴らしい。そんな瞬間をこの作品の中では何度も体験することが出来る。クリムゾン同様ジャズの影響などは感じられるが、この音楽がいかなるものなのか表現する術を僕は寡聞にして持ち合わせていない(プログレとはまた違う感じ)。……というと誤解を生みそうだが、決して奇妙奇天烈という訳ではなく、ボーカルはいい声をしているしむしろメロディアスで心地よく聴かせてくれる。ただ総体としてこれはどういったものかが掴めない、とにかく不思議な音楽なのである(iTunesのジャンルも”Unclassifiable”だし)。ぶっちゃけ傑作以外のなにものでもないので、未知なるエキサイティングな音楽を求める方には猛烈にオススメするし、我こそその正体を見破ったりという方は是非ご一報を。ちなみにBandCampでDL購入出来、CDはないがカセットテープは限定100本で販売されていた(現在は販売終了。ただDL販売は最低価格設定なし=無料でも音源が入手出来る!)。僕はもちろん入手済みである。二ヶ月くらい待たされたけど。

 

 

11. 竹達彩奈 『Lyrical Concerto』

Lyrical Concerto(完全限定版)(Blu-ray Disc付)
 
Lyrical Concerto(通常盤)

Lyrical Concerto(通常盤)

 

声優・竹達彩奈。相方の沼倉愛美についてはファンで、二人でやっているラジオは面白いため聴いていたが、彼女自身はルックスは可愛いとは思っていたものの、取り立ててファンと言うほどではなかった。そう、このアルバムを聴く時までは。正直、ぶっ飛んだ。まず序盤の流れでハートをぐわしと掴まれた。ファミコン音源風の遊び心溢れるM1「JUMP AND DASH!!!」から始まり、シミズコウヘイ(ex.カラスは真っ白Gt.)のキレにキレまくるギターリフに圧倒されるM2「キミイロモノローグ」、勢いよくハネるビートとロリータボイスで童謡の舞踏会のようなキラッキラとした世界を広げてみせるM3「SWEETS is CIRCUS」、アッパー系のアニソンの流れを汲みながらもブリッジの猛烈なアタック感で鮮烈な印象を残すM4「AWARENESS」……と、想像を絶するクオリティーの曲が立て続けに耳に飛び込んできたものだから。個人的に女性声優の音楽に求めるものはー中には前述した上田麗奈のようにアーティスティックな作品を作るケースもありそれも勿論魅力的だがー本人の個性を活かした完成度の高いアイドルよりのポップスなのだが、本作はまさにその理想に限りなく近い出来で、今後これを超えるものはそうそう出てこないのでは……?と本気で思うほどであった。もう、好きだ。好きすぎる。僕はまんまと竹達のファンになっていた。彼女曰くこのアルバムは『二次元への愛を詰め込んだ作品』とのことだが、まさにアフレコをするように曲ごとに声色を使い分けていて、そういったところも注目して楽しめるポイントだし、全体により一層彩りを添えていると思う。そこのところで特に気に入っているのがM10「ナナイロ⇔モノクロ」で、ここでは意識的に無機質な歌唱がなされており、エフェクトで処理も施されていると思うが、曲のもつ世界観と非常にマッチしていて素晴らしい(また、高速で流れるピアノのサンプリング・左右のチャンネルの振り方の巧妙さ、中毒性のある独自のビート感などトラックが死ぬほどカッコイイので必聴だ)。……キリがないので控えるが、他にも良い曲は盛り沢山である。ファンシー度全開のこのジャケ(初回盤)も完成度高し!で、2016年作の中でも屈指のヘヴィロテ必至盤となった。

 

 

10. Radiohead 『A Moon Shaped Pool』

A Moon Shaped Pool [国内仕様盤 / 解説・歌詞対訳付] (XLCDJP790)

A Moon Shaped Pool [国内仕様盤 / 解説・歌詞対訳付] (XLCDJP790)

 

歴代のアルバムの中でも最も美しいジャケ(個人的見解です)があしらわれた今作は、そのイメージに違わぬ美しい楽曲が収められた素晴らしい作品になった。エレクトロよりなアプローチを強めていた前作から比べると歌ものに回帰したなという印象で、そのトムの儚げな歌を最大限にまで引き立てるかのようなストリングスや鍵盤、アコギなど各楽器の使い方には心底唸らされる。痛切な歌詞(離婚を経たトムの傷心具合が色濃く反映されたよう)とは裏腹にサウンドには不思議と温かみがあり、過去作で見せてきたような音楽的な革新性はないものの、これまでに感じたことのない優美さをアルバム全体から描き出していて驚きと感動を覚えた。近年の作品ではダントツで気に入っているし、先行して公開されたM1から始まりアルバムリリース後のSNSでの一連の反応をみても、ファンが喜びを共有している感じがひしひしと伝わってきて嬉しくなった。

 

 

9. YEN TOWN BAND 『diverse journey』

diverse journey(初回限定盤)(DVD付)

diverse journey(初回限定盤)(DVD付)

 
diverse journey(通常盤)

diverse journey(通常盤)

 

岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』の劇中バンド・YEN TOWN BANDの、1stアルバム 『MONTAGE』からなんと20年の時を経てリリースされた今作。どういった経緯なのか詳細は分からないが、これだけ最高の作品を作り上げてくれたことに感謝する他ない。全体を通して楽曲のスケールは前作を大幅に上回っており、これでもかと言うくらいのどポップさに高揚させられ、ドラマティックなメロディーは琴線に触れ、聴いていると脳内に理想郷とでも言いたくなるようなイメージが広がっていく。また声を大にして言いたいのがCharaのボーカルが素晴らしすぎるということだ。……いや、元々圧倒的な個性をもった稀有なシンガーだとは重々承知していたつもりだったが、楽曲のクオリティが上がると共にその表現力をこれまで以上に発揮してくれたという感じで、自分の中で賞賛度合いが更に更新された次第である(あと初回盤付属のライブDVDで近年の姿を見たが若すぎる。妖精か!)。最高の楽曲と最高のボーカルが合わされば……当然のごとく冒頭で述べた通りになるという訳だ。前作のオリコン最高順位は1位だが今作は16位ということで、リリースに気付いていない音楽ファンも多いのでは?(タワレコでも展開されてるのを見かけなかったし、僕自身見逃すところだった)今からでも遅くないので未聴の方は聴くべし!

 

 

8. Solange 『A Seat At The Table』

ア・シート・アット・ザ・テーブル

ア・シート・アット・ザ・テーブル

 

姉妹揃って同じ年に渾身の一作をリリースするのだから血は争えないなと思う。ただ聴き比べて面白いのはスタイルはかなり異なっているところ。力強く凛々しいボーカルとダイナミズム溢れる楽曲で魅せる姉のビヨンセとは異なり、スウィートで透明感のあるボーカルに、全体的にスローテンポで音の間隔を存分に活かしたトラックーと、受ける印象は対照的だ(と言ってもソランジュにも内に秘めた力強さは感じられるし、ビヨンセにしても繊細さは持ち合わせているが)。サラっと流すことも出来る聴きやすさなのだが、細かいところまで作り込まれているため何度でもリピートしたくなる魅力がある。艶やかでしなやかなサウンドは交流する機会を多く持っているというインディロック系のアーティストの影響が大きいだろうか? R&Bテイストを残しながらも、その枠には収まりきらないオリジナリティに溢れていて素晴らしい。本作にはトライブのメンバーや、今年文句のつけようのない傑作をリリースしたSamphaなどゲストも多数迎えられており、一線で活躍するアーティストが互いに刺激を与え合っていることが見て取れて微笑ましくなったのだが、そのクリエイティヴィティが自分のリスナーとしての領域を広げてくれたとも感じられるので、先々振り返ってみても重要な一作と位置づけられる気がしている。いままで聴いてこなかった音楽への関心が高まったことで、またどんなエキサイティングな音楽に出会えるだろうかと、これからがより楽しみになった。

 

 

7. sora tob sakana  『sora tob sakana

sora tob sakana

sora tob sakana

 

M2「夏の扉」から立ち昇る強烈なセンチメンタリズムといったらどうだろう。ギター・ベース・ドラムの暴れ狂うような疾走感溢れる轟音グルーヴとそれを包み込むような煌びやかなピアノの音色は、幼少時代の未知の広がる世界に足を踏み入れる時のようなワクワクする気持ちを喚起し、同時に、郷愁を帯びたメロディーはそんなかけがえのない感情も年を重ねるにつれ失われていく儚さ・焦燥感を表しているかのようだ。そして、そんな相反するものの狭間で生きることを象徴するかのような、まだ幼さを残した少女たちの歌声。あまりにも眩しくて、胸が締め付けられるようだった。アルバム全編を通して、エレクトロニカ、マス・ロックといった要素を取り入れ音楽的にとてつもなくハイレベルなことをやっていて、その演奏に四人の少女たちの真っ直ぐな歌声が乗ることで生まれる特別さは、まさに魔法としか言いようのない輝きを放っている。また、熱い。ポップな曲もキュートでそれはそれは魅力的なのだが(M5のMVは必聴)、忘れかけていたロック魂に火を点けてくれるような激燃えのナンバーもあり(M4、M6、M7、M12など)、それらももちろん前述した彼女たちが歌うことで宿るマジックが炸裂しているのだからたまらない。こんなエキサイティングな作品に出会いたくて音楽を聴き続けていると言っても過言ではない。僕が千の言葉を尽くそうともこの素晴らしさを表現しきることは出来ない。だからこれを読んでいる人には聴いてみて欲しい。バリエーションに富んだ曲を聴き進み、ラストのM14「クラウチングスタート」で訪れるであろう感動を是非味わってもらいたい。なかなかお目にかかることのない「魔法」が、あなたを待っているから。

 

 

6. Beyonce 『Lemonade』

レモネード(DVD付)

レモネード(DVD付)

 

2016年の個人的なトピックとして、(それまで手を出すことのなかった)R&B系統のポップ勢も聴くようになったことが挙げられる。完全に食わず嫌いだったと言わざるを得ないが、このテのジャンルは似たり寄ったりにしか感じられなかったのだ。その認識を覆してくれたのが本作である。例えばM3「Don't Hurt Yourself」では元The White StripesのJack Whiteをフィーチャーし、スピード感のあるスリリングなトラックに乗せて彼に決して引けを取ることのない鬼気迫るボーカルを披露していたり、Kendrick LamarをフィーチャーしたM10「Freedom」では圧倒的なスケールとダイナミズムで『自由』(”女性”であること、“黒人”であること等からのー)を求めるメッセージを力強く発信していたりと、ロック好きの自分に十二分に訴求する内容だったというのが大きかった。ーのだが、何よりそんなロックな要素のみならず、アルバム全編を通してビヨンセのソングライティングとボーカリゼーションの織り成す表現の幅の広さ、深さ、洗練度合いが信じられない程にズバ抜けていて、感銘を受けるとともに心から敬服してしまった。なんて素晴らしいアーティストなのだろう、と。全12曲46分、全く無駄がなく理想的な流れで、一瞬たりとも冷めることなく大いなる感動をもって最後まで聴き通すことが出来る。出会えて良かった……ビヨンセ最高や!!

 

 

5. David Bowie 『Blackstar』

★(ブラックスター)

★(ブラックスター)

 

2016年1月10日。僕はその日、奇しくも本作『Blackstar』を近所のCDショップで試聴していて、”確かに評判通り良さそうだけど今月は余裕ないし後で買おう”などと思って店を出た。エレベーターで1Fに降りて帰路に就こうとしたところ、スマホのプッシュ通知で「その事実」を知ることになる。

―歌手:デヴィッド・ボウイさん死去―衝撃だった。我が目を疑った。ただ何度みても確かにそう記述されていた。あまりの突然の出来事に内心狼狽しながら、踵を返してショップに戻りこのCDを買っていた。今聴かないでいつ聴くんだ、と。ただ正直に告白しておくと、僕は昔から彼を追いかけてきた熱心なファンという訳ではなかった。所有していたのは中古で買った93年の『Black Tie White Noise』に、初めて新品で買った『Reality』、それからVUとの交流で影響を受けたと言われる近年復刻された『Hunky Dory』の三枚のみという浅いファンである(あとは『ジギー・スターダスト』などもう数枚レンタルで聴いていた程度)。それでもスタイルを変化させ続けながらロックシーンに多大な影響を与えた存在として惹かれていたし、作品は追っていきたいと思っていた。まさかこんなに早くラストアルバムを遺すことになってしまうとは夢にも思わなかったが。本作は、ほんとうに感動的なまでに素晴らしかった。死期を悟っていたことが窺えるM1やM3をはじめとして、不穏なムードを全体に漂わせながらも、未知でエキサイティングなものを創造せんとする音が鳴らされていた。まだまだこれからすごいことをやってみせてやるという、予感と確信に満ちた音楽だった。結果として、このアルバムをリリースしたその二日後にボウイは”ブラックスター”となり、これぞ最後という印象を作品に与えた。賞賛の嵐だったし、僕ももちろんみんなと同じ気持ちだ。ライブに一度行ってみたかったな、とか、後悔や至らなさといった鈍い痛みをわずかに覚えながら。ラストの「I Can't Give Everything Away」が、すべてのファンへ捧げる贈り物のようで、また自身をあるべきところに還す葬送曲のようでもあり、この世ならざる美しさが胸を打つ。デヴィッド・ボウイはかけがえのない特別な存在だったのだと、過去作を追っていく中で僕はこれから知っていくのだろう。本作を聴きながら、いまはただ思いを馳せている。

 

 

4. Nick Cave & The Bad Seeds 『Skeleton Tree』

スケルトン・ツリー

スケルトン・ツリー

 

名前は知っているが聴けていなかった大御所シリーズ。イギーに並んでニック・ケイヴもまた、最新作で初めてその音楽に触れることとなった。なんて心に沁みる歌声だろう。それまでの人生の重み(決して平坦ではなかったと伝わってくる―)の乗った、嗄れた深い味わいのある歌声。切実で、胸に迫ってくる。自分の望みとは裏腹にどうにもならないことの多いこの世界で(2015年にニックは息子を亡くしている)、それでも生きてかけがえのないものを伝えんとする意思が滲んでいる。本作に収められたトラックはいずれも静謐さを湛えていて、コーラスやアレンジは歌声をより特別なものへと昇華させる神聖さを帯びている。冷たい孤独に晒されながら神と対峙しているような印象すらあって(書いてから気付いたが、一曲目のタイトルは「JESUS ALONE」だ)、ポエトリーリーディングに近い歌唱は祈りのようでもあり、懇願のようでもあり、懺悔のようでもある。高潔さとネガティヴィティが同居しているようなその言い知れぬ魅力に耳を離すことが出来ない。本作で訴えられているメッセージは決してストレートに聴き手を鼓舞するようなものではないだろうと思う。傷つきながら、凄惨さに押しつぶされそうになりながら生きた、ひとりの男の痕跡が生々しく焼き付けられているのみだ。だがそのパーソナルな物語は、彼同様に苦しみを抱えた者に共感と癒しをもたらす。打ちひしがれた時、絶望に晒された時、真に寄り添ってくれるのはこういう音楽だ。少なくとも僕には絶対に必要なものだ。情けなさや汚さがいかに含まれていようと、生きることの意味を教えてくれるようなこの作品はあまりにも美しく愛おしい。

 

 

3. Anderson .Paak 『Malibu』

MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)

MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)

 

「これほどまでに豊穣でスタイリッシュで輝きに満ちた音楽があるだろうか」と、一聴して頭をぶっ飛ばされ、完膚なきまでに虜にさせられた。この全面降伏させられる感じ、プリンスに比肩する才能の持ち主と言っても過言ではないかもしれない。アンダーソン・パーク、恐ろしい男である。僕は常々「本物」の音楽を聴きたいと思っているし、その定義はなにかと考えたりもするのだが、『普段そのジャンルを聴かない人にも訴求出来ること』というのがひとつ挙げられる気がしている。前述したプリンスであったり、マイケル・ジャクソンビートルズといった面々はジャンルの壁を超えて多くの人々に支持され、愛されている。そのような強烈なカリスマ性を備えているもの―だ。アンダーソンもやすやすとこちらの壁をぶち破ってきた。プリンスやファンカデリックなど一部のアーティストを除き普段ほとんど接することのないソウルに関心を持たせてくれたのは大きかったが、それもジャズやヒップホップといった複数の要素をあまりにもナチュラルにクロスオーバーさせる抜群のセンスがあればこそで、この音楽体験は何にも代え難いものだった。新たな扉が開かれる興奮。心酔。アンダーソンの声がまた、他ではなかなか聴けないハスキーがかった高音で、ハイクオリティーなトラックと相まってめちゃくちゃカッコ良いのだ。彼がラップすればたちどころに華やかになる。一躍僕の中で最も注目するアーティストになってしまったが、次作が想像を絶するものになっていることに期待しつつ(過度な期待は危険と知りつつ、それでもやってくれるという確信めいたものを抱かずにはいられない)、それまでこの素晴らしいアルバムを聴き返し続けるとしよう。

 

 

2. Leah Dou 『Stone Cafe』

ストーン・カフェ

ストーン・カフェ

  • アーティスト: リア・ドウ,エル・マーゴット,ワン・ウェニング,ノエルアンソニー・ホーガン,ドロレスメアリー・オリオーダン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2016/08/17
  • メディア: CD
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透明度がありながらどこか醒めているように理知的で、それでいて繊細なリリカルさも内包したこの稀有な歌声を持つSSWに出会えたのは幸運だった(なにせロッキングオンで2P程度の密やかなインタビュー記事が載っていた程度で、自分の目に付く範囲では取り上げている人はいなかったので)。アジアの歌姫フェイ・ウォンの娘、という肩書きは必ずメディアで報じられるだろうが、そんなことに触れる必要がないくらい確固たる世界観を作り上げていて、大変失礼ながら中国人に本作のような洗練されたモダンな音楽がつくれるのかと心底驚かされたものだ(歌唱はすべて英語だが、独自の響きは母国語が中国語ということにも起因しているだろうか?)。リア・ドウは幅広く音楽を聴いていたようだが、特に名を挙げているマッシヴ・アタック等、オルタナ系統からの影響が色濃く感じられ、そのややダークな世界観と澄んだ歌声(又は佇まい)とのギャップが何とも言えない魅力を醸し出している(軽やかな曲調のナンバーもあるが)。デビューシングルのM8「River Run」は終始窒息しそうなほどの緊張感が保たれていて圧倒されるが、M1「My Days」では不穏なイントロから始まるもののサビではポジティブでキャッチーな歌メロが顔を見せ、その絶妙なバランス感覚が素晴らしい。また、M5「The Way」で聴ける印象的なギターの揺らぎの音や、M7「Drive」での沈んだドラムやボーカルのエコーなど音響が非常に優れている点もアルバムの完成度をより高めている。オルタナを通過しながら独自の美意識でポップにまとめあげる卓越したセンスは見事としか言いようがなく(捨て曲一切ナシなのだからそれはもう)、プレイヤーとしてギター&ベースの演奏も行い、複数のコラボレーターと組みながらも作品の統一感を損なっていないことからも、高いセルフプロデュース/アレンジ能力を持っていることが窺えるが、本作リリースの時点でまだ19歳だったという事実には驚愕である(同じく早熟の宇多田ヒカルのアルバムとデザインが似ているのは偶然?)。あまりにも自然に曲が配置されているので全く気にならないが、このアルバムはこれまでに発表した楽曲をまとめた結果出来たものだそう。それでもこの完成度なのだから、”アルバム”を志向して製作されたとすると、次作(2nd)は一体どのくらいの出来になるか、(まだまだ伸びしろがありそうなことも相まって)想像がつかない。リリースされる日を心待ちにしつつ、この稀有な才能の行く先を見届けていきたいと思う。

 

 

1. Isis Giraldo Poetry Project 『Padre』

パドレ Padre

パドレ Padre

  • アーティスト: イシス・ヒラルド・ポエトリー・プロジェクトIsis Giraldo Poetry Project
  • 出版社/メーカー: Jazz The New Chapter
  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: CD
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R&Bへの目覚めなど他にも色々あったが、このアーティスト(作品)との出会いは2016年最大のトピックだったかもしれない。創造性に満ちたエネルギーのある音楽だが時おり不穏な旋律を響かせ、一曲の中でちょっと想像もつかない展開をみせることもある。クラシック、フリージャズ、現代音楽、プログレ、ゴスペル、フォルクローレといった要素を含みながら、めまぐるしくナチュラルに変化していくため、総体として浮かび上がるイメージが既存のものに当てはめにくく、まさに未知の音楽だと感じさせられるのだ。理由はハッキリとは分からない。ただこの音楽を聴いていると泣けてくる。母国のコロンビアから離れたカナダの地で見つけた音楽仲間とのこのプロジェクトでイシスは、ジャンルやシーンに縛られることなく、想像の翼を広げて自由に、どこまでへも飛び立って行くような広がりを感じさせつつも、自身の内面を、魂の内側まで掘り下げていくような内省的な面も覗かせる。彼女のピアノと歌、それにぴったり寄り添うようなメンバーの演奏は、忘れていたなにかを揺り動かすようで、また未だ見ぬこれからの輝かしい情景を垣間見せてくれるようでもある。この、感情を多面的に刺激される感覚は他ではなかなか味わえないもので、イシス・ヒラルドというアーティストがいかに深みをもった類稀なる才能の持ち主であるか痛感せずにはいられない。本作は厳密には2015年作で、高橋健太郎氏が偶然(YouTube→BandCampから)発掘したことがキッカケで日本盤も晴れてリリースされることになった訳だが、それが去年だった為2016年作として挙げさせてもらうことにした(僕自身はそのタイミングで知ったしどうしても入れたかったので)。先に紹介したALEEMKHANもそうだが、才能溢れるアーティストの作品がこのように日の目を見る機会を得るというのは素晴らしいことだと思う。それと同時に、まだまだ埋もれたままになっている人たちもいるだろうから、少しでも多く今回のような幸福な出会いを果たしていければとも思った次第だ。

 

 

 

【その他惜しくも選に洩れた・気に入っているアルバムたち】

・Black Mountain『Ⅳ』

・Fernanda Abreu『Amor』

・Hinds『Leave Me Alone』

・D.D Dumbo『Utopia Defeated』

・Warpaint『Heads Up』

Red Hot Chili Peppers『The Getaway』

Cocco『アダンバレエ』

・OREG YOU ASSHOLE『ハンドルを放す前に』

岡村靖幸『幸福』

スピッツ『醒めない』

田所あずさ『It's my cue!』

上坂すみれ『20世紀の逆襲』

三森すずこ『Toyful Basket』

山崎エリイ『全部、君のせいだ。』

・『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う- ヴォーカルCD』

 etc…

 

 

~あとがき~

 

今回はベテラン勢がやや苦戦?その代わりにー

2016年は宇多田ヒカルCoccoUA(ライブもマジで最高だった)、Syrup16gザ・コーラルピクシーズ等、フェイバリットに挙げる(名前だけで試聴せずに買う)ようなアーティストが新譜をリリースする情報が続々舞い込んできて胸が高まった。ただ必ずしもキャリア最高作にはなるとは限らないもので、今回の記事作成にあたりネームバリューは一切無視してシビアに良かったもののみを選出した。結果、それら馴染みある面々の多くのアルバムは厳しい結果となった(特にコーラルには期待していたが前作が完全無欠の傑作過ぎた)。カウントしてみると、はじめて聴いたアーティストのアルバムがなんと30枚中22枚も占めていた!うち1stアルバムをリリースした”新人”(川本真琴は今回のバンドのアルバムは初なのでここに含んでいる)は半分の11組。なかなか多いと思うし、個人的には上位2/3は新たに開拓したアーティストということで、いままでにない刺激を受けながらとても充実した音楽ライフが送れたと思う(ちなみに国内アーティスト11枚、国外19枚で、それほど偏り過ぎていない適度なバランスなのも良かった)。

 

 

選外になってしまったアーティストについて

ギリギリまで入れるか否か迷っていたのがブラック・マウンテンとフェルナンダ・アブレウで、前者は1st 、2ndリリース時に即買っていた結構思い入れのあるバンドで(3rdはスルーしてしまっていたがwZEPやブラック・サバスに影響を受けつつサイケな要素もある)今作はシンセの導入など新機軸だったが、思い入れの面でまじ娘の方がやや上回った。フェルナンダはブラジルのSSWでなんと前作から13年ぶりの新作!ずっと待っていた甲斐のある良いアルバムだったが、全体を通して聴いた時のイメージ・充実感があともう一歩足りなかったため残念ながら外すことにした。メディアや一般リスナー問わず高評価を得ていたハインズは、大好きなThe Velvet Undergroundの影響が強く感じられて嬉しかったし今後が楽しみな新人。岡村靖幸は『家庭教師』一作のみ聴いていて衝撃を受けていたが、今作のエネルギーにも圧倒された。オウガは初めて聴いたが好みど真ん中だった。

 

女性声優の作品は竹達彩奈上田麗奈以外にも気に入っているものがちらほら。前作から一転、全開でロックモードに突入した田所あずさは上半期で最もリピートしていたアルバムかもしれないw(かなり素晴らしい曲もあり、そういったものがもっと多く含まれていたら圏内になったかも。早くも今年の10月に新譜が出るので期待したい)全体のまとまり等でマイナスにはなったものの、上坂すみれの圧倒的な個性はかけがえのないもので、次作以降とんでもない傑作に仕上がる可能性も十分考えられるので期待。三森すずこはまさに求めるアイドルポップど真ん中で最高だが何故ラスト4曲をリミックスにしてしまったのか責任者に小一時間問いつめたい。80年代をテーマにした山崎エリイも良かった。クラムボンのミトをはじめとして、声優の作品には昨今腕利きのクリエイターが多数参加していてクオリティが上がっているため非常に面白くなっている。今後も追い続けていきたい。あと『サクラノ詩』のボーカル曲はシューゲイザー系など秀逸なものが多くオススメ。

 

 

なんでこんなに遅くなっちゃったの?

おおPパタよ、2016年中にアップできないとは情けない。その心はー11月以降にそれまで検討していたアルバムをまとめ買いし始めて聴き込むのに時間がかかり、それのみならず2017年に入ってからもぽつぽつと見逃していた作品に気が付き入手していってしまったから、というのがひとつ(サニーデイ・サービスとか本当に素晴らしく、買えば確実にランクインしたと思うが気付いたのが遅くキリが無かったので打ち切った)。また、この記事が書きたくてブログ始めたようなものだし、各アルバムに思い入れもあり、筆がなかなか進まなかったというのもあった(とりあえずクオリティ気にせずやっていったら格段に早くなった)。冒頭にも書いたが、30枚に絞る時点で時間をかけすぎたので、今年(2017年)の分は二の轍を踏まないよういまからおおよそ気に入っている順に並べておき、新しく買った際に随時更新していくスタイルでいこうと思う。これで2017年ベストはバッチリすぐ上がる筈だ(フラグ)。

 

 

総括的なアレ

やはり例年と比べて全体的にロックが減り、ポップが増えたなという印象。特にロック系は新人となると選外のものを含めても数えるほどしかおらず、刺激的なアーティストにはあまり出会えなくなったなぁと思う(インディ系を掘ればチラホラという感じだけど。アラバマ・シェイクスくらい素晴らしいバンドがもっと沢山出てきて欲しい)。自分の関心がポップ方面に移ってきているのも大きく、ここらへんに関しては前述した通りR&B・ソウル系統やアイドル(声優含む)等とてつもなく充実しているため追っていくのが楽しすぎた(2017年現在もやはりこの状況が続いている)。まぁ思いもよらなかったところからエキサイティングな音楽に出会える可能性だってあるだろうし、引き続きアンテナを立ててよりよいものを探していこうと思う。ちなみに2016年のベストソングはダントツでsora tob sakanaの「夏の扉」だ。

 

 

選出したアルバムの曲紹介動画を作る予定だよ

今回はYouTubeの曲リンクは基本貼らなかったが、各アルバムから1曲ずつ選りすぐったメドレー動画を作ってニコニコ動画にアップする予定。30~16位までと15~1位まで、15曲ずつ前後編に分けて。

これまでに作ったものがコチラ↓

http://www.nicovideo.jp/my/mylist/#/5541375

最後にアップしたのが4年前で、編集ソフトの使い方を覚えているかやや不安ではあるが(かなり初心者)、これもずっとやりたいと思っていたので再トライするよ。完成したらまたブログで報告するので、もしこのベスト30のアルバムに興味を持ってくれた人がいたら待っておいてください。それでは読んで下さった方、ありがとうございました。

Pパタが選ぶ2016ベストアルバムトップ30(前編)

音楽ブロガーのみなさんが2016年末に思い思いのベストアルバム記事をアップする中、僕はといえば選出・順位付けに時間かかり~の本文作成もなかなか進まないだので年が明けても終わらず遅れに遅れ、ようやく完成したのが下半期突入後という激烈な遅筆ぶりを遺憾無く発揮(ツイート見返してみたらベスト30枚の選定が終わったのが3/7。8割以上の文章はこの1~2ヶ月で書きました。もっと早くやる気出せよと言いたい)。反省することしきりだが、とりあえずは無事アップできたことを喜びたいと思う。

 

 

選考基準としては、2016年にリリースされたオリジナルアルバムの中から

①全体の完成度(捨て曲の無さ・ダレなさ、流れの良さ、通して聴いたときのイメージ)
②リピートしたくなる度合い・繰り返し聴いても色褪せないか?
③そのアルバムの好きの度合い

 

以上三点ー厳密に言うと他にもあるかもしれないがーで順位を決めていった。基本的に3つの総合だが、完成度はやや劣っているかもしれなくても好きの度合いが強い場合、完成度の高いものより上の順位を付けたりといったこともあった(そもそも色んなジャンルが混ざっている時点で比較するのも難いしね)。結構なボリュームになったけど(さすがに前後編に分けざるを得なくなった)、読んで下さった方の、ひとつでもなにか新しい音楽と出会うキッカケになってくれれば幸いです。

 

 

 

30. まじ娘 『MAGIC』 

Magic(通常盤)

Magic(通常盤)

 

「まじ娘」の本分はおそらく、前作収録かつトップクラスの人気曲でもある「心赦し」に代表されるような、痛みの感情を振り絞るように歌唱するスタイルにあると思うし、本作での自作曲M6「void」、M8「ワスレナガサ」といった曲でもその表現は健在なのだが、おっと思わされたのがM10「Sweet dream」。タイトルが示すような、こんな甘く幻想的な曲も書けて歌えるのだと、その幅に惹きつけられた。シングル曲のM3「mirror」などの弾けるポップスもありいずれもソングライティングの良さが光っているが、それらを隅々まで、丁寧なサウンドプロダクションで鮮やかに仕上げてみせたホリエアツシ氏(ストレイテナーVo.)の仕事ぶりも見事(彼の作曲したM9「彗星のパレード」がまた素晴らしい)。The band apart等他アーティストの提供曲もバリエーションを持たせつつ作品に溶け込んでいて、結果、トータルでみて非常に完成度の高い作品に仕上がってると思う。ニコニコ動画の歌い手出身だが、関心のない人にも是非聴いてもらいたい佳作。

 

 

29. ももいろクローバーZ 『AMARANTHUS』

4th『白金の夜明け』と同日リリースされた3rdアルバム。どちらも冒頭のインストを除いて13曲収録だが、前山田健一などそれまでのお馴染みの面子もいるとはいえ楽曲提供者がほぼバラけていることに驚異を感じた。本作では中島みゆき(M11「泣いてもいいんだよ」)にさだまさし(M10「仏桑花」)まで起用と、節操のなさに内心笑ってしまったのだが、そもそもももクロはどのような異質な要素でも受け入れられる器とパフォーマンス力を持っており、その他と一線を画すポップさを強く打ち出すことで幅広い層から支持を受け、規模を拡大していったグループだと思う。だから成長した彼女たちは曲に負けることなく自然に「ももクロのポップ」として歌を届けてみせる。その、眩しさ。(オファーされる形であろうと)名うてのアーティストの面々が曲を書いてみようと思わせる「何か」を彼女たちは持っていて、引きつけ、この途方もないスケールの一大ポップ絵巻(『白金の夜明け』とはやはりセットで捉えるべきだろう)を完成させてしまったのだ。感動を覚えずにはいられない。

 

 

28. 中村佳穂 『リピー塔がたつ』

リピー塔がたつ

リピー塔がたつ

 

京都出身のSSW。ピアノ弾き語りスタイルで、全11曲・トータルタイム38分というコンパクトさながら、各楽曲に詰め込まれた多彩なアイデアに驚かされる。イントロ明けで始まる、クラムボンのような疾走感とダイナミズムに満ち溢れたM2「POINT」、不穏さを帯びたピアノのリフレインに電車の走行音(またはドアの開閉音?)をカットアップの手法で重ねたM3「通学」、恋心を歌う軽快なポップさから一転、ラストで上原ひろみのような超絶演奏を聴かせるM6「口うつしロマンス」、スチャダラパーBoseのラップをフィーチャーした人力ヒップホップナンバーM10「makes me crazy」……など、幅があるので飽きることなく繰り返し聴かせてくれる。また、”「僕は特別」だと今日まで思っていた/何かが溢れて止まらないの”(M8「my blue」)、今夜リピー塔がたつよ だれもふんだことのないみちはあるの? だれもきいたことのないうたはあるの? いつかみたその景色に射抜かれ僕は動けない”(M1/11「リピー塔がたつintro/answer」)―というように、歌詞から諦念とも取れる深刻さを覗かせている点も見逃せない。自分なりに思うところもあるが、次作を聴けばもう少し見えてくるものがありそうなので心して待ちたい。

 

 

27. Tortoise 『The Catastrophist』

ザ・カタストロフィスト

ザ・カタストロフィスト

 

20年以上のキャリアをもつポストロックバンドの重鎮、なのだが僕はこの7thアルバムで初めて彼らの音楽に触れることになった。ただとにかくこの名はメディア等でよく目にしていたし、その評判から敬愛するFUGAZIにも通じる精神性を宿していそうだなと思っていたが、実際期待通りの素晴らしさだった。人を食ったような安っぽいシンセの音が鳴り響くイントロから一転し深い海に沈み込んでいくようなM1から始まり、いずれの曲も独創的で巧妙なアンサンブルが展開していて、何度でも聴き込む価値があると思わせてくれる(この感覚もフガジを聴いている時と共通している)。アートワーク、曲、サウンドと、あらゆる点で隙がなくカッコいいこのバンド、過去作も聴いていかなければ。

 

 

26. 川本真琴withゴロニャンず川本真琴withゴロにゃんず』

【Amazon.co.jp限定】川本真琴withゴロニャンず(ステッカー付)
 

川本真琴がスカートの澤部渡やテニスコーツの植野隆司らと結成したバンド。2016年には本作とは別にセルフカバーアルバムを出したりと、結構精力的に活動していたようだ。作詞・作曲は共同で行っているが、招集したメンバーがメンバーだけに全編に渡ってえも言われぬグッドメロディーと温かなフィーリングに満ち満ちている。ソロ作ではエキセントリックでエッジーな面が際立っていたが、このバンドでは信頼出来る仲間と心底リラックスして音楽を楽しんでいる様子が伝わってきて微笑ましい。一聴すると緩そうにやってるように感じられるのだが、よくよく耳を傾けてみると確かな演奏技術に裏打ちされた演奏がマジックを生んでいてニクい。全9曲40分とコンパクトだが十二分に満足感と幸福感を与えてくれる良盤。このメンツでもう一作ぐらいアルバム作って欲しい。

 

 

25. Kanye West 『The Life Of Pablo』

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DL販売サイト→https://music.kanyewest.com/

音質に納得いかなかった等の理由により、パッケージは作らずDL販売のみとなった本作。全体的に高水準でまとまっていてさすがという感じだが、欲を言えばもう少し飛び抜けた驚きや興奮をもたらして欲しかったなぁというのが正直なところ(「ダイヤモンドは永遠に」を初めて聴いたときのような―)。シングルのM2「Famous」は文句なしのカッコ良さなので、これクラスがあともう3~4曲あれば全体の印象も変わったかな。パッケージ、歌詞対訳解説なしで2800円ほど(確か日本円でこのくらいだったよね?)というのは割高感あるし、前言撤回して次作以降はCD復活させて下さいカニエ先生。

 

 

24. A Tribe Called Quest 『We Got It From Here... Thank You 4 Your Service』

ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス

ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス

 

本作リリースの少し前にツイートでその存在を知り気になっていたトライブ。センス抜群のトラックに乗せて、ジャジーにクールに軽やかにメンバーが入れ替わりラップするカッコ良さに痺れた。メンバーが一人亡くなってしまったということで、おそらくラストアルバムになるであろう点が残念だが、きちんと作品を完成させ、世に送り届けてくれたことに感謝。過去作も傑作揃いのようなので、どのような軌跡を経てきたのか追体験したいと思う。

 

 

23. Whitney 『LIGHT UPON THE LATE』

ライト・アポン・ザ・レイク

ライト・アポン・ザ・レイク

 

ボウイやイギー・ポップなど一部別格の存在を除きポップ勢に圧されていまひとつ奮わなかった感の強いロックだが、彗星のごとく現れた(と言ってもボーカルは別バンドで活動していたようだが)このホイットニーは純粋に曲の良さで音楽ファンの支持を広く集めていた印象を受けた。もちろん僕もその一人で、哀愁漂うボーカルから始まりラストは金管楽器まで用いたドラマティックな展開を見せるM1「No Woman」や、これぞインディロックの良心!と言いたくなる静謐な表題曲M5「Light Upon The Lake」など、ソングライティングやアレンジ、サウンド(深みと奥行きがあって素晴らしい!)に至るまで全く隙がなくすっかり虜になってしまった。余談だが国内盤が自分の誕生日にリリースされたのも嬉しかった。

 

 

22. D.A.N. 『D.A.N.』

D.A.N.

D.A.N.

 

M3「Native Dancer」のMVを初めて視聴した時の衝撃。ダークで、妖艶で、どこまでも醒めていて、底の見えない海に深く沈んでいくようだった。アルバム全体を通して聴いてもそのクールすぎるイメージは1ミリもブレることはなく、デビュー作とは思えない世界観の完成度合いに「久しぶりにすげえ日本の新人バンドが現れた!」と大興奮。引き合いに出されるTHE XX等にも劣らぬ高いポテンシャルを感じるが、この音楽性で日本語で歌ってくれたことを心から喜ばしく思うし、このまま世界のロックファンを巻き込んでいって欲しい。

 

 

21. 上田麗奈 『Refrain』

RefRain

RefRain

 

ベスト30の中で唯一のミニアルバム。どうしてもミニアルバムは曲数が少なくなるのでトータルの完成度でみるとフルアルバムには及ばなくなってしまうのだが、本作に収められた6曲がいずれも素晴らし過ぎたのでランクイン。目の前の景色をドラマティックに塗り替えるような強力な世界観がとにかく魅力で、すっかり虜になってしまった。上田麗奈の高く澄んだ歌声の素晴らしさよ、表現力の深さよ。全曲作詞にも携わっており(共作5曲、丸々1曲)、まさに彼女の持つイメージが色濃く反映されたアルバムと言えるだろうが、たとえばエレクトロの入れ方や音響の処理などからも、それが最上の形で表現されていると感じられ唸らされる。声優だとかそんな枠はとっぱらって、とにかくこのミラクルな結晶の輝きにひとりでも多くの人に触れて欲しい。フルアルバム超熱望。

 

 

20. Eddi Front 『Marina』

マリーナ

マリーナ

 

フォロワーさんのツイートからYoutubでMVを視聴したのが彼女を知ったキッカケだったのだが、ドビュッシーの「水」を思わせるような流麗なピアノに乗せてドラマチックに歌が紡がれるM2「Elevator」にヤラれた。この一曲だけで才能に溢れたアーティストだとビンビンに伝わってくるが、それのみならずどの曲も良い。基本鍵盤弾き語りスタイルなのだが(曲によってはギターも用いられている)、音が重く、ボーカルもエコーがかった独特の処理が施されていて(ミキシング/プロデュースはソニック・ユースダイナソーJrらを手掛けたJohn Agnelloとのこと)、アルバムを通して幽玄な森に手招きされているような感覚に陥る。フィオナ・アップルに影響を受けているようだが、彼女と比較しても決して引けを取らない世界観を持ったアーティストだと思うし、もっともっと多くの人に聴かれていいと思う。

 

 

19. 宇多田ヒカル 『Fantôme』

Fantôme

Fantôme

 

離婚、再婚、出産、といった人生のターニングポイントとなるような数々の出来事を経て製作された今作は、これまでの輝きに満ちたダイナミックなアレンジは影を潜め、より内面をストレートに反映したような曲が並んでいて、その飾り気のないシンプルさがとても凛々しく美しく感じられた。やはりこの作品を語る上で、(タイトルが示唆する)死別した母親の存在は欠かせないだろう。彼女の作風として、「誰かの願いが叶うころ」に象徴されるような”過酷なこの世界”ーのような影の面を見つめる傾向は強く、個人的にはそんな中で前に進もうと生きていく姿に共感や感動を覚えていたのだが、今作は間違いなくそれが最高レベルに達している。大切な人を失って抱いた気持ちは複数の歌に表れていて悲痛さが伝わってくるが、それを受け止めた強さが確かにあるのだ。M1「道」はこれまでに受け取ったものを糧により良い未来を掴みとっていかんとする宣言のようにも聴こえる。それと対になっているような、ラストを飾るM11「桜流し」は母・藤圭子が亡くなる一年前に『ヱヴァンゲリオンQ』の主題歌として発表された曲で、未来を予期していたかのような歌詞に驚かされるが、彼女はずっと普遍的に人々の心に届く曲を書き続けてきたのだ。自分自身も例外ではなく。

“どんなに怖くたって目を逸らさないよ 全ての終わりに愛があるなら”

このアルバムを締めくくるのにこれ以上はない、深い慈愛に満ちた大名曲。彼女はこれからも、きっとこれまで以上に多くの人の胸を打つ曲を作り続けてくれるだろう。そう確信している。


 

18. lyrical school 『guidebook』

guidebook

guidebook

 

楽曲のレベルが上がってきていることもありアイドルグループを聴く機会が増えてきた昨今。このリリスクもそのひとつだが珍しくラップミュージックが採用されている。ドハマリするキッカケになったのがM6「サマーファンデーション」だった。”大して話したこともない男の子からお祭りに誘われてドキドキ!知り合いに見つかるかも知れないてゆーか見つかりたい!”ーそんな思春期特有の甘酸っぱい恋模様を歌っているのだが、「たまらなく楽しい!」「胸が高まってる」感がトラックとメンバーのラップでこれでもかと表現されていて、その青春を猛烈に喚起するノスタルジーに完全にK.O.されたのである(夜空を華々しく彩る打ち上げ花火とそれをバックに踊るメンバーを絶妙なカメラアングルで捉えるMVもあまりにも素晴らしく、何十回と繰り返し観ている。是非BDで出して欲しい)。この「サマーファンデーション」のみならず、いずれの曲もサビに至るまでのラップはメンバーが一人ずつ入れ替わりながら繋いでいくのだがそれぞれ個性が出ていて聴いていて楽しくなるし、そこから全員の声が重なるサビ(コーラス)に突入していく様が何とも言えず気持ち良く、なぜか泣いてしまいそうな瞬間すらある。本作がメジャーデビューアルバムだったようなのだが、当時在籍していたメンバー6人のうちなんと4人も脱退してしまったようで非常に残念だ(気に入っていたコもいたのに…)。それでも新メンバーを迎えた今後のリリスクがどうなっていくのか見届けていきたい。インディーズ時代のアルバム二作も入手し変遷を辿っていきますよ。

 

 

17. Bruno Capinan 『Divina Graça』

ヂヴィーナ・グラッサ

ヂヴィーナ・グラッサ

 

ブラジル出身の男性SSWで本作は3rdアルバムとのこと。儚気な美しい歌声を最小限の音数と空間の広がりを活かした音響で聴かせてくれる、実に心に沁みる音楽だ。アコースティックな音色とデジタルな処理の融合が素晴らしく、それらが巷に溢れる歌ものとは一線を画した、非常に優れた作品たらしめている。カエターノ・ヴェローゾ等の偉大なアーティストの薫陶を受けたブルーノの歌心は確かなもので、研ぎ澄まされた楽曲群によって十分に堪能することが出来るのだが、ラストの「I've Been Waiting」では自身の声を器楽的に使うアプローチを試みていて(これもカエターノの影響のよう)、それまでの曲とはまた別種の感慨を覚えた。これからも挑戦する心を忘れることなく胸に響く音楽を作り続けていって欲しい。

 

 

16. Iggy Pop 『Post Pop Depression』

ポスト・ポップ・ディプレッション

ポスト・ポップ・ディプレッション

 

恥ずかしながら僕はこのレジェンド級のロックアイコンの作品を(ストゥージス含め)聴いた事がなく、本人が”ラストアルバム”と公言する本作で初めて触れることになった。なので、この作品が彼のキャリア上どのような位置づけになるのか、どのような意味を持つのか、といったことは一切解らない。ただ、身震いするようなカッコ良いロックンロールを全身全霊でやっていて、胸を熱くさせてくれた。その事実がすべてだと思う。瑞々しく、獰猛で、気高い。なんて素晴らしく、エキサイティングな音楽なんだろう。腕利きの若手メンバーを招集し、齢68になる男がみせた境地。他界した盟友・ボウイといい、停滞するシーンに『まだロックはやれる!』と喝を入れているかのようだ。このくらい興奮させてくれる新たなロックアイコンが現れてくれることを切に願う。

 

後編につづく!

第一回音楽カフェ会(in梅田)を開催してきたよ

一生音楽の話をしていたい願望を持つ僕はツイートしたり、ニコ生でコミュを作って放送したりといったことをやっている訳だけど、前者は基本一方的な発信になるし後者はまだコミュ人数が少ない(現在40名)こともあり0コメフィニッシュも珍しくない状況(泣)

そんなこともあって、なにか音楽好きな人を集めて話せる場が持てればなと思い企画したのが「音楽カフェ会」。実は去年あたりから考えていたのだけどいざやろうとなると億劫になったりして時間がかかってしまったのだ。今回なんとか開催に漕げつけることが出来た。

 

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向かって右が僕(腕毛が濃い)、その隣が友人(オールディーズ好き、洋邦問わず気に入ったものを調べて聴く)、左下が共通の友人を通してサマソニで知り合ったMさん(Nothing's Carved In Stone、ストレイテナー等邦楽ロック好き)、その左隣に諸事情で写れなかったけど彼女の友人R君(Mさんとはナッシングス等共通の音楽の趣味を通じて知り合った。洋楽も少し聴く。僕は初対面)もいますw

 

店で顔を合わせてから挨拶がてら少し話して、注文が終わったタイミングで軽い自己紹介タイム。僕はこの記事の冒頭で述べた開催趣旨をお伝えした後、ざっと好きなアーティスト(ビートルズU2、オアシス、USオルタナSyrup16g等)、最近気になっているジャンル(オルタナティヴR&B、日本の楽曲重視派のアイドルポップ)、最近観てよかったライブ(Maison book girl、UA)、最近覚えたカラオケの曲(ワンオク「The Beggining」w)等を話した。

Mさんは上記アーティスト以外のお気に入りとしては9mm parabellum bulletMAN WITH A MISSION、LITE(インストロックバンド)や、LITE同様インストのFULLARMORというバンドも挙げてくれた。

今回初めて知ったんだけど、超カッコ良くないですか?ダークめで、後半にかけて熱を帯びて激しくなっていく演奏が良いです。

 

R君もナッシングス、ストレイテナーに加えて、THE BLACK RHIONS(友人のバンドとのこと)、洋楽ではAll Time Low、Enemies、Royalblood等を挙げてくれた(後の会話で分かったが邦バンドではART-SCHOOL、ワンオク、UVER WORLD等も好きとのこと)。

ロイヤルブラッドは今年サマソニの最も大きなステージ(大阪ではオーシャン)に出演するメジャーなバンドだけど僕は知らなかった。これまたカッコイイね!ベース&ドラムというライトニング・ボルト方式(ボーカルはドラムではなくベースだが)のミニマル編成だけどとてもパワフルだ。是非サマソニで観たい。

 

やはり、こちらも知らなかったエネミーズ。静と動の鮮やかなコントラスト。エモいぜ。

 

 

S君はオールディーズの他に池田綾子というSSWを挙げてくれた(現物のCDも持ってきてもらった)。

例によって知らなかったんだけど、電脳コイルのOP歌ってた人だったのね!いい声してます。

 

 

MさんとR君イチオシのNothing's Carved In Stone。この激熱のバンドグルーヴよ。ライブ観たことないんだけど今年のサマソニに出演するので体感してみたい。ELLEGARDENのギタリストが始めたバンドで、ベーシストの日向秀和は過去にART-SCHOOLZAZEN BOYSに在籍していて現ストレイテナーのメンバーって経歴凄すぎ!

 

 

こういった感じで知らないアーティストを知れたのはとても良かった!際限なくいい音楽を探し求めている自分のような人間にとってはこのような機会を持てるのは大変有難いし、参加してくれたみんなもやっぱり好きな音楽について話す時は楽しそうだし何よりだった。また、今回はもうじきサマソニを控えているタイミングで、聴いたことのない出演アーティストを教えてもらえたのがなお良かった(実際観たいアクトが増えて楽しみが増したもんね)。サマソニ出演者リストはプリントアウトして持っていき、それを見ながら話し合っていたんだけど、やっぱりフェスの話題って盛り上がるんだよね。そういうのも好きなんだー、とか人のまた違う趣味が発見できたり、今年はひさしぶりにマキシマムザホルモン出るしみたいね、とか、過去にあった印象的なエピソードを披露したり、特に好きなアーティストについて改めて掘り下げられたりと、色々話せるから。有名なフェスは多くの音楽ファンの記憶に残って、その体験の共有が出来るというのが最も価値のあるポイントだと思う。

 

 

あとは事前にお願いしていた、思い入れのあるアーティストのCDを持ってきてもらって、その作品から話を掘り下げていったりした。やはりMさん、R君は必然的にナッシングスの話題で盛り上がることにwその中にファン投票で選曲されたライブアルバムがあったのだけど、二人はあまり納得出来ていないようで、ここらへんファンあるあるだなぁと(笑)

Mさんは去年リリースのストレイテナーのアルバムも持ってきてくれていて、R君的にも2016年最も気に入った作品はそのアルバムと言っていたので聴いてみたくなった。

ファンの間で評価の高いストレイテナーのアルバム『COLD DISK』

 

それからは話題に挙がったアーティストや作品から更に膨らませていったり、それに関連した話をしたりしていったよ。ライブの話は鉄板だw

 

 

~まとめ~

時間としては予定通り二時間程度、趣旨通りガッツリ音楽の話をし続けました。考案した段階では「もしかしたら誰も来てくれないかも…」という不安も少しあったけど(その時は親友捕まえてとりあえず二人で開催した体にするつもりだった)w、結果としては自分含め四人参加でとりあえずは形になってホッとした(笑)

はじめましての人同士でも仲良くなれたり盛り上がれるツールとしても「音楽」というのは秀逸だなと改めて実感。今後も2、3ヶ月に一度は開催していくつもりなので、もしこのブログを読んで興味持ってくれた方がいたらお気軽にコメント等でコンタクトとってみてください。参加した方がより楽しめるアイデアも考えていきたいし、人の輪を繋いで広げていけたらと思う。それではまた!

 

 

P.S.

伸びに伸びまくっている『2016年ベストアルバム30』の記事はあともうちょっとでアップ出来そう。

私を構成する9枚(後編)

 

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つづき(5~9作目)です。前編がまだの方はコチラ

 

 

5. ソニック・ユース 『ダーティ』 (92年作)

U2などで洋楽にハマり始めていた頃、音楽好きな職場の先輩にCD、(アルバムを丸ごと入れた)MDなどを何枚かまとめて貸してもらった。ストーン・ローゼスレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンクーラ・シェイカーなど、まず間違いない面々だったのだが、例によってその時はまだ良さが分からなかった(もちろん今ではみんな好き)。そんな中一緒に貸し出されていたのがこのソニック・ユースの『ダーティ』だった。はじめて聴いたとき、「なんだこれは!?」と思った。その他のロックとは明らかに違っていたから。今までに聴いたことのないような重厚なサウンドと曲展開、曲によって替わる3人のボーカル(特に紅一点キム・ゴードンのパンクを体現したかのようなドス声には度肝を抜かれた)、何もかもが新鮮でエキサイティングだった。先輩にこの作品がとても気に入ったと伝えると少し驚かれた。それまで借りた音源の中で「良かった」と伝えていたのはヴァン・ヘイレンなどベタなものが多かったため、このバンドに反応するとは思わなかったのだろう。彼らが”ロックを解体した”先鋭的な集団であること、”オルタナティヴ・ロック”と呼ばれるジャンルに含まれる音楽だということを知り、そこから洋楽ロックへの関心が爆発的に高まりのめり込んでいくことになった。その延長上でロックに限らず様々な音楽に関心を持って開拓していけるようになった事実を踏まえると、9作挙げた中で最も重要な作品だ。

 

本作に感銘を受けて次作の『エクスペリメンタル・ジェット・セット、トラッシュ・アンド・ノー・スター』というやたら長くて覚えにくいタイトルのアルバムと、もう少し飛んで00年代リリースの『ムーレイ・ストリート』を同時に買ってワクワクしながら初めて聴いてみた時は正直肩透かしを食らってしまった。後者は一曲一曲がかなり長くて(コンパクトな曲も少しはあるが)とっつきにくく、前者は2~3分台が多いが『ダーティ』で聴けたような強烈なフックがなく、掴みどころのない曲が多くて「なんじゃこりゃ?」と戸惑ったのを覚えている(だが、むしろこっちの方が彼らの本質で『ダーティ』の方がイレギュラーであったことを、めげずに他のアルバムを買い集めていく中で知っていくことになり、その過程でこの二作も好んで聴けるようになった。結果、よりこのバンドのことが好きになったのだった)。

 

本作は(彼らの弟分的存在でもあるバンド)ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』(91年作)を手掛けたプロデューサー:ブッチ・ウィグとミキサーのアンディ・ウォレスを雇い、グランジオルタナムーヴメントの時流に乗るという彼らのキャリアの中で唯一といっていいアルバム……なのだが、振り返ってみてメンバーはあまり本作を快く思っていないようだ。確かに、同じ90年代にリリースされた『ウォッシング・マシーン』や『ア・サウザンド・リーヴス』といったエクスペリメンタルな名作群と比べてみれば納得も出来るのだが、それにしてもここに息づくロックのダイナミズムは凡百のオルタナ系ロックバンドとは比べものにならないほど素晴らしいし、個人的な衝撃体験を差し引いても十分評価出来る作品だと思う。ジム・オルークが”彼らがキャリアの中で最もうまくスタジオを使った作品”と評している点も見逃せない。ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』のミキシングには未だに納得いってないのだが(バンドとの相性の問題が大きい)、こちらは文句ナシにカッコいい仕上がりで賛辞を送りたい。

曲リンク:Sonic Youth - Purr

 


6. ローリング・ストーンズ 『フォーティ・リックス』(02年作)

言わずと知れたストーンズのオールタイムベスト盤。9枚選ぶ企画でベストを挙げるのは卑怯なんじゃないかという気がするが(二枚組だし。もう一作二枚組ベストあるから合計11枚になっちゃうし)、欠かせないものなので仕方がない。GLAYB’z、それにラルクを主食としていた高校時代ー部活のT先輩から「おまえはまたラルクを聴いてるのか」とよく言われていた。ひとつ上の学年の先輩方は主に60~70年代の洋楽ロックを好んで聴いていたので、いかにもな流行りの音楽しか聴かないでいるヤツが残念に感じられたのだろう。今ならその気持ちはよく分かる。残念ながら高校時代は洋楽でかつ昔の音楽になんて露ほども関心が持てなかったので適当に流していたのだが、その先輩が残したある言葉がずっと胸に残っていたのだった。卒業して数年後、洋楽に興味を持ち始めた時にその先輩の言葉が改めて胸をよぎった。”ローリング・ストーンズとか、めっちゃカッコええやん”ーと。そういえばそんなことを言っていたなと。じゃあ、どれほどのものかいっぺん聴かせてもらおうか、と。ただキャリアがあまりにも長くどの作品から手をつけたらいいか分からずにいた。そんな自分にこれ以上ないほどの打ってつけの本作がリリースされ、僕は初めてストーンズの音楽に触れる事になる。

 

アルバムを聴き終えて抱いた感想は、『先輩の言った通りだった…』だった。確か前述したU2の『アクトン・ベイビー』の後に聴いたと思うのだが、その時とはまた違った衝撃が走った。めちゃくちゃカッコイイ。カッコ良すぎる……!ストーンズの40年もの歴史を凝縮したオールタイムベストの破壊力は比類なきものだった。マグマのような熱量があって、これがロックだ!と言わんばかりの研ぎ澄まされた曲の数々に完全に打ちのめされてしまった。どの曲も押しも押されぬ名曲揃いだと思うが、個人的には「黒くぬれ!」「アンダー・マイ・サム」「ギミー・シェルター」「ミス・ユー」「シャッタード」「アンダー・カバー・オブ・ザ・ナイト」「ハッピー」などを特に気に入った。いずれも素晴らしいアイデアが盛り込まれていて、その多彩さに心底驚かされた。昔から……というか、”ロック”が勃興した時代にこそエキサイティングなロックがあったのだと教えてくれて、その黄金時代に目を向けさせてくれた生ける伝説:ローリング・ストーンズに心から敬意を表したい。可能性は限りなく低いが、もしT先輩に再会するようなことがあったら伝えたいと思う。”ストーンズ、めっちゃカッコイイですね!”と。

曲リンク:The Rolling Stones - Paint It, Black

 

 

7. 井上陽水 『GOLDEN BEST』(99年作)

ストーンズと同じく2枚組のオールタイムベストで、陽水ベストの中でも決定盤と言えるものだろう。リリースされた当時は「知っているけど特に気にかけていないアーティストのひとり」に過ぎなかったので、本作の存在すら知らなかった。前述したとおり洋楽を少しずつ開拓していっていた時分に、今はなき音楽バラエティー番組『Hey!Hey!Hey!』で「飾りじゃないのよ涙は」を披露する陽水を目にしたことがキッカケだった。この曲は中森明菜の大ヒット曲なのでもちろん知っていたのだが、セルフカバーする陽水のあまりものカッコ良さに思わず痺れた。中森明菜ver.とは大きく異なる落ち着いたジャズ風のアレンジが施されていて、それに乗せて紡がれる歌声のえも言われぬ色気といったら……!その、キャリアを積み重ねてきたアーティストならではのベテランの風格と圧倒的な存在感を目の当たりにしたその日、僕の中で井上陽水は”ただ知っているだけのアーティスト”から”無視出来ない存在”になったのだった。

 

すぐにこの「飾りじゃないのよ涙は」が収録されている『Blue Selection』(全編ジャズアレンジによるセルフカバーアルバムで、こちらも本作と並ぶ名盤)と、この『GOLDEN BEST』を買いに走った。個人的にベストアルバムというものはあまり好きじゃなかったのだが、ストーンズや陽水のように長年にわたる活動により多くの作品をリリースしているアーティストならば、そのキャリアを包括したベストの意義は非常に大きいと感じる(オリジナル3~4枚程度ですぐベストを出すケースには疑問を覚えるが)。パフィーに提供しこれまたヒットを飛ばした奥田民生との共作「アジアの純真」、世代を越えて愛される名曲「少年時代」、自殺する若者が増えたニュースより何より”君に会いに行かなくちゃ”と思いの丈をぶつける初期陽水流セカイ系ナンバー「傘がない」、日本初のミリオンセールスを記録した3rdアルバムの表題曲にしてライブで最強に化けるカオティックなロックナンバー「氷の世界」、同アルバム収録で故・忌野清志郎と共作した静謐でこの上なくロマンチックな「帰れない二人」、安全地帯のヒット曲にして夜のムーディさを醸し出す「ワインレッドの心」、心地よいトリップ感をもたらすミステリアスでエロティックな「Make-up Shadow」、ラストの咆哮のようなボーカルが鮮烈な「Just Fit」……などなど、ここでは到底書ききれないほどの名曲たちが収められていて、その完成度と振り幅に完全に虜になってしまった。

 

一般的にどちらかというと「少年時代」に代表されるようなメロディーメイカーとしてのイメージが強いと思うし僕も概ねそういった認識でいたのだが、一方で「娘がねじれる時」や「青空ひとりきり」、前述した「氷の世界」(ボブ・ディランに影響されたという歌詞は意味不明だが、寒々しく混沌とした世界を表しているということはよく伝わってくる。この曲以降現在に通じるフリーキーな作詞スタイルになったそうな)で展開されるような歪な世界観も持っており、むしろこれらはコンプレックスの塊だった陽水にとって欠かせない表現であることが、初期の作品から追っていくとよく判る(本作には未収録だが2ndアルバムの「東へ西へ」というライブ定番曲の詞世界もかなりのカオスさだ)。言ってみれば陽水の裏本道とでも言うべき「顔」により一層魅力を感じ、これまでにリリースされた作品を追っていく中で、井上陽水は僕の中で”唯一無二のアーティスト”として殿堂入りを果たすことになったのだった。

曲リンク:井上陽水 - 帰れない二人(Live ver.)

 

 

8. アルド・チッコリーニ 『ベスト・オブ・サティ』(07年リリース)

エリック・サティに興味を持つようになったキッカケは田中ロミオの『最果てのイマ』だった。ゲームスタートと同時に「ジムノペディ」が流れだすのだが、主人公のやや難解なモノローグと共に響く静謐で理知的なその音楽は、物語への没入感をより一層高めてくれた。もちろん有名な曲なので知ってはいたが、魅力に気づいたのはこのゲームをプレイした時である。何度聴いても飽きることはなかった。ジムノペディ以外にも「グノシェンヌ」、「ジュ・トゥ・ヴ」、「ピカデリー」も作中で使われていて、いずれの曲も良かったので何かアルバムをーとアマゾンで探して見つけたのが本作(ちなみにゲームのサントラもヤフオクで入手した)。摩訶不思議なタイトルを含みつつもとても充実した内容で、新鮮な驚きと興奮を与えてくれた。冒頭の3つのジムノペディ、6つのグノシェンヌ(特に流麗な「Ⅳと」、麻薬的なまでに甘美な「Ⅴ」にはヤラれた)で浸っていたら、次の「でぶっちょ木製人形へのスケッチとからかいⅠ」で強烈なパンチをお見舞いされることになる。古典的なクラシックを思わせる軽快な入りから、突如フォルテッシモで攻撃的なフレーズが叩き込まれ、それからまた元の曲調に戻るというプログレ的な展開に心底驚かされた。それまでに聴いたメロディアスな曲とかなり違うー!この作曲家はどうやら一筋縄ではいかないらしいと認識しつつ、その挑戦的な作風により関心を深めることになった。

 

サティは西洋の伝統的な作曲技法に疑問(退屈さと言ったほうが正確だろうか)を感じていたようで、自らの創造性の赴くままそこから逸脱した楽曲を多く残している。前述した「でぶっちょ木製人形へのスケッチとからかい」はライナーノーツによるとモーツァルトシャブリエドビュッシーらが素材として取り上げたスペイン風の音楽をからかったものとの事だが、トルコ行進曲のフレーズを引用しつつもそれに牙を立てるようなⅠにはパンクスピリッツを感じさえする。タイトル含めこういった皮肉を込めたパロディーが散見されるのだが、単純な悪戯心のみならず、その根底には既定の枠に囚われることなく音楽の可能性を切り開いていかんとする精神性を感じ取ることが出来、感動を覚えてしまう(”混沌こそ未来だ!”と変則チューニングやノイズを用いてロックの可能性を切り開き、オルタナの源流となったソニック・ユースから受ける感銘と同種のものをー)。本作には未収録だが、同じフレーズを840回繰り返す「ヴェクサシオン」で注視すべきは音楽性そのものというより、聴衆に音楽の意味について問いかける在り方だろう。この曲が直接的にどのくらいの喚起力を伴ったかは判らないが、酒場で客の邪魔にならない演奏を心がけた体験に起因して自ら『家具の音楽』と称する音楽を生み出すようになり、それを起源としてアンビエントミュージックが生まれたりといった後に及ぼした影響を考えると、「開拓者」として(おそらく意図したであろう)人々の意識を変えさせることには成功したのではないだろうか(深読みする人間へのからかいというのならばそれもまた一興)。

 

こういった先鋭性のみに終始していないのもポイントで、晩年の「5つの夜想曲」のような静謐さを湛えた曲も素晴らしいし、ミュージック・ホールのダンサーの依頼によって元は管弦曲として書かれた4手のための「風変わりな美女」は、まさにホールで演奏するに相応しい華麗さと高揚感を併せ持っていて強く引き込まれる(特に「眼の中の神秘的なキス」のスリリングさはたまらない)。きっちりと大衆向けの曲を書きながらも音楽家として未知の領域へと挑戦し、支持されていったところがサティを偉大たらしめているのではないかと思う。繰り返しになるが僕が最も感銘を覚えたのはその精神性である。ジャンルの壁やルールに縛られることのない音楽はエキサイティングだし、そういった素晴らしい作品を見つける視野を広げてくれたのは間違いなくここに収められたサティの楽曲群だ。今後どのような感動を与えてくれるアーティストに出会おうとも、かけがえのない特別なものとして、彼の音楽をまた聴き返すのだろう。

曲リンク:アルド・チッコリーニ - ジムノペディⅠ.ゆっくりと悩める如く

 

 

9. トン・ゼー 『パゴージ学習~オペレッタ女性差別と愛」』(05年作)

“唯一無二。こんな音楽を作っている人は世界でただ一人だけだろう”ー初めて聴いたときの印象だ。十年以上の歳月を経た今でも変わらない。洋楽ロックを聴き始めていた当時の僕はいつものようにタワレコでそれらのコーナーを巡っていたのだが、たまたまワールド系を取り扱っている一角に行き当たり、そこで目に入ったのがブラジルの鬼才:トン・ゼーの本作『パゴージ学習』だった。馴染みのない単語に何やら意味深な副題が付けられたアルバムタイトル、(英米ではあまりお目にかかれないタイプの)アート性の高いジャケに惹かれて試聴したのだが、その時はまさに電撃に撃たれたかのようだった。機械音なのか人の声を加工したのか判別出来ないムシ声に誘われる幕開けから、オルタナロック色強めの重低音リフに、ゲストの女性とトンゼー自身の多重録音を駆使したコーラスワーク、タイトル通りオペラを思わせるチェロの調べ……それらが渾然一体となって立ち上がるM1「アヴェ・ドール・マリア」の音像は他に類を見ないものだった。その衝撃のオープナーが終わってすぐ、雪崩込むように奇天烈な音階のリフが浴びせられるや否や、”ハ パイス ハ パイス ハ パイス”という独自の語感の女性ボーカルが入るM2「愚かな若者」で僕は完全にK.O.された。カッコイイ、カッコ良すぎる……!当然の如く即購入を決意し、愛聴盤となった。

 

実はこのアルバムに出会う前に、足を運ぶ度に会話していた近所のレコード屋の主人から「特にブラジル音楽はいい」という話を聞いていて、理由は?と訊ねると、ポルトガル語の響きの綺麗さと、様々なジャンルの音楽がナチュラルにクロスオーバーしていてレベルが高いから、というような答えが返ってきていた。その事もあってブラジル音楽には少なからず関心を抱いていたのだが、トン・ゼーも、独創的な音世界や奇天烈さで語られがちだがそういった変人的要素のみならず、ブラジルのアーティストらしくサンバやボサノヴァに根付いた歌心を持っている(M5「ムリェール・ナヴィオ・ネグレイロ」やM9「ふたつの意見」、M15「11時の夜汽車を再び」、M16「ビートルズ・ア・グネラル」といったメロディセンスの光るフォーキーな曲を聴けばよく分かる)。レコ屋の主人が言っていた通りポルトガル語の美しさも堪能することが出来るし、トラディショナルなブラジル音楽からオルタナティヴ・ロック、オペラ、ミュージカルといった要素を取り入れたミクスチャー具合には音楽的豊穣さを十二分に感じるし、何よりエキサイティングだ。ただただカオティックに振り切れるのではなく、基本となる”うた”の土壌に基づいて展開されるからこそストレンジさも難解なものとしてでなくポップなものとして胸に響くのだろうし(残念ながら国内盤にも対訳は付いていないが、歌詞の内容そのものは本国の人間ですら読み解くのが困難なものであるらしいがw)、セールス不振に陥っていた70年代のトン・ゼーの音源を発掘し見事復帰へと導いたデヴィッド・バーンをはじめとして、ベックやトータスといった一線で活躍するアーティストらに熱烈に支持されるのも納得である(ミクスチャー感覚に溢れ、時にストレンジさを盛り込みながらもあくまでポップな彼らの音楽を聴くとその影響がみてとれる)。

 

歌詞が掲載されたブックレットの中身のアートワークもエキゾチックで最高だし、強いコンセプトを感じさせる3部からなる”サンバ・オペラ”のトータルの完成度は尋常じゃなく高かった。アヴァンとポップと喜びと哀しみと、67歳(当時)のひとりの男の人生とイマジネーションと祖国ブラジルの歴史を飲み込んだ圧倒的なドラマを感じさせる一大絵巻に圧倒された。とにかく、この「未知の世界に初めて触れてワクワクする体験」はかけがえのないもので、ここからブラジル音楽やワールドミュージックへの関心が高められ、楽しめる音楽の幅がそれまで以上に広がったのだ(九作の中には選ばなかったが、本作と一緒に購入したマックス・ジ・カストロの3rdアルバムも、洗練されたモダンなブラジル音楽として衝撃を与えてくれた)。英米以外の国の音楽でもエキサイティングなものはたくさんあったし、これからもたくさん出会えるだろう。新たな扉を開いてくれたトン・ゼーに感謝したい。もう齢80にもなり、あとどれくらい作品を残せるか判らないが、命尽きる瞬間までその唯一無二の創作の炎を燃やし続けて欲しい。

曲リンク:Tom Zé - Ave Dor Maria

 

 

 

~オマケのあとがき~

年間ベストを書きたい!という動機で始めた当ブログ。その前に自己紹介になるような記事を、ということでこれを書き始めたら想像以上に時間がかかってしまって(前編→後編の間に一ヶ月以上^^;)大変でした。「#私を構成する9枚」のツイッタータグはその人の音楽歴が垣間見られて面白いなあと興味深く追ってたんだけど、自分でアップするタイミングを完全に失ってそのままになってしまっていたので、今回こんな風にまとまった文章と共に挙げられて良かったです(ようやく胸のつかえがとれた感じw)。

 

高校時代には実は後輩から薦められてBUCK-TICKにもハマっていたり、洋楽聴き始めの頃には友人から借りたレッチリの『バイ・ザ・ウェイ』や、コールドプレイの『静寂の世界』なんかにも衝撃を受けていたりはしたんだけど、いかんせんトータルで9枚しか選べないので厳選した結果が以上です。有名なアーティストが多いのであんまりないかもだけど、読んだ方に「これ聴いてみよう」とか思ってもらえたら嬉しいです。あとは何といっても自分以外の音楽好きの方が書いた『私を構成する9枚』の記事が読みたい!(元々こういうの書いてくれてる人がいたらいいなと思って書き始めたところもあるので)もし書いた方がいたらお知らせください、読みに行きますw

 

さてこの記事を書きながら2016アルバムベストの選考も並行してやっていってますが(もちろん現在進行形)、ようやく選出するアルバムと順位が大体固まったかなーというところ。多くのブロガーが2016年中に選考して記事をアップしているのに脱帽。自分の場合は11~12月にかけて買い逃していたものをまとめ買いしたというのもあるけど、それにしても時間かかり過ぎ……三月中にはアップ出来るよう頑張るつもりなので、よろしければまた読みに来てください。

 

 

私を構成する9枚(前編)

 今更ながら「年間ベストアルバム」をブログに書く、というのをやってみたかった。ナウでヤングな若者は知らないかもしれないが、かつて隆盛を誇っていたmixiというSNSがあり、僕はそこでアルバムやライブの感想を書いていた。その際年間ベストもアップしたことはあるのだが、いつも以上に反応が薄く、あまり人に読んでもらえていない状態だったのでやや残念な気持ちになったのを覚えている。

 それから月日が経ち、(ツイッターの利用に伴い)mixiから遠ざかり、諸々事情があって音楽からも遠ざかり気味になってしまっていたのだが、近年熱を取り戻してきて、2016年は傑作ラッシュで最高に盛り上がることが出来た(91年以来の大豊作と言われているようだ)。それで、是非とも自分の中でベストを選んでネットに残しておきたくなった。それほどアクセスは見込めないだろうが、グーグル等で検索をかけてどこかの誰かがフラっと自分のページを訪れる可能性が少しでもあるって素敵やん?

 ただいきなりベストだけを挙げるより、どんな音楽を聴いてきたヤツなのか解ったほうが少しは面白みが出るような気がして、自己紹介も兼ねて以前ツイッターで流行っていた『私を構成する9枚』を挙げて、それらについてちょっと語ってみることにした。まずは四作。以下本文。

 

 

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中学に入るくらいまでは全くと言っていいほど音楽に関心がなかった。確か中二くらいから姉が好きだったスピッツをちょこちょこ聴くようになり、気が付くと中古でアルバムを買い漁るようになっていた。……と言っても、その時に買っていたものは今ではほぼ聴かないような量産型のポップスが大半を占めていたので、真の意味で音楽が好きになるのはもう少し後になるのだが、、、ただ選んでいたものはどうあれ猛烈に音楽を求めるようになっていたのは事実だと思う。


おそらく心の奥底では(今でも最も好きな)ロックを求めていたと思うのだが、僕が巡っていた中古屋は、CDとは別にゲームや本などを併売しているようなところが多く、あまりそのテの音楽を見つけられなかった。それでひたすらポップスを買っていた。クラスメイトが「ミッシェル・ガン・エレファントかっこええわー」と言っていたのだけど、当時の僕はあのチバのダミ声が絶対的に受け付けられなかった(余談だがこの”ダミ声苦手意識”はニルヴァーナなどの洋楽ロックを聴いていく上でハードルとなり、受け入れられるようになるのにそれなりの時間を要した。今ではミッシェルはフェイバリットに挙げるバンドになったよ)。


パンクもいまいち肌に合わなかったのでブルーハーツも聴けなかったし、、、おまえロックスピリッツのロの字もないじゃないかという感じだ。ただ、もしこの時期にナンバーガールスーパーカーに巡り合っていたらもっと早くロックに目覚めていたかもしれないし、そうであったら良かったのにと思う。アジカンとかがもう少し早く活動してくれていたら…とも(好きだけど、出来れば青春時代に聴きたかったバンドだ)。

 

 

以下に挙げるのは、そんな音楽に関心の持てなかった時代から、音楽に没頭するようになる過程で特に強い衝撃を受けた九作である。

 

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1. L'Arc~en~Ciel 『True』 (96年作)

一番初めにハマったバンドはL'Arc~en~Cielだ。当時ビジュアル系(というのも大雑把なくくりだが)ロックバンドとして人気を二分していたGLAYもよく聴いたが、ハマり具合で言えばラルクの方が上だった。キッカケは、これまた姉がTSUTAYAでレンタルしていた『Heart』のアルバムで、モノクロのジャケが示すようなダークな世界観と流麗なメロディーに惹かれ、自分で購入。潜在的にロックを求めていたこともあってかドハマリし、過去作を買い集めていく中で出会ったのがこの『True』。『HEART』の一作前のアルバムで、これより前にインディーズ作含め三作リリースされているが、いずれも違うカラーだったことに感心した。その中でも最もポップに振り切れていたのが本作で、※「Caress of Venus」「flower」「風にきえないで」「Lise and Truth」といった高揚感溢れるナンバーに心酔し、ラストのロックバラード「Dearest Love」に浸りきって終わるーというのを通学・帰宅時に繰り広げていた高校時代(この頃の携帯プレーヤーはMDだったなぁ)……

 

卒業して数年後に洋楽ロックを聴きだしてからこのバンドから遠ざかることになるのだが、海外での評価の高さは伊達じゃない。世界の音楽と比べても十分通用する強度を誇る楽曲群は、時を経て再び僕を魅了したという(しらんがな)。個人的にダークさ妖艶さに魅力を感じて聴き始めたバンドだが、その正反対の光が射すような曲も自然に並ぶ振り幅。いまのポップさを楽しむルーツはここにあるのかも?と挙げた次第。なにより一番はじめに夢中になったアーティストだし。

※この曲については少々語りたいことがあるのでまたの機会に書ければと思う。

 

 

2. 宇多田ヒカルDEEP RIVER』 (02年作)
今でこそフェイバリットに挙げるSSWだが、華々しくデビューした当初はまったくと言っていいほど関心を持てず聴いていなかった。「Automatic」や「First Love」といった大ヒットシングルもピンと来なかったし、同時期にデビューしていた倉木麻衣等に含まれるR&B系のシンガーの一人としてざっくり認識していたように思う。そんな感じだったのだが、「Wait & See~リスク~」のMVを視聴して「お」と思った。それまでのシングルとは異なる愁いを帯びたメロディー、を携えながらも強い意志で前に突き進んでいくような何とも言えぬ疾走感に魅力を感じた。それからこの曲が収録された2ndアルバムを(遡って1stアルバムも)中古で買って聴き、新作を待って初めて新品で購入した彼女の作品。


まだR&Bのフォーマットに収まっていた前2作からより文学的なアプローチを強め、(現在へと繋がる)確固たるスタイルを確立した名盤、だと思っている。殊更強調する必要もないかもしれないが彼女のソングライティング能力はやはり抜群だと思っていて、”全力尽くしてもダメだったらそれもまた風流”(「プレイボール」)や、”「どちらまで行かれます?」ちょっとそこまで「不景気で困ります(閉めます)ドアに注意」(「traveling」)”といった独特の感性から紡がれるフレーズの数々は、明らかに他のソングライターとは一線を画していると、自分の中でその評価を決定づけるものとなった。読み込む価値のある歌詞があって、琴線に触れるメロディーがあって、「いい歌とはどういうものか?」といったことを漠然とでも考え始めるキッカケになったという意味でも、僕にとって特別な作品だ。

 曲リンク:宇多田ヒカル - プレイボール

 

3. Coccoラプンツェル』 (00年作)

先述したとおり姉の影響でスピッツを少し聴いたりするようにはなっていたものの、まだまだ本格的に音楽を聴いてはいなかった中学時代。テレビで流れていたCoccoの「Raining」のMVを目にした。姉は「この人の歌コワい」(”髪がなくて今度は腕を切ってみた”という歌詞を指してー)と言っていたけど、それとは裏腹にサビのメロディーがこれまでに聴いたどの曲とも違っていて美しく、印象に残った。ただそれからすぐにCDを手に取ることはなく、高校に上がって暫くしてから「水鏡」のMVをみて、その切実で烈しい曲に胸を鷲掴みにされてシングルを借りた時が彼女の音楽と初めて向き合った瞬間だ。それからこの曲が収録されたアルバムがリリースされるとすぐにショップに買いに行った(その日学校をサボったので母から怒られたのを覚えている)。アルバムを聴いて、すぐに特別な存在になった。それまでにリリースされた1st ・2ndアルバムもすぐに買い揃えた。

 

Coccoにハマった大きな要因として、プロデュースを手がけた根岸孝旨によるUSオルタナ直系のヘヴィーなサウンドが大きかったと思う。といっても根岸氏が”そのように仕上げた”というより、全くと言っていいほど音楽を聴いていなかった彼女が本能の赴くまま生み出した楽曲群が、たまたまその系統の音と合致したから採用されたという話なのだが(Coccoが根岸氏から”好きな音楽は?”というような質問をされ、”聴いたことはないけど名前を知っているのはニルヴァーナ”と答えたという話は興味深い)。後に僕は、オルタナロックから洋楽ロックに傾倒していくことになるが、振り返ってみれば原点は彼女の音楽ということになるかもしれない。生きることの苦しみを叩きつける烈しい表現に加え、童謡やおとぎ話からインスパイアされた世界観(アルバムタイトルとジャケのCocco本人によるイラストもグリム童話の『ラプンツェル』から)もまた魅力的だった。

 

“この目さえ光を知らなければ  見なくていいものがあったよ”ー「雲路の果て」

“永遠を願うなら一度だけ抱きしめて  その手から 離せばいい”ー「樹海の糸」

”あなたの指がしみついたまま 上手に歩けるはずもないのにわたしは何処へ?”ー「水鏡」 

 

Cocco好きは大体メンヘラーとはよく言われていたことで(?)、ご多分に漏れず人生に閉塞感を覚えていた僕にもw、こういった歌詞は深く胸に突き刺さった。年齢を重ねてこれらの曲と向き合うスタンスは少し変わったかもしれないが、決して思春期の感傷と容易に切り分け出来るものではなく、特別な感慨と共にいまの自分の胸にも響いてくる。忘れてはならないものなのだと感じる。

曲リンク:Cocco - 雲路の果て 

 

4. U2 『アクトン・ベイビー』 (91年作)

能動的に音楽を求めるようになり、洋楽を開拓したい願望が生まれてくるようになったので何枚か買って聴いてみたもののいまいちピンと来ず(ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』も初めはダメだった)、「やっぱり洋楽って難しいな」と感じていた時期があった。そんな折、宇多田ヒカルのHPで彼女がフェイバリットに挙げているアーティストとしてU2の名前を見つけたことから(MTVアンプラグドでの「With or without you」のカバーでバンドを認知していたことと併せてキッカケとなった。余談だがNine Inch Nailsも一緒にフェイバリットに挙げていたのが意外だった。あと一つがビートルズだっただろうか?)、アルバムを手にすることになった。一番初めに聴いたのが『ポップ』で、その次に聴いたのがこの『アクトン・ベイビー』だった。

 

もう一作の『ズーロッパ』と併せて90年代の”ポップ三部作”と呼ばれるこれらのアルバムはU2のキャリアの中でも異色で、はじめに聴くならやっぱり王道の名盤『ヨシュア・トゥリー』でしょと言われそうだし自分でもそうだったら良かったなぁと少し思うが(その方がより変化を楽しむことが出来ただろうから)、ともあれ本作はあまりにも自分のツボだった。特に「夢の涯てまでも」「ザ・フライ」「アクロバット」などの、一種のドリーミーさを内包しつつもそれを引き裂かんばかりのスリリングな展開をみせる曲のえもいわれぬ魅力といったらなかった(言わずと知れた名曲「ワン」に、「フーズ・ゴナ・ライド・ワイルド・ユア・ホーシズ」や「ウルトラ・ヴァイオレット」といったストレートなロック・バラード曲も素晴らしい)。冷戦終結後の混乱や湾岸戦争などの不穏な世界情勢を反映した、とのことだが、それまでのキャリア集大成とも言うべき、大成功を収めたヨシュア・トゥリーの後で(『Rattle And Hum』を挟んでいるが純然たるオリジナルアルバムとしてはー)これほどドラスティックにスタイルを変化させたロックさ、旧来のファンを困惑させつつもそれ以上に新たなファンを獲得したという事実にも感動を覚えるし(きっちり全米1位、全英2位獲得)、2017年現在でもU2の中で「一番好きなアルバムは?」と尋ねられたなら迷わず本作を挙げる。洋楽に触れ始めた初期の段階で「洋楽ってスゲー!」(と書くとアホっぽいがw)と多大なる衝撃を与えてくれた作品として、絶対に欠かせない一枚。

 曲リンク:U2 - Acrobat

 

 

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